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一章、人喰い狼
終、サキ
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腹と頭が痛む帰り道。聞かねばならないことがある。
もちろん、鬼力についてだ。
おれの傷は、かなり深かった。しかし、翌朝には血は止まっていた。それに、あの化物を一瞬で倒している。常人にできるだろうか……
だがもし、仮に、鬼の子であることを話したとして、彼女が一般人であるなら間違いなく処刑される。まあ、ここは隠し通すのが無難であろう。
『そういえば』
「はい?」
『山で、お前は変な行動をとっていたな』
「え!?いや、ええと……」
『お前は誰と話していたのだ』
「ん?」
よかった。左足にだけ込めた鬼力を見破られたかと思った。彼女は鋭そうだ。慎重に、ここでへまをするわけにはいかない。
「あぁ、あの男の子ですか」
『そうなのかは分からん。私には見えなかったからな』
「まぁ、真夜中でしたからね」
『馬鹿言え、真夜中だから、少年が山で一人なんておかしいだろう』
「……あっ!」
『お前の力と関係あるのか』
「いや、そんな力ではないです……ああっ!いや、その、ちが
『本当に阿保だな。その傷がなぜ癒えていると思っているのだ。ちなみに、御連舎は全員何かしら力を持っている。気持ちは分かるが隠さなくていい』
「そ、そうなんですね」
かなりほっとした。今まで恐れていたのが馬鹿みたいだ。
「でも、自分の能力と男の子は無縁であると言い切れます」
『そうか、君の能力は何だ』
「おれは、自分の
『着いたぞ』
えええ、話させてくれないのか。
でも、歩いた時間は行きの半分くらいにしか感じなかった。この人から優しさを感じた。そして話している間も楽しかった。
『帰ったぞ』
「おかえり!あらぁ、初日から朝帰り?いいねぇいいねぇ」
『こんなのよりもこれが魅力的だったぞ』
「お!いいねこれぇ!なになに、こんなに太いのがお好みなんですかぁ」
『そうではなくてだな』
「どおもぉ!」
「あ、どうもです」
「上がって上がって!朝御飯食べよ!」
「え、いいんですか?」
「いいも何も!サキのお手伝いしてくれたんでしょ?」
『徹夜して引っ掻かれて気を失ってただけだがな』
「もう、またぁ、可愛くないなぁ……ま!いいから!みんなの自己紹介も兼ねて……ね!」
「はい、では、いただきます」
「ん!よし!んじゃこっち来て!」
元気だな……にしても、刃物女はサキっていうのか。[裂き]ってことなのか?
食卓らしき部屋に入ると、すでに三人の女性が朝御飯を食べている。もわぁと美味しそうな匂いが顔を撫でる。
「どこに座れば……」
『ここに来い』
サキさんの隣の座布団に導かれ、何も置かれていない綺麗な机を見つめる。
「サキぃ!持っていくの手伝ってぇ!」
『ほら、お呼びだぞ』
「えぇ……」
『そこを曲がって左だ。早く行ってやれ』
「はぁ……」
草履を再び履き、すたすたと歩いていくと、味噌汁をよそう先程の少女がいた。
『え!?なんで君!?』
「いや、サキさんが……」
『もう……はい、これ持ってってくれる?』
「はい」
来た道を戻っていく。先程よりも、香ばしい匂いが強く、鼻をつつく。
かたっとお盆を置くと
『ご苦労』
と、サキさん。
あんたのせいだ。
「はいじゃあ食べながら自己紹介してこっか!じゃあ君から!」
「はい、天皇の命を受け、昨日からお世話係となりました、楔太郎です」
もちろん、鬼力についてだ。
おれの傷は、かなり深かった。しかし、翌朝には血は止まっていた。それに、あの化物を一瞬で倒している。常人にできるだろうか……
だがもし、仮に、鬼の子であることを話したとして、彼女が一般人であるなら間違いなく処刑される。まあ、ここは隠し通すのが無難であろう。
『そういえば』
「はい?」
『山で、お前は変な行動をとっていたな』
「え!?いや、ええと……」
『お前は誰と話していたのだ』
「ん?」
よかった。左足にだけ込めた鬼力を見破られたかと思った。彼女は鋭そうだ。慎重に、ここでへまをするわけにはいかない。
「あぁ、あの男の子ですか」
『そうなのかは分からん。私には見えなかったからな』
「まぁ、真夜中でしたからね」
『馬鹿言え、真夜中だから、少年が山で一人なんておかしいだろう』
「……あっ!」
『お前の力と関係あるのか』
「いや、そんな力ではないです……ああっ!いや、その、ちが
『本当に阿保だな。その傷がなぜ癒えていると思っているのだ。ちなみに、御連舎は全員何かしら力を持っている。気持ちは分かるが隠さなくていい』
「そ、そうなんですね」
かなりほっとした。今まで恐れていたのが馬鹿みたいだ。
「でも、自分の能力と男の子は無縁であると言い切れます」
『そうか、君の能力は何だ』
「おれは、自分の
『着いたぞ』
えええ、話させてくれないのか。
でも、歩いた時間は行きの半分くらいにしか感じなかった。この人から優しさを感じた。そして話している間も楽しかった。
『帰ったぞ』
「おかえり!あらぁ、初日から朝帰り?いいねぇいいねぇ」
『こんなのよりもこれが魅力的だったぞ』
「お!いいねこれぇ!なになに、こんなに太いのがお好みなんですかぁ」
『そうではなくてだな』
「どおもぉ!」
「あ、どうもです」
「上がって上がって!朝御飯食べよ!」
「え、いいんですか?」
「いいも何も!サキのお手伝いしてくれたんでしょ?」
『徹夜して引っ掻かれて気を失ってただけだがな』
「もう、またぁ、可愛くないなぁ……ま!いいから!みんなの自己紹介も兼ねて……ね!」
「はい、では、いただきます」
「ん!よし!んじゃこっち来て!」
元気だな……にしても、刃物女はサキっていうのか。[裂き]ってことなのか?
食卓らしき部屋に入ると、すでに三人の女性が朝御飯を食べている。もわぁと美味しそうな匂いが顔を撫でる。
「どこに座れば……」
『ここに来い』
サキさんの隣の座布団に導かれ、何も置かれていない綺麗な机を見つめる。
「サキぃ!持っていくの手伝ってぇ!」
『ほら、お呼びだぞ』
「えぇ……」
『そこを曲がって左だ。早く行ってやれ』
「はぁ……」
草履を再び履き、すたすたと歩いていくと、味噌汁をよそう先程の少女がいた。
『え!?なんで君!?』
「いや、サキさんが……」
『もう……はい、これ持ってってくれる?』
「はい」
来た道を戻っていく。先程よりも、香ばしい匂いが強く、鼻をつつく。
かたっとお盆を置くと
『ご苦労』
と、サキさん。
あんたのせいだ。
「はいじゃあ食べながら自己紹介してこっか!じゃあ君から!」
「はい、天皇の命を受け、昨日からお世話係となりました、楔太郎です」
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