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捜査
その8
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モニターについた通話装置での簡単なやり取りの後、マンションの出入り口からその内部へと招き入れられた二人の刑事たちは俺となな子が住む居室の扉の前にまで来るとそこでいったん立ち止まり外側についている来客用の連絡ブザーを鳴らした。
そして玄関口にいた俺がセキュリティを解除して内側から扉を開けるとその二人の刑事たちは挨拶もそこそこに玄関の土間で靴を脱いでからマンションの広い居室内と入り込みそれぞれがあたりをキョロキョロ見回して感心したみたいに驚きの声をあげた。
「いや~、いい、お住まいですなぁ」
「本当ですね。まったく、うらやましいー」
俺となな子はそんな刑事たちの浮ついた態度に困惑しながらも彼ら二人を先導する様に室内を移動するとさっきまでいた広々としたリビングルームに今度は四人で舞い戻りそこで彼らに今回の来訪の目的を聞く事にした。
リビングルームへと移動する間も前を歩く俺となな子に後ろからついてきている二人の刑事たちはあたりをキョロキョロと見回しておりなんだが落ち着かない様子であった。
やがて俺たち夫婦の背後を歩く二人の刑事のうち、年配の刑事の方が俺たちが歩く通路の壁にかけられた一幅の絵に目をつけたのか後ろから声をかけてきた。
それはインテリアとして購入した大きなパネル入りのリトグラフで巨大な波に翻弄される旅客船がリアルなタッチと鮮やかな色使いで描かれている。
ちなみにその一幅の絵の中に描かれている波間に漂う船の外観は偶然だろうがあのサンタフェス号によく似ていた。
「これは、立派な絵ですな。本物ですか?高かったでしょう」
彼の隣りにいるもう一人の若い刑事の方も歩きながらその絵を眺めて感嘆の言葉を口にする。
「俺、知ってますよ。これ、ラッセンの絵ですよね。マリンアートってやつ。俺、昔の彼女に誘われて発売会に行った事ありますよ。高くて買えなかったけどー」
俺は背後を歩く刑事たちの言葉に困惑しながらも足を止める事なく彼らの質問に答えた。
「まぁ、ポスターみたいな物ですからね。オリジナルと言うにはちょっと語弊がありますが数点しか剃られていない限定物ですからそれなりには高かったですよ。僕は本当はこういう色彩が派手すぎる絵はあまり好きではないのですが。妻の趣味でしてね」
俺の言葉に呼応するみたいに感嘆の声を上げる二人の刑事たち。
「ほぉ~」
「なるほど、なるほど」
だが、刑事たちのその媚びるみたいな口調と態度はなんだか裏がある気がして俺にとっては不愉快であった。
俺が隣を歩くなな子をふと見ると彼女は硬い表情で前だけを向いておりなんだか不安げな様子であった。
俺は背後から響く刑事たちの呑気な声をどこかいらただしげな気持ちで聞きながらも隣を歩く妻を見て彼女との今の生活をなんとしても守り抜かねばと心から思った。
なんだこんだで妻のなな子と共にリビングルームへと戻った俺は後ろからついてきている二人の刑事たちに先ほどまで俺たち夫婦が揃って座っていた部屋の中央に置かれた豪奢なソファセットの方を手で指し示しそこに座る様に勧めると自分たちもその向かい側でソファに二人並んで座った。
俺たちの先導で部屋の中に入った二人の刑事たちは我が家のリビングルームの広さと内装の豪奢さに驚嘆していた模様であったがすぐに俺の勧めに応じて俺たち夫婦が座るソファに向かい合って置かれたその豪奢なソファに次々とその身をうずめた。
