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第一章 世界創造編
16.鳥を創る
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「まったく横暴なんだから……。戻してきたよ、レカエル」
「横暴ではなく、常識があるだけですよ。私」
『明星』で神殿に乗り付けたツツミとエウラシアを、レカエルは追い返したのだった。
「あんな大きな物をどこに降ろすつもりだったんですか」
「着陸のことは考えてなかったなぁ。まあその辺の森にでも」
「またレバノンスギたちの怒りを買いたいなら止めはしませんが」
いずれは神殿周りに着陸場を造らねばならないかもしれない。レカエルをどう説得したものか思案に暮れるツツミであった。
「で、どうだった? かっこよかったでしょ!」
わざわざレカエルの神殿に戻ってきたのは明星を自慢するためである。見るとエウラシアもVサインを出している。なかなか楽しかったらしい。
「……なんで家が変形しなければならないんですか」
「ロマンだよ、ロマン」
「理解に苦しみます」
太陽や月の金属人形と違い、乗り込み型木製ロボはレカエルの趣味に合わなかったらしい。
「だいたいあなたたちも飛べるではないですか。何故わざわざあんなものに乗って……」
「自分で飛ぶのと、操縦する感覚っていうのは全く別物なんだよ! いやー初めてだったけどうまくいってよかったよかった」
今までは創りたくても創れなかった。それに高天原であれを飛ばしたら大目玉である。
以前人間界で、巨大ロボットの等身大サイズの立像ができたことがあった。
こっそり奪って実際に飛べるようにし、高天原に持ってこようと企んだツツミ。計画は未然にウカノミタマの知るところとなり頓挫した。
ツツミの元世界でのちょっとしたお茶目の一つである。
「そんなことをしているから今この世界にいるのでしょうに……。ああ、ところで飛ぶと言えば」
レカエルは思い出したように言った。
「まだ鳥を創っていませんでしたね」
そういうことで生き物づくり空を飛ぶ生物編in神殿である。今回も三人で一種類ずつ、計三種類を創る事になった。
鳥に関しては、地上だけでなく天界にも来れるようにすることになった。鳥たちを一種の使いにして地上を見回らせる。
もし何か異変があれば、天界にいるツツミたちにも様子を知らせさせるのである。
「じゃあ。まず。……これ」
エウラシアが出したのはかなり大きめの鳥だった。腰の高さくらいまで体高がある。足が長く、色は灰色だった。
何より目を引くのが頭部のアンバランスさである。体に対して、首から上の部分が明らかに大きいのである。そしてその顔の半分以上をクチバシが占めていた。
クチバシの上部にある目はぎょろっとしている。はっきり言ってかなり目つきが悪い。
そして、置物かと思うほどその鳥は微動だにしない。
「ねえ……これ生きてるの?」
鳥の目の前で手を振ってみるツツミ。相変わらず置物は動かない。
「はい。これ」
エウラシアがツツミに魚を手渡す。キョトンとしていると急に鳥が動いた。想像できない速さでツツミの手から魚を奪い取る。
「うひゃあ!」
鳥はバクバクとクチバシを開け閉めし、上を向くとごくりと魚を飲み込んだ。再び全く動かなくなる。
「……かわいい」
「怖いよ!」
ツツミがどうしても好きになれないタイプの生き物だった。
エウラシア曰く、元世界に実際にいる鳥らしい。必要がないときには全く動かないのが共感できるそうだ。
「こ、個性的な鳥ですね。では次は私が……」
レカエルもその鳥は苦手らしい。近づかないようにしながら取り出したのはハトだった。くるっくー、と鳴きながら頭を前後に揺らし歩き出す。
「ハト?」
「ええ、ハトです」
「……で、何がどう普通のハトと違うの?」
「え? いえ、何もどうも普通のハトです」
ガタッとツツミは立ち上がった。信じられないことが起こったためである。
「まさか……レカエルが普通の生き物を出すなんて!?」
「なんですかそれは」
半目になるレカエル。構わずエウラシアとひそひそ話す。
「まさかあのレカエルが……」
「前代。未聞」
「だよねだよね……。もしかしたら何か悪い物が憑りついて……」
「……お祓い?」
「いい加減にしなさい!」
レカエルが不本意そうに声を上げた。とはいえ若干の自覚があったのか、チラッと顔をそらす。
「理由は特にないですよ。真っ先に思い付いたのがハトだっただけです。賢いんですよ。大洪水の時陸地を真っ先に見つけたのもこの子です」
