ショートショート・短編集

時計の迷宮

ある日、ジョンは古びた時計店を訪れた。その店には、美しい置時計がたくさん陳列されていた。ジョンは時計の収集家で、この店には何度も足を運んでいたが、今日は何かが違うように感じた。

店の主人、老人ジェイムズは、ジョンに特別な置時計を見せてくれた。それは他の時計とは異なり、複雑な歯車と針が美しく組み合わさっていた。ジェイムズはジョンに言った。

「この時計は、時間を追うのではなく、過去や未来の出来事を見せるものである。」

ジョンは興奮し、時計を購入した。帰宅後、彼は時計をじっと見つめた。針が進むと、過去の風景が彼の目の前に現れ、針が逆戻りすると未来の出来事が明らかになった。

最初は楽しかったが、やがて時計が彼を困惑させるようになった。過去の出来事や未来の予知は、彼の心を不安にし、自分の人生に干渉することができるのかと考えさせた。

ジョンは時計を使い過ぎることをやめ、現在を楽しむことに決めた。彼は時計の魅力と危険を知り、時の流れを逆転させることはできないと悟ったのである。