王子様な彼

nonnbirihimawari

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素直な言葉

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 隆太郎が突如意識を取り戻したように動いたのは、わたしがそんな幸福感の中をふよふよと漂っているときだった。
 がばっと、肩を掴まれ、隆太郎は少し腰を折るようにしてわたしの顔を覗き込んできた。びっくりしたわたしは何度かぱちぱちと瞬きをして隆太郎を見つめ返した。
「今の、ほんと?」
 隆太郎の声はいやに真剣だった。
「美緒、俺のこと好きなの?」
 こくん、とわたしは頷いた。
「友達、とかじゃなく男として好きなの?」
 もう一度こくんと頷いた。
 そして、またもや沈黙。
 隆太郎を見ると彼は何だかわたしを見たまま呆然としていた。肩に置かれている隆太郎の両手に力がこもる。
「……やべぇ」
 何かを堪えるような声でそう一言。
 隆太郎はぽつりとその言葉をはいたあと、突然感極まったようにわたしをぎゅっと抱きしめてきた。
「あーやっべぇ! 俺も美緒のことすっげえ好き! うはーもー嬉しすぎて死ぬうぅ」
「りゅ、隆太郎?」
 隆太郎が壊れた、と思ったと同時、わたしはぴたりと自分の身を固めてしまった。今、何かとてつもないことを聞いた気がするのだけれど。
 えーっと……えー、隆太郎が、わたしを、好き?
「ッ」
 ぼっと。その言葉に今さらの反応を示したわたしは顔を真っ赤にした。
 よく考えてみれば、わたしは隆太郎に告白したんだ。優花の言っていたことがそのままじゃないにしろ本当になってしまった。自然すぎて自分でも実感がわかなかったのだけれど……
「あああっ、もうっ」
 あまりの恥ずかしさにわたしは隆太郎の胸にぎゅっと顔をうずめた。息をするのも苦しいくらいだったけれど今はこれがちょうどいい。誰かわたしの頭を冷やしてほしい。
「美緒?」
 隆太郎の声が上から降ってきた。けれど、今さらながらに全身を焦がすこの恥ずかしさに身もだえしていたわたしはそれにいやいやと首を振った。穴があったら入りたい、というのはまさにこのことだ。
「みーお?」
「…………」
「美緒ー? おーい」
 ひたすら無言。
 そんなわたしの様子を見て、隆太郎は何が面白いのかわざとわたしの顔を覗き込もうとしてくる。ここで思い切り顔をそむけるのも変な気がしてそそくさと目を逸らしていたら、案の定隆太郎に両頬をとらえられてしまった。
「な、もっかい言って?」
「…………」
 顔が、近い。
 わたしは自分の顔がますます熱くなっていくのを感じながら、目を逸らすこともできず目の前にある隆太郎の顔を見つめた。
 もう一回言ってって何をだ、なんて野暮なことは聞かない。けれどわたしは精一杯の抵抗を示すためにぷいと顔を背けた。
「美緒~」
 すると隆太郎の声がちょっと不満げになった。
「いーや」
「なんで」
「そんな何回も言うものじゃないでしょ」
 さっきのわたしはちょっとおかしかったのだ。そう、感情の器というものがまんぱんになっていてきっと思考回路がどうかしてたのだ。
「さっきは素直だったのに」
「じゃあ、隆太郎は言えるの?」
 反対に問い返してやった。隆太郎がそんな恥ずかしいことをすんなり言えるわけがない。
「言える」
 けれど、予想に反して、隆太郎は真剣な表情でわたしの問いにそう答えた。真っ直ぐな瞳がわたしを射止める。
「俺は、美緒が好き。世界中の誰よりも、何よりも、お前が大切」
「…………」
 絶句。
 わたしは目の前にある隆太郎の顔を呆然と見つめた。もう少しで吐息がかかるんじゃないかと思うくらいに近くにある、彼の顔。さらさらな茶色の髪に長いまつげ、いたずらっ子のような瞳。見慣れているはずのそのきれいに整った顔は、わたしの心臓を必要以上に暴れさせた。
「なあ、もっかい言って?」
 隆太郎の眉が切なそうにひそめられる。

 ……風に揺れる茶色の髪も、わたしを見つめる彼のきれいに澄んだ瞳も、どうして、わたしをこんなに惑わせるんだろう。

「隆太郎……」
 呼びかけると隆太郎は小さく首を傾げた。胸の奥が熱い。じりじりとした甘い疼きが全身を駆け抜ける。
「隆太郎、大好きだよ」
 伝えたい、言葉。
 わたしはそれを柔らかな笑顔に乗せた。
 隆太郎は少し驚いたように目を丸くする。けれどそのあとすぐに目を細め、嬉しそうに口元を緩めた。

「俺も、美緒が好き。すっげえ好き」

 とろけるような甘い笑み。隆太郎はわたしを抱き寄せるとその腕にぎゅっと力を込めた。
 隆太郎の胸に顔を寄せる。温かな体温。吐息。わたしを抱く腕も、その声も、すべてが愛しい。
 幸せに瞳を閉じた。
 大好きな人の体温に包まれる幸せ、わたしを愛しいと言ってくれるそれが、今、わたしにとってのすべてだった。 
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