先ほどまで俺たち夫婦が並んで座っていた大きな部屋のど真ん中に据えられたソファセットに今度はテーブルを挟んで左右に二人ずつ全部で四人が向かい合って座る形だ。
「うーむ、極楽、極楽。このフカフカ感は凄いな。まるで雲の上にいる様だー」
「まったくです、山さん。署内の固いパイプ椅子とはえらい違いです」
俺たち夫婦の向かい側でソファに並んで座る二人の刑事たちはその座り心地の良さに驚いたのかなんだか互いに顔を見合わせながらはしゃいでいる。
一方、向かい側のソファに並んで座る二人の刑事たちに対して正対する様に反対側のソファに並んで座る俺となな子は二人そろってその顔に不安げな表情を浮かべていた。
そんなこちら側の気持ちが伝わったのだろうか。
俺たち夫婦に正体する様に反対側のソファに並んで座る二人の刑事たちはそれぞれの顔に温和な笑顔を浮かべておりテーブルを挟んで向かい合っている俺たちをまるで安心させようとしているみたいであった。
俺たちの方から見て反対側のソファの左手に座る若い刑事の方は背が高くガッチリとした体型でいかにも精悍な感じであった。
それに比べて俺たちから見て右手でソファに座る刑事の方はかなりの年配で小柄な男であったが鋭い目つきをしていた。
言うなれば老練なベテラン刑事といった感じだ。
しかしながら俺はテーブルを挟んで向かい側のソファに並んで座る二人の刑事とは例の事件の取り調べの際に何度も会っておりもちろん顔を見知っていたが正直あまり好感を抱いてはいなかった。
何故なら、取り調べの際に俺の事を犯人として疑っているのが明白だったからだ。
俺を尋問する時の口調は丁寧ではあったが言葉の端々に俺の失言を誘う様な意図が見て取れたのだ。
そんなわけで俺は隣に座る妻のなな子と共にソファの上で身を固くしていたのだが、机を挟んで反対側のソファに並んで座る二人の刑事の方はリラックスした様子でこちらを見ておりそれぞれの顔に笑みを浮かべていた。
その時、緊張した雰囲気が耐えがたかったのだろうか。
俺の隣でソファに座っていた妻のなな子が突然スッと腰を浮かせてソファから立ちあがろうとする。
「わたし、飲み物でも入れてきます」
俺となな子が座るソファと向かい側で刑事たちが座るソファの間には先ほどなな子が入れてくれた二人分のティーカップが載った木造りのテーブルが置かれておりおそらくなな子は訪問者たちの分のお茶も用意しようとソファから立ち上がろうとしたのだろう。
しかし、俺はそんななな子の動きを片手で制すると彼女を再び俺の隣でソファの上に座らせる。
「駄目だよ、なな子。この人たちは事件の関係者からはどんな形でも接待を受けてはいけないんだ。就業規則で決まってるんだよ」
俺の言葉に無言でうなずきソファの上でしゅんとするなな子。
一方、そんな夫婦のやり取りをテーブルの向こう側から見ていたソファの上に並んで座る二人の刑事たちは二人揃って俺の言葉にうなずくとそれぞれが恐縮そうな口調で言葉を発した。
「そうなんですよ、奥さん。お気遣いなく」
「お気持ちには感謝いたします」
そして俺となな子の向かい側でソファに座る刑事たちのうち向かって右側に座っている年配の刑事の方がソファの上で少し前屈みの姿勢になると真剣な口調で俺に向かって言った。
「さて、そろそろ本題に入るとしましょうか。他でもない例の殺人事件の捜査についてなのですがー。実は最近とても大きな進展がありましてね。今日はそれについて報告する為にわざわざご自宅をお尋ねしたんですよ」
年配の刑事のその言葉に驚いた俺は隣にいる妻のなな子と共にソファの上で思わず身を乗り出す。
「それって、犯人が分かったって事ですか!?いったい誰なんです!教えて下さいっ!」
すると、俺となな子が座るソファの向かい側に置かれているソファの上で若い刑事と共に並んで座っているその年配の刑事は更に真顔になると何故か片手をスッと意味ありげに持ち上げた。
