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episode 1 逃避
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何もわからないが、それでもやるべきことは一つ。「生きる」だ。
答えは出ない。しかし、超重要な問題の数々を無理に飲み込み、僕はとにかく生きるための優先順位を考えた。
といっても、特別な技能も経験もない。せいぜいYouTubeでサバイバル番組を見ていたのと、サバイバル系のゲームが好きだった程度のど素人だ。
生きる上で優先するのは、水と火の確保。あとはシェルターの作成だろう。他に人がいるなら合流したいが、それは安全なのか?どちらにしても、今を生きる必要がある。それだけは間違っていない。
幸運だったのは湿地帯などではなく、日本に近い気候だったこと。それから、あてもなく彷徨って、杖に使えそうな長さと細さの比較的真っ直ぐな若木を見つけられたのは良かった。道具もないので、頑張って、頑張って……無理矢理に折ることができた。二時間近くかかったが。
槐のような軽さと硬さ。気に入った。
杖を振り回しながら藪を進み、彷徨うことさらに数時間。このまま行き倒れるのか?そんな不安と戦っていると、ふと水の流れる音が聞こえてきた。必死にその方向に歩みを進めると……
「あったぁ!」
小さな湧き水が斜面に沿って流れている。小さく、細い。だけど希望の水だ。水場があるということは、動物も来る。熊でもいたらどうする?
「水は……ある。次は?このまま飲むのは……」
命の水。その言葉がぴったりだと思えるほど澄んで見えるし、濾過されて湧き出ているのだろうから飲める……と思いたいが、どうなんだ?数時間に及ぶ強行軍で正直喉はカラカラだ。火を作れるだろうか?飲んで腹を壊すだけならまだいい、いや、それだって死ぬリスクがある。下痢にでもなれば脱水症待ったなしだ。とは言え……
「ええい!ままよ!」
できる限り、湧き出したばかりの場所から水をすくう。恐る恐る口をつける。
「っ……うまい!」冷たく澄んだ水が、渇ききった喉から全身へと一瞬で染みわたるのがわかった。やばい、これは本当にやばい。リスク?頭の片隅で警鐘が鳴るが、止められない。必死になって何度もすくい、飲む。
疲れていたのだろう。喉を潤してしばらく放心してしまった。
このままここにいるのは危険かもしれない。野生動物が気になる。だが、離れた後、またここに戻れるのか?辺りを注意深く観察してみる。素人目にはもちろんわかりゃしないだろうけど、それでも細心の注意を払って。もし、大型の動物も利用する水場なら痕跡があるはずだ。だが、自分がつけた足跡以外に草木が荒れた様子もない。小さな流れは途中で途切れてしまっている。その水路の周辺にも、それらしい痕跡が見当たらない。
「大丈夫……なのかな?」
本当に、運が良かったのだろう。願望がそう見せただけでなく、本当にこの水場は荒らされていないようだ。
「となると、ここを中心にテリトリーを拡げる他ないか。」
人里が近くにあるのか?他に危険はないか?何もわからないのだ。少なくとも水を安全に持ち運べるようになるまでは動けない。
「次は……火が欲しい。」
空を見ると、薄らと夜の影が近づいているように思う。『キャストアウェイ』で主人公がやってたように火をつけられるだろうか?
とにかく周りが見えてるうちに、火床となる木材、そして摩擦熱で着火させるための棒が必要だ。
付近を探索して見つけた枯れ木に、拳代の石。それに三十センチほどの枝を確保することができた。
枯れ木に石の尖った部分を当て、その上から石を打ちつける。中心をなぞるように何度かその作業を繰り返すうちに、ボロボロになりながらも、なんとか木を割ることができた。
外側を下にしてできるだけ平らになるように土を盛って固定する。割った面の真ん中あたりに窪みを作るように石を打ちながら加工し、その過程で出た木屑と枯草を用意した。綿でもあれば最高なんだが……
窪みに向かって棒を擦り続ける。摩擦音だけが響く。慣れない作業で腕はすぐにパンパンになるが、手を止めるわけにはいかない。何度も、何度も……頼む……そう念じながら必死に動かし続けていると、木屑が溜まり、摩擦熱で黒く焦げていく。きっともうすぐ……そう何度も言い聞かせながら続ける。
息が切れる。「くそっ……頼むよ……。」辺りは既に暗くなってきている。このまま夜を迎えるなんてまっぴらだ。
ひたすらに木を擦り続けていると、鼻腔をくすぐる焦げた匂い。後、少し……。微かに煙が立ち始めた。
頼む、頼む……もう十分な熱を持っているはず。手で黒焦げた箇所を覆うように囲み、そっと息を吹きかける。
二度三度……小さな赤い光が灯る。
「やった!」
この小さな火種を絶やさぬよう、枯草と木屑を被せ息を吹き込む。着いた!
