この異世界であなたを守るために

日妻武士

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羽根

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 ご老体は家の中に我々を案内した。
 家の中は古びていたが小綺麗にされており、かえって木の美しさが熟成されていた。
 どこか郷愁の思いすらも駆り立てられた。

 女は手を取り、4つの椅子と間に大きな食卓がある部屋へ通した。
 我々を椅子に座らせ、老体に何やら話している。
 我々を拾った経緯を説明していると考えるのが自然だろう。
 老体はいかにも考え事をしているような表情をつくり、氷柱のような白い髭をなぞる。

 「□□ □□□?」

 「言葉はわかりませんが、我々は敵ではないです」

 情報の相互伝達が無く、会話の定義から外れた会話の後、老体は視線を宝石を見定めるかのように、私の眼の中に刺した。
 それが五秒間続いた後、老体の口角は緩やかに上がり目尻を下げ、歴戦の皺を私に見せつけた。
 老体は何やら立っていた女に声をかけると、女は奥の部屋から両手に羽根と墨、小脇に紙を抱えてきた。
 やたら上質な紙である。
 羽根の色は鮮やかで、私が少年ならば、まだ見ぬ鳥獣の想像を掻き立てられそうだ。
 老体はひとこと何か話し、私の前に紙と羽根と墨を並べたが、当然文字も書けないはずで、私のするべき行動は見つからなかった。

「絵を描く事を言っているのではないでしょうか?」
 
 暫し聴いて無かった声は、私の心に潤いを与え、私の考えの硬さを虐めた。
 そうに違いない。 
 羽根を握り、描くものを考えるが墨がそのまま乾きそうだ。
 悩んでる私を見かねたのか、羽根をもらった少女はすぐにすらすらと何かを描いていった。
 瞼を閉じている二人、開けて辺りを見渡す二人、ひたすらな草原、道の石畳、やってきた馬車、なるほど、やはり少女は聡明に違いない。
 私から先入観が消えても、意味するものが理解るだろう。
 
「こんなもので伝わるでしょうか」

「いや、なかなかに凄い。やはりあなたは聡明だ」

「そんなこと無くてよ?」

 その微笑の意味を解読できた時、何度目かの頭痛が私を襲った。
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