そして、その指先をこちらに向けてビシリと突きつけると、こう言った。
「犯人はあなたです。野原さん」
[解決編に続く]
そして玄関口にいた俺がセキュリティを解除して内側から扉を開けるとその二人の刑事たちは挨拶もそこそこに玄関の土間で靴を脱いでからマンションの広い居室内と入り込みそれぞれがあたりをキョロキョロ見回して感心したみたいに驚きの声をあげた。
「いや~、いい、お住まいですなぁ」
「本当ですね。まったく、うらやましいー」
俺となな子はそんな刑事たちの浮ついた態度に困惑しながらも彼ら二人を先導する様に室内を移動するとさっきまでいた広々としたリビングルームに今度は四人で舞い戻りそこで彼らに今回の来訪の目的を聞く事にした。
リビングルームへと移動する間も前を歩く俺となな子に後ろからついてきている二人の刑事たちはあたりをキョロキョロと見回しておりなんだが落ち着かない様子であった。
やがて俺たち夫婦の背後を歩く二人の刑事のうち、年配の刑事の方が俺たちが歩く通路の壁にかけられた一幅の絵に目をつけたのか後ろから声をかけてきた。
それはインテリアとして購入した大きなパネル入りのリトグラフで巨大な波に翻弄される旅客船がリアルなタッチと鮮やかな色使いで描かれている。
ちなみにその一幅の絵の中に描かれている波間に漂う船の外観は偶然だろうがあのサンタフェス号によく似ていた。
「これは、立派な絵ですな。本物ですか?高かったでしょう」
彼の隣りにいるもう一人の若い刑事の方も歩きながらその絵を眺めて感嘆の言葉を口にする。
「俺、知ってますよ。これ、ラッセンの絵ですよね。マリンアートってやつ。俺、昔の彼女に誘われて発売会に行った事ありますよ。高くて買えなかったけどー」
俺は背後を歩く刑事たちの言葉に困惑しながらも足を止める事なく彼らの質問に答えた。
「まぁ、ポスターみたいな物ですからね。オリジナルと言うにはちょっと語弊がありますが数点しか剃られていない限定物ですからそれなりには高かったですよ。僕は本当はこういう色彩が派手すぎる絵はあまり好きではないのですが。妻の趣味でしてね」
俺の言葉に呼応するみたいに感嘆の声を上げる二人の刑事たち。
「ほぉ~」
「なるほど、なるほど」
だが、刑事たちのその媚びるみたいな口調と態度はなんだか裏がある気がして俺にとっては不愉快であった。
俺が隣を歩くなな子をふと見ると彼女は硬い表情で前だけを向いておりなんだか不安げな様子であった。
俺は背後から響く刑事たちの呑気な声をどこかいらただしげな気持ちで聞きながらも隣を歩く妻を見て彼女との今の生活をなんとしても守り抜かねばと心から思った。
なんだこんだで妻のなな子と共にリビングルームへと戻った俺は後ろからついてきている二人の刑事たちに先ほどまで俺たち夫婦が揃って座っていた部屋の中央に置かれた豪奢なソファセットの方を手で指し示しそこに座る様に勧めると自分たちもその向かい側でソファに二人並んで座った。
俺たちの先導で部屋の中に入った二人の刑事たちは我が家のリビングルームの広さと内装の豪奢さに驚嘆していた模様であったがすぐに俺の勧めに応じて俺たち夫婦が座るソファに向かい合って置かれたその豪奢なソファに次々とその身をうずめた。
先ほどまで俺たち夫婦が並んで座っていた大きな部屋のど真ん中に据えられたソファセットに今度はテーブルを挟んで左右に二人ずつ全部で四人が向かい合って座る形だ。
「うーむ、極楽、極楽。このフカフカ感は凄いな。まるで雲の上にいる様だー」
「まったくです、山さん。署内の固いパイプ椅子とはえらい違いです」