偵察任務にうってつけ、という意味でハト以外に考えられなかったそうだ。ちなみにいつも通り色は白ではある。
最後はツツミである。何故か用意したのはシルクハットだった。手品のように布をかぶせ、さっと引く。
「じゃーーん!」
「これは……ウサギですか?」
ツツミに耳を掴まれてじたばたしているウサギ。
「ツツミ。今回作るのは『鳥』ですよ?」
「うん? うん、だからウサギ」
何を言っているのかわからないという表情のツツミとレカエル。
「えっと……ウサギって鳥でしょ?」
「えっ」
レカエルはエウラシアの方に確認するように視線を動かした。こてん、とエウラシアも首をかしげる。
「私の国では鳥っていう扱いだったよ? 数え方も一羽、二羽って」
「ウサギ、飛べないではないですか」
「飛べるもん!」
ツツミが手を離すと、ウサギは長い耳を目に見えないほどのスピードで羽ばたかせた。辺りを自由に飛び回り、しばらくして着地する。
「ねっ」
得意げなツツミ。エウラシアも頷く。
「そっか。ウサギって。鳥。だったんだ」
「エウラシアあなたまで……」
そういうレカエルも、最早何が何だかわからないほど混乱した様子ではあった。
これでひとまず揃ったようだ。後は空に放つだけだと思ったとき、エウラシアが引き留めた。
「待って。……これも」
そういって現れたのはフクロウだった。目を閉じ、じっとしている。もっとも先ほどの鳥とは違い、エウラシアが促すと渋々といった様子で手から離れた。
「んー。夜も。飛べる」
「あっ!」
ツツミとレカエルは同時に声を上げる。普通の鳥は昼間しか飛ばないことを失念していた。それを見越したエウラシアの準備の良さである。
「さすがエウラシア。じゃあ全部で四種類だね。早速放しに行こうか」
「飛ばす。のは。フクロウだけ」
先ほどの怪鳥は見張り任務に就かせないらしい。実は飛行力もそれほど強い鳥ではないそうだ。
「では、なぜ出したんですか?」
「かわいいから」
「……」
あくまで『かわいい』と言い張るエウラシアであった。
その後、怪鳥は天界に居ついた。気配もほとんどないため、気づかずに近くを通るとぎょっとすること請け合いである。
ほかの三種の鳥は各々地上と天界を行き来することになった。ハト、フクロウ、そしてウサギ。
これらの偵察部隊は、数日後早速役に立つことになったのである。
「横暴ではなく、常識があるだけですよ。私」
『明星』で神殿に乗り付けたツツミとエウラシアを、レカエルは追い返したのだった。
「あんな大きな物をどこに降ろすつもりだったんですか」
「着陸のことは考えてなかったなぁ。まあその辺の森にでも」
「またレバノンスギたちの怒りを買いたいなら止めはしませんが」
いずれは神殿周りに着陸場を造らねばならないかもしれない。レカエルをどう説得したものか思案に暮れるツツミであった。
「で、どうだった? かっこよかったでしょ!」
わざわざレカエルの神殿に戻ってきたのは明星を自慢するためである。見るとエウラシアもVサインを出している。なかなか楽しかったらしい。
「……なんで家が変形しなければならないんですか」
「ロマンだよ、ロマン」
「理解に苦しみます」
太陽や月の金属人形と違い、乗り込み型木製ロボはレカエルの趣味に合わなかったらしい。
「だいたいあなたたちも飛べるではないですか。何故わざわざあんなものに乗って……」
「自分で飛ぶのと、操縦する感覚っていうのは全く別物なんだよ! いやー初めてだったけどうまくいってよかったよかった」
今までは創りたくても創れなかった。それに高天原であれを飛ばしたら大目玉である。
以前人間界で、巨大ロボットの等身大サイズの立像ができたことがあった。
こっそり奪って実際に飛べるようにし、高天原に持ってこようと企んだツツミ。計画は未然にウカノミタマの知るところとなり頓挫した。
ツツミの元世界でのちょっとしたお茶目の一つである。
「そんなことをしているから今この世界にいるのでしょうに……。ああ、ところで飛ぶと言えば」
レカエルは思い出したように言った。
「まだ鳥を創っていませんでしたね」
そういうことで生き物づくり空を飛ぶ生物編in神殿である。今回も三人で一種類ずつ、計三種類を創る事になった。
鳥に関しては、地上だけでなく天界にも来れるようにすることになった。鳥たちを一種の使いにして地上を見回らせる。
もし何か異変があれば、天界にいるツツミたちにも様子を知らせさせるのである。
「じゃあ。まず。……これ」
