御連舎におねがい

tomatobomb

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一章、人喰い狼

一、依頼

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こんな日には山へ足を運び、年が十ほど離れた少年たちと追いかけっこしたいものだ。なぜおれはここに立っているのだろう。もう足が持たない……あぁつらい……早く今日の任務終わらないかなぁ……もういっそここから逃げ出

『座らないのか?別に立っている必要はないぞ』
「いえ!結構です!」
『では死ぬか座るか選ぶといい』
「え?」

聞こえた言葉が現実とは思えないほど物騒だったので、聞き間違いであると考え聞き返したが、不機嫌そうな顔をしつつ鞘から抜かれた小刀は、聞こえた言葉を肯定するものであった。

「で、では座らせていただきます……」

恐怖により、骨の抜けたような感覚を覚えながら、来客用の長椅子に座る。




年は二十前後だろうか。初対面の相手に刃物をちらつかせるとは……要注意人物であることは間違いないようだ。
しかし、見れば見るほどに、彼女は美人である。自分以外を埃とみなすような冷酷な目付きをしていても、彼女の美しさは覆いきれない。笑顔を見てみたいが、笑うことあるのかしら……

膝に頬杖をつきながらそんなことを考えていると、開きっぱなしの戸の外で老婆が一人、じいっと立っている。
これはあれだ。碁会所に入りたいが、なぜか緊張して、一歩踏み出すのを躊躇してしまうあの現象だろう。よし、ここはあの渋さんのように……!

「御連舎に何か御用ですか?」
『あ、ああ、そ、そうです……』
「中にどうぞ!」
『お、おぉ、それじゃ失礼…』

勇気が出ず、碁会所の前でうろうろしていたおれを優しく招き入れてくれた渋さん……おれはあの日、本当の優しさを知った。渋さん……あんたのおかげでまた一人救われたよ!




来客用の長椅子の他に、依頼人が依頼内容を話す際、御連舎の誰かと向かい合うように設置されている一人用の椅子がある。
冷酷美人が片手をその椅子の方へ向け、どうぞと言うと、おどおどしながら老婆はその椅子へと腰かけた。




おれは、日常が嫌いだ。何もないより何かあった方が退屈しない。少し胸を躍らせながら、おれも老婆の話に耳を傾けた。

『どのようなご依頼でしょうか』






                                                                         
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