怪物と呼ばれたモノ

神崎 詩乃

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第二章 戦争

空中要塞

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日も高く昇った正午、ザックと治龍はカトリとルチルに詰め寄っていた。

「どういう事だ?姫がどっかの勢力に攫われてるぞ?」
 カトリは苦い表情のまま問いに答える。
「……実は…エレンも居ないんだよ。二人は一緒…かな…。」
「あぁ。そうだ。一緒にいる。」
「…今のタイミングか。あいつら……。」
「カトリ、知ってるの?」
「まぁね。このタイミングでやるヤツらなんて神聖国の息がかかった売国奴くらいだよ。もっと言うなら主犯は大方分家筋のエドワード。」
「何故?そいつはこの都市の市長になるんだろ?」
「あぁ。そうさ。」
「だったら何故…?」
「エレンが市長になれなかったのは年若いから。この都市の市長は大体30代より上だからね。そこでだ。」
「そこで?」
「今選ばれたのは分家筋。しかもさっき言った通り神聖国の息がかかってる。」
「神聖国は今回の戦争には噛んでないだろ?」
「神聖国は狙ってるんだよ。漁夫の利を。どちらも消耗した所で一気に叩く気なのさ。」
「なるほど。何の為にエレンを…?」
「エレンは本家筋だからね。邪魔だと思ってる連中は吐いて捨てるほどいる。」
「どうするつもりだ?」
「……。まずは二人の居場所の特定が急務だ。既に最優先事項として呼びかけてる。今はその情報の精査をしてるところだ。」
「街の中…とは限らないっすよ」
「え?」
「さっきお嬢から感覚共有が来て乗り物に乗ってるようなんすよ」
「ありがとう。カーター。その線でも当たらせよう。」
「早くしねぇと大変な事になりそうだな」
「まぁ、お嬢とエレン嬢っすからね…。」
「あぁ。」

 二匹の龍は顔を合わせて苦い顔をした。

 一方、囚われのお嬢様方は既に暴れ始めていた。 

「ちょっとエレン?主犯は知り合い?」
「……。まぁね。」
「そう。」
『どうする気?このまま空を散歩するの?』
「馬鹿なの?さっさとここを出るわよ?」
「どうやって?」

 鉄格子が嵌った分厚い扉。もちろん丈夫そうな錠が付けられている。まぁ、龍の圧倒的な力の前にどれだけ耐えられるというのかは微妙な所である。

解錠アンロック

 リュカが魔言を呟くとガチりと重い音がして床に錠が落ちる。

「『え!?』」
「何よ。ただの工業魔法じゃない」
「いやいやいや、レティシア、それ禁術!」
「今はリュカよ。禁術?レティシアの家にある魔導書に書いてあったわよ?」
「……。」
『とにかく…行こう。』
「そうね。行きましょ」
「そうだね。」

 その後もリュカが片っ端から扉を解錠していき、中に詰めていたであろう兵士をエレンが気絶させ、縛り上げていく。

「どこの国の兵士かしら?」
「恐らく…神聖国。エドワードの奴!あぁ!もう!」
「エレン、落ち着きなさいな。」
『艦内にいる全兵士に告ぐ。咎人が脱獄した。見つけ次第即刻射殺せよ繰り返す…』
「あらら、情報が早いわね。」
「空の上じゃ逃げ場が…」
「エレン?どうする?賭けてみる?」
「賭ける?何に?」
『おい、バカリュカお前…やる気だろ。やめろ。待て、やめろって!』
「空の旅へ1名様ごあんなーい」
『やめろぉぉぉ』
「ひっ」
「ふぅぅぅぅ」 
 壁を持ち前の怪力で引き裂き背中から翼を生やして空中に飛び出したリュカはそのままエレンを抱き抱えて空を舞う。
「リュッリュカ!?」
「何かしら?」
「このまま逃げてもいいけど証拠がないと奴らまた同じような手を使ってくるわよ?」
「……一理あるわね。」
『どうする?本人とっ捕まえて吐かせる?』
「エレン。しっかり掴まってなさい!」
「え?うぉあ!」

 飛行物体の側面から覗く銃座から大質量の弾丸が集中砲火される。それを高速で避け、一部を氷の壁で防ぎ、飛翔する。
「『うわぁぁ!』」
「ちょっと、落ち着いてよレティシア達。」
「『ムリ!』」
「全く…脆いわねぇ。」
「で、どうするの。このまま逃げる?」
「冗談。やられたらやり返すのが龍の習わしよ。やり返さなきゃ」
「どうやって?」

 その時、エレンはリュカの顔をみて恐怖を感じた。そこには残酷な笑みも冷酷な顔も存在せず、ただ、ただ、怒りがあったからだった。
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