不死者転生 -救いのない物語- 転生した不死者は生きる為に侵略し美しい眷属を従える

ボロン

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宗教国家オセの悲劇

不死者転生53 都市封鎖

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実験体をすり潰す度に傷を確認したが、結局は瘴気が飢えを満たすように肉体を貪り食っているだけという結論だ。

炎はまるで高温で燃えたような傷跡を残すが、焼くのではなく焼いたように細胞を侵食する、が正しい。ブラックホールは爆発のイメージに従って爆ぜるがその後は本来な飢えを満たすように喰らい尽くす。

魔法ではない、、、が、かなりの自由度で形を変えて攻撃できる、というのは大きいだろう。

実験体の本能からすると十分に役目を果たせる攻撃手段と考えられるが、、、どうせなら実戦で試したい。派手さはないが無色透明な毒をイメージした攻撃手段の効果を試してみたかった。

(アリア、全滅させても構わない手頃な村はあるか?)

(ご主人様、お久しぶりです!手頃な村ですか??)

(ああ、ちょっとした実験だ。)

(それでしたら、、、森に1番近い開拓村が宜しいかと。人口は60名程の村になります。)

(わかった、詳しい場所を教えてくれ。)


 アリアから教えてもらった村の上空から全体像を観察する。村長らしき人物の家を中心に8軒、簡素な集会所兼協会。家と家の間はそんなに離れておらず半径300m程の中にまとまっている。毒の効力を考えると、、、隅から侵食させて全体を覆うのは無理そうだ。

 電気のないこの世界の住民は日が登ると同時に動き出し、日が沈むと就寝する。今は深夜2時くらいだろうか?

 失敗した際の逃亡阻止の為に配下を周辺に待機させると、村の中心に向かって歩を進める。

 自然に近いせいか、虫や風にたなびく植物の音、小川の音、耳をすませば多くの音がする。静寂などとは無縁の世界。

 体の中心に溜め込んだ瘴気をゆっくりと排出すると空気の流れを無視してオレを中心に円を描くように拡がっていく。

モノが落ちたような音や、暴れもがくような衣擦れの音が微かに聞こえるが、大半は意識する事なく死を迎えた事だろう。

 時間にして20分程で必要な範囲に十分な瘴気毒を浸透させることができた。

 吸い込んだソレは肺に満たされた途端に周囲の組織を侵食し細胞を破壊する。実験体の肺は組織を破壊され空気を送り込んでも膨らむこともできなくなっていた。同じ事が起きている。吸い込んだ瞬間から肺は機能を失い酸素を供給できない。約10秒程で意識を喪失、肌は青くなり酸素供給を断たれた為に急速に死へ向かう身体は2分程で終わりを告げる。

 念の為、小動物の使い魔で生存者がいないから確認するが、見事に全滅させる事ができたようだ。異端者の仕業に見せる為に、儀式っぽく被害者の血で魔法陣を描く。

「これでいいだろ。」

(アリア、実験は成功だ。明日、教皇に神託として異端の儀式が行われたと言わせて調査させろ。)

(見ておりましたわ。承知しました。)

開拓村の一つが異端により一夜にして全滅した報告は教会から各国に共有された。その際に見つけた異端の儀式及びその魔法陣は機密として上層部のみに共有されたがどこからか噂は拡まり、民衆の不安を煽っていく。

 子供が地面に描いた落書きが魔法陣として告発されるようなレベルで恐怖は伝染し、狂気が日常と手を握る中、聖王国王宮内でその事件は起きた。

 王宮内に王族専用の教会がある。修道女がいつものように朝の祈りを捧げる為に入った瞬間、悲鳴が響き渡る。余りの光景に放心したように動けず一点を見つめる。それは、悲鳴を聞いて駆け付けた衛兵も同様であったという。

 磔にされ、裂かれた腹から出た臓物で装飾するように飾り付けられた女王の遺体。その傍らに描かれた魔法陣の中で幸せそうに笑っている幼い息子。

 教会内部に一歩踏み入ればもう戻れないような、そんな隔絶された異様な空間に思えてならなかった。他の誰もが入れずにいる中で、駆け付けた近衛騎士隊長は自らの命を賭ける思いで一歩踏み込む。

 それがまるで合図であったかのように描かれた魔法陣から黒い炎が燃え上がる。あっと思うより早く、隊長は主人を守るべく果敢に炎に飛び込む。全身を覆う鎧が炎を一時は退けてくれるはずだ。王子をお救いせねば、、そのように考えたのかもしれない、いや、考えるよりも早く身体が動いたのだろう。

 炎に触れた瞬間、想像した以上の苦痛が全身を覆う。鎧など何の意味もない。裸で飛び込んだのかと思う程、まったく防ぐことなく身体が焼け始める。高温で筋肉が一気に収縮し骨が砕けるのがわかった。肺も目も一瞬で燃やされたのだろう。気管は焼け爛れ、叫び声を上げる事もできず、、いや、生きながらに焼かれる苦痛にむしろ食いしばりすぎて奥歯が砕ける。

 自らがなぜこの場飛び込んだかなど、そんな理由など考える余裕はなかった。神経を直接焼く激痛にただただ襲われ逃れえぬ痛みは意識を失う事さえ許さない。それ故に彼の脳は死を選ぶ。

 隊長は黒き炎に飛び込むと直ぐに歪に身体を歪め倒れ動かなくなった。周りにはたんにそんな風に見えていた。誰も動く事ができないでいると炎は何もなかったかのように一瞬で消える。

 隊長と王子と思われる肉塊以外、服も内部の装飾品も焦げる事なく残っていた。余りにも常軌を逸した一連の流れに誰もが思考停止に陥り、動けずにいると聖騎士隊の女神と言われた女騎士が駆け付ける。

 彼女は恐れる事なく踏み入ると、聖なる加護を持つ聖剣を魔法陣に突き立てる。

瞬間、空間がはち切れたような甲高く乾いた音が響く。

 「魔神の呪いは断ち切りました!王宮内部に異端の徒が潜んでいるとみるべきです!誰一人、王宮から逃しはしません!今この瞬間から聖騎士隊により包囲を開始します!異教徒は必ず殲滅する!!異教徒でない者は我らに従え!そうすれば安全を約束しよう!!」

その宣言通り、聖騎士隊により王宮及び都市自体が完全封鎖される。一般の国民全てに外出禁止令がだされ、聖騎士隊と異端審問官による個別訪問が開始された。

 当初は突然の拘束に不満を抱いた住民もいたが、そのような声を発するものは異端の疑い有りとしてその場で処刑された。聖騎士隊は、国民の保護ではなく、徹底した異端狩りを目的としており、明確に態度で示したのだ。その冷徹な態度は、かえって反抗を抑え円滑な統制を可能にした。

 この日、聖王国が実質的に滅んだ日として記録されることになる。
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