俺たち夫婦の向かい側でソファに並んで座る二人の刑事たちはその座り心地の良さに驚いたのかなんだか互いに顔を見合わせながらはしゃいでいる。
一方、向かい側のソファに並んで座る二人の刑事たちに対して正対する様に反対側のソファに並んで座る俺となな子は二人そろってその顔に不安げな表情を浮かべていた。
そんなこちら側の気持ちが伝わったのだろうか。
俺たち夫婦に正体する様に反対側のソファに並んで座る二人の刑事たちはそれぞれの顔に温和な笑顔を浮かべておりテーブルを挟んで向かい合っている俺たちをまるで安心させようとしているみたいであった。
俺たちの方から見て反対側のソファの左手に座る若い刑事の方は背が高くガッチリとした体型でいかにも精悍な感じであった。
それに比べて俺たちから見て右手でソファに座る刑事の方はかなりの年配で小柄な男であったが鋭い目つきをしていた。
言うなれば老練なベテラン刑事といった感じだ。
しかしながら俺はテーブルを挟んで向かい側のソファに並んで座る二人の刑事とは例の事件の取り調べの際に何度も会っておりもちろん顔を見知っていたが正直あまり好感を抱いてはいなかった。
何故なら、取り調べの際に俺の事を犯人として疑っているのが明白だったからだ。
俺を尋問する時の口調は丁寧ではあったが言葉の端々に俺の失言を誘う様な意図が見て取れたのだ。
そんなわけで俺は隣に座る妻のなな子と共にソファの上で身を固くしていたのだが、机を挟んで反対側のソファに並んで座る二人の刑事の方はリラックスした様子でこちらを見ておりそれぞれの顔に笑みを浮かべていた。
その時、緊張した雰囲気が耐えがたかったのだろうか。
俺の隣でソファに座っていた妻のなな子が突然スッと腰を浮かせてソファから立ちあがろうとする。
「わたし、飲み物でも入れてきます」
俺となな子が座るソファと向かい側で刑事たちが座るソファの間には先ほどなな子が入れてくれた二人分のティーカップが載った木造りのテーブルが置かれておりおそらくなな子は訪問者たちの分のお茶も用意しようとソファから立ち上がろうとしたのだろう。
しかし、俺はそんななな子の動きを片手で制すると彼女を再び俺の隣でソファの上に座らせる。
「駄目だよ、なな子。この人たちは事件の関係者からはどんな形でも接待を受けてはいけないんだ。就業規則で決まってるんだよ」
俺の言葉に無言でうなずきソファの上でしゅんとするなな子。
一方、そんな夫婦のやり取りをテーブルの向こう側から見ていたソファの上に並んで座る二人の刑事たちは二人揃って俺の言葉にうなずくとそれぞれが恐縮そうな口調で言葉を発した。
「そうなんですよ、奥さん。お気遣いなく」
「お気持ちには感謝いたします」
そして俺となな子の向かい側でソファに座る刑事たちのうち向かって右側に座っている年配の刑事の方がソファの上で少し前屈みの姿勢になると真剣な口調で俺に向かって言った。
「さて、そろそろ本題に入るとしましょうか。他でもない例の殺人事件の捜査についてなのですがー。実は最近とても大きな進展がありましてね。今日はそれについて報告する為にわざわざご自宅をお尋ねしたんですよ」
年配の刑事のその言葉に驚いた俺は隣にいる妻のなな子と共にソファの上で思わず身を乗り出す。
「それって、犯人が分かったって事ですか!?いったい誰なんです!教えて下さいっ!」
すると、俺となな子が座るソファの向かい側に置かれているソファの上で若い刑事と共に並んで座っているその年配の刑事は更に真顔になると何故か片手をスッと意味ありげに持ち上げた。
そして、その指先をこちらに向けてビシリと突きつけると、こう言った。
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