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第一章 世界創造編
19.いいお嫁さんとは
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三人は一旦天界に戻ってきた。腰を落ち着けて、じっくりお嫁さんを創るのである。
「とりあえず、あの人間と意思疎通できないと話にならないよね。二重の意味で」
ツツミがそういうと、レカエルは、ふふん、と得意げに笑った。
「そこは抜かりがありません」
そういって取り出したのは、白い棒状のものである。
「なにこれ?」
「あの人間のあばら骨です」
「えっ!」
先ほど人間のわき腹でなにかごそごそしていたのはこれを拝借したかったらしい。
「大丈夫なの?」
「きちんと埋め合わせておきました。問題ありません」
持ってきたあばら骨を手で転がすレカエル。そこはかとなく猟奇的である。
「これを元に、新しい人間を創りましょう。なにせ自分が元となっているのです。相性抜群ですよ」
レカエルの使える神様も、最初の女性はこのように創ったそうだ。確かに一から創るよりは楽そうである。
「これなら。問題。ない」
エウラシアのお墨付きが出たところで、どんなお嫁さんにするかの話し合いが始まったのだが……。
「一番重要なのは、我が主への信仰です」
レカエルは断言した。元々この世界を、自分が使える神の王国にするのだという野望を持つレカエルである。
これを機に、人間に信仰を根付かせてやろうと息巻くのは当然であった。
「……いや、どう考えても一番ではないでしょ」
もっと大切な何かがある気がする。というか、最初に出てくるのが二人の関係に関することではなく、神への信仰というのはどうなのだろうか。
「私が伴侶を持つのであれば、それが大事な最も大事な点です。むしろそれ以外は必要ありません」
「ごめん。私レカエルとは結婚できないや」
「こちらもあなたなんか願い下げですよ」
互いに毒を吐く二人。それにしても、もしレカエルが人間だったらしょうもない結婚詐欺に引っかかりそうな気がする。
『マジでー。俺も神様めっちゃリスペクトしてんだ。気が合うね』
……こんなことを言われてほいほい相手に尽くし始めるレカエルのイメージが浮かんだ。いやいやいくら何でもチョロくはないだろう。ないと思いたい。
「一番大事なのは第三者じゃなくて、愛の深さでしょ」
ツツミはそう反論した。あくまで結婚するのは当人たちなのだ。お互い愛し、愛されることが必要である。
「愛の深さですか……」
「そう。この人が好き。この人だけが好き。この人のためだったら何だってしてあげる。それが愛だよ」
どうだ、とツツミは自分の恋愛観を語ってみた。
「それ、自分のご経験ですか?」
「いや、そんな相手には未だ出会ったことはないけど」
「……説得力が一気になくなりましたね」
「う、うるさいな」
恋愛漫画などから得た確かな真理である。とやかく言われる筋合いはない。
「それで。ツツミは。そんな。……相手が。いたら。何を。してあげるの?」
「えっ?」
そこまでは考えていなかった。してあげたいこと。
「……オススメのアニメとかゲームとかを教えてあげる!」
「それはツツミがしたいことでしょう。相手が喜ぶとは限りませんよ」
レカエルにたしなめられる。ツツミは考えた。自分にとって一番身近な異性……。ウカノミタマだろう。異性というよりは親のようなものではあるが。
ウカノミタマがツツミにしてもらいたいことは何だろう。そういえば、以前言われたことがあった。
「……なんにも問題を起こさず、おとなしくしていてあげる」
「……確かに、それが一番かもしれませんね」
妙に納得されてしまった。はなはだ不本意である。
「……いいもんいいもん。きっと私が好きになる人はゲームが好きで、アニメが好きで、漫画が好きで、楽しいこと考えるのが大好きなんだもん……」
まだ見ぬ恋人だ。理想は高く持ってやるのだ。とはいえ尻すぼみになってしまったツツミの頭を、エウラシアがポンポンと叩く。
「エウラシア。そういう知り合いいない?」
「……。私は。ツツミが。楽しそうなの。好きだよ?」
「エ、エウラシア!」
思いがけない言葉にちょっと感動し、ヒシッと抱き着くツツミ。エウラシアは頭、というか耳を撫でてくれた。もう片方の手は腰のあたり、というかしっぽをさすっている。
「……ツツミ。あなた騙されていると思います」
半目のレカエルの言葉は一理あると思ったが、ツツミはあえて考えないようにした。
「で、エウラシアは? どんなお嫁さんがいいと思う?」
エウラシアは少し考える素振りを見せてから答えた。
「家庭的な。感じ」
「ほうほう王道だね。確かにいいかも」
家事が得意で、優しい感じの母性溢れた女性。基本である。
「住む場所を。きちんと。守る。片時も。そこから。……離れない。絶対に。自分の場所から。動かない」
「それもあなたのしたいことでしょう……」
やはりあきれ顔のレカエル。エウラシアは続ける。
「もうひとつ。うー。大事なのは」
「うん、なに?」
「胸の。大きさ」
臆面もなく言い切った。
「い、いや、そこはそんなに重要では……ないよね?」
「え、ええ。大事なのは内面的な美しさです。そうに決まってます」
なんとなく自分の体を確かめるツツミとレカエル。……そう、そんなことはたいして重要ではない。ないはずだ。
関係のない話ではあるが、神使というのは生まれたときから同じ姿である。基本的に成長はしない。
二人があくまで関係のない話に思いを巡らせていると、エウラシアは小首をかしげていった。