エウラシアが出したのはかなり大きめの鳥だった。腰の高さくらいまで体高がある。足が長く、色は灰色だった。
何より目を引くのが頭部のアンバランスさである。体に対して、首から上の部分が明らかに大きいのである。そしてその顔の半分以上をクチバシが占めていた。
クチバシの上部にある目はぎょろっとしている。はっきり言ってかなり目つきが悪い。
そして、置物かと思うほどその鳥は微動だにしない。
「ねえ……これ生きてるの?」
鳥の目の前で手を振ってみるツツミ。相変わらず置物は動かない。
「はい。これ」
エウラシアがツツミに魚を手渡す。キョトンとしていると急に鳥が動いた。想像できない速さでツツミの手から魚を奪い取る。
「うひゃあ!」
鳥はバクバクとクチバシを開け閉めし、上を向くとごくりと魚を飲み込んだ。再び全く動かなくなる。
「……かわいい」
「怖いよ!」
ツツミがどうしても好きになれないタイプの生き物だった。
エウラシア曰く、元世界に実際にいる鳥らしい。必要がないときには全く動かないのが共感できるそうだ。
「こ、個性的な鳥ですね。では次は私が……」
レカエルもその鳥は苦手らしい。近づかないようにしながら取り出したのはハトだった。くるっくー、と鳴きながら頭を前後に揺らし歩き出す。
「ハト?」
「ええ、ハトです」
「……で、何がどう普通のハトと違うの?」
「え? いえ、何もどうも普通のハトです」
ガタッとツツミは立ち上がった。信じられないことが起こったためである。
「まさか……レカエルが普通の生き物を出すなんて!?」
「なんですかそれは」
半目になるレカエル。構わずエウラシアとひそひそ話す。
「まさかあのレカエルが……」
「前代。未聞」
「だよねだよね……。もしかしたら何か悪い物が憑りついて……」
「……お祓い?」
「いい加減にしなさい!」
レカエルが不本意そうに声を上げた。とはいえ若干の自覚があったのか、チラッと顔をそらす。
「理由は特にないですよ。真っ先に思い付いたのがハトだっただけです。賢いんですよ。大洪水の時陸地を真っ先に見つけたのもこの子です」
偵察任務にうってつけ、という意味でハト以外に考えられなかったそうだ。ちなみにいつも通り色は白ではある。
最後はツツミである。何故か用意したのはシルクハットだった。手品のように布をかぶせ、さっと引く。
「じゃーーん!」
「これは……ウサギですか?」
ツツミに耳を掴まれてじたばたしているウサギ。
「ツツミ。今回作るのは『鳥』ですよ?」
「うん? うん、だからウサギ」
何を言っているのかわからないという表情のツツミとレカエル。
「えっと……ウサギって鳥でしょ?」
「えっ」
レカエルはエウラシアの方に確認するように視線を動かした。こてん、とエウラシアも首をかしげる。
「私の国では鳥っていう扱いだったよ? 数え方も一羽、二羽って」
「ウサギ、飛べないではないですか」
「飛べるもん!」
ツツミが手を離すと、ウサギは長い耳を目に見えないほどのスピードで羽ばたかせた。辺りを自由に飛び回り、しばらくして着地する。
「ねっ」
得意げなツツミ。エウラシアも頷く。
「そっか。ウサギって。鳥。だったんだ」
「エウラシアあなたまで……」
そういうレカエルも、最早何が何だかわからないほど混乱した様子ではあった。
これでひとまず揃ったようだ。後は空に放つだけだと思ったとき、エウラシアが引き留めた。
「待って。……これも」
そういって現れたのはフクロウだった。目を閉じ、じっとしている。もっとも先ほどの鳥とは違い、エウラシアが促すと渋々といった様子で手から離れた。
「んー。夜も。飛べる」
「あっ!」
ツツミとレカエルは同時に声を上げる。普通の鳥は昼間しか飛ばないことを失念していた。それを見越したエウラシアの準備の良さである。
「さすがエウラシア。じゃあ全部で四種類だね。早速放しに行こうか」
「飛ばす。のは。フクロウだけ」
先ほどの怪鳥は見張り任務に就かせないらしい。実は飛行力もそれほど強い鳥ではないそうだ。
「では、なぜ出したんですか?」
「かわいいから」
「……」
あくまで『かわいい』と言い張るエウラシアであった。
その後、怪鳥は天界に居ついた。気配もほとんどないため、気づかずに近くを通るとぎょっとすること請け合いである。
ほかの三種の鳥は各々地上と天界を行き来することになった。ハト、フクロウ、そしてウサギ。
これらの偵察部隊は、数日後早速役に立つことになったのである。
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