「大事だよ?」
美しいその肢体でオリンポスの最高神すら魅了したエウラシア。彼女の言葉は大きな説得力を持って二人を押しつぶしたのだった。
「とりあえず、あの人間と意思疎通できないと話にならないよね。二重の意味で」
ツツミがそういうと、レカエルは、ふふん、と得意げに笑った。
「そこは抜かりがありません」
そういって取り出したのは、白い棒状のものである。
「なにこれ?」
「あの人間のあばら骨です」
「えっ!」
先ほど人間のわき腹でなにかごそごそしていたのはこれを拝借したかったらしい。
「大丈夫なの?」
「きちんと埋め合わせておきました。問題ありません」
持ってきたあばら骨を手で転がすレカエル。そこはかとなく猟奇的である。
「これを元に、新しい人間を創りましょう。なにせ自分が元となっているのです。相性抜群ですよ」
レカエルの使える神様も、最初の女性はこのように創ったそうだ。確かに一から創るよりは楽そうである。
「これなら。問題。ない」
エウラシアのお墨付きが出たところで、どんなお嫁さんにするかの話し合いが始まったのだが……。
「一番重要なのは、我が主への信仰です」
レカエルは断言した。元々この世界を、自分が使える神の王国にするのだという野望を持つレカエルである。
これを機に、人間に信仰を根付かせてやろうと息巻くのは当然であった。
「……いや、どう考えても一番ではないでしょ」
もっと大切な何かがある気がする。というか、最初に出てくるのが二人の関係に関することではなく、神への信仰というのはどうなのだろうか。
「私が伴侶を持つのであれば、それが大事な最も大事な点です。むしろそれ以外は必要ありません」
「ごめん。私レカエルとは結婚できないや」
「こちらもあなたなんか願い下げですよ」
互いに毒を吐く二人。それにしても、もしレカエルが人間だったらしょうもない結婚詐欺に引っかかりそうな気がする。
『マジでー。俺も神様めっちゃリスペクトしてんだ。気が合うね』
……こんなことを言われてほいほい相手に尽くし始めるレカエルのイメージが浮かんだ。いやいやいくら何でもチョロくはないだろう。ないと思いたい。
「一番大事なのは第三者じゃなくて、愛の深さでしょ」
ツツミはそう反論した。あくまで結婚するのは当人たちなのだ。お互い愛し、愛されることが必要である。
「愛の深さですか……」
「そう。この人が好き。この人だけが好き。この人のためだったら何だってしてあげる。それが愛だよ」
どうだ、とツツミは自分の恋愛観を語ってみた。
「それ、自分のご経験ですか?」
「いや、そんな相手には未だ出会ったことはないけど」
「……説得力が一気になくなりましたね」
「う、うるさいな」
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「それで。ツツミは。そんな。……相手が。いたら。何を。してあげるの?」
「えっ?」
そこまでは考えていなかった。してあげたいこと。
「……オススメのアニメとかゲームとかを教えてあげる!」
「それはツツミがしたいことでしょう。相手が喜ぶとは限りませんよ」
レカエルにたしなめられる。ツツミは考えた。自分にとって一番身近な異性……。ウカノミタマだろう。異性というよりは親のようなものではあるが。
ウカノミタマがツツミにしてもらいたいことは何だろう。そういえば、以前言われたことがあった。
「……なんにも問題を起こさず、おとなしくしていてあげる」
「……確かに、それが一番かもしれませんね」
妙に納得されてしまった。はなはだ不本意である。
「……いいもんいいもん。きっと私が好きになる人はゲームが好きで、アニメが好きで、漫画が好きで、楽しいこと考えるのが大好きなんだもん……」
まだ見ぬ恋人だ。理想は高く持ってやるのだ。とはいえ尻すぼみになってしまったツツミの頭を、エウラシアがポンポンと叩く。
「エウラシア。そういう知り合いいない?」
「……。私は。ツツミが。楽しそうなの。好きだよ?」
「エ、エウラシア!」
思いがけない言葉にちょっと感動し、ヒシッと抱き着くツツミ。エウラシアは頭、というか耳を撫でてくれた。もう片方の手は腰のあたり、というかしっぽをさすっている。
「……ツツミ。あなた騙されていると思います」
半目のレカエルの言葉は一理あると思ったが、ツツミはあえて考えないようにした。
「で、エウラシアは? どんなお嫁さんがいいと思う?」
エウラシアは少し考える素振りを見せてから答えた。
「家庭的な。感じ」
「ほうほう王道だね。確かにいいかも」
家事が得意で、優しい感じの母性溢れた女性。基本である。
「住む場所を。きちんと。守る。片時も。そこから。……離れない。絶対に。自分の場所から。動かない」
「それもあなたのしたいことでしょう……」
やはりあきれ顔のレカエル。エウラシアは続ける。
「もうひとつ。うー。大事なのは」
「うん、なに?」
「胸の。大きさ」
臆面もなく言い切った。
「い、いや、そこはそんなに重要では……ないよね?」
「え、ええ。大事なのは内面的な美しさです。そうに決まってます」
なんとなく自分の体を確かめるツツミとレカエル。……そう、そんなことはたいして重要ではない。ないはずだ。
関係のない話ではあるが、神使というのは生まれたときから同じ姿である。基本的に成長はしない。
二人があくまで関係のない話に思いを巡らせていると、エウラシアは小首をかしげていった。
「大事だよ?」
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