その瞬間、橙色の炎が勢いよく立ち昇る。それは、美しく、目を奪われるほどの光だった。落ち着け。すぐに木屑と枯葉を追加して、更に小枝を被せていく。
火を育てる。
言葉通り育てるように枝を重ね、ある程度燃えてきたら、少し大きめの枯れ木の塊も追加していく。
「はは、やった!火だ!」
なんて暖かいのだろう。
安全かわからないこの場所で、この小さな火は心許ないけれど、それでも、、絶やさなければ僕を守ってくれる。
朝まで、木や枯れ草を焚べながら次に何をなすべきか考える。
安全を確保するならシェルターがいる。
雨と風をしのげればなんとかなる。次に食糧だ。
水の濾過も必要だし、やる事は多い。
それでも、、、凛々と燃える火を見つめていると「なんとかなる」そう思えたんだ。
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答えは出ない。しかし、超重要な問題の数々を無理に飲み込み、僕はとにかく生きるための優先順位を考えた。
といっても、特別な技能も経験もない。せいぜいYouTubeでサバイバル番組を見ていたのと、サバイバル系のゲームが好きだった程度のど素人だ。
生きる上で優先するのは、水と火の確保。あとはシェルターの作成だろう。他に人がいるなら合流したいが、それは安全なのか?どちらにしても、今を生きる必要がある。それだけは間違っていない。
幸運だったのは湿地帯などではなく、日本に近い気候だったこと。それから、あてもなく彷徨って、杖に使えそうな長さと細さの比較的真っ直ぐな若木を見つけられたのは良かった。道具もないので、頑張って、頑張って……無理矢理に折ることができた。二時間近くかかったが。
槐のような軽さと硬さ。気に入った。
杖を振り回しながら藪を進み、彷徨うことさらに数時間。このまま行き倒れるのか?そんな不安と戦っていると、ふと水の流れる音が聞こえてきた。必死にその方向に歩みを進めると……
「あったぁ!」
小さな湧き水が斜面に沿って流れている。小さく、細い。だけど希望の水だ。水場があるということは、動物も来る。熊でもいたらどうする?
「水は……ある。次は?このまま飲むのは……」
命の水。その言葉がぴったりだと思えるほど澄んで見えるし、濾過されて湧き出ているのだろうから飲める……と思いたいが、どうなんだ?数時間に及ぶ強行軍で正直喉はカラカラだ。火を作れるだろうか?飲んで腹を壊すだけならまだいい、いや、それだって死ぬリスクがある。下痢にでもなれば脱水症待ったなしだ。とは言え……
「ええい!ままよ!」
できる限り、湧き出したばかりの場所から水をすくう。恐る恐る口をつける。
「っ……うまい!」冷たく澄んだ水が、渇ききった喉から全身へと一瞬で染みわたるのがわかった。やばい、これは本当にやばい。リスク?頭の片隅で警鐘が鳴るが、止められない。必死になって何度もすくい、飲む。
疲れていたのだろう。喉を潤してしばらく放心してしまった。
このままここにいるのは危険かもしれない。野生動物が気になる。だが、離れた後、またここに戻れるのか?辺りを注意深く観察してみる。素人目にはもちろんわかりゃしないだろうけど、それでも細心の注意を払って。もし、大型の動物も利用する水場なら痕跡があるはずだ。だが、自分がつけた足跡以外に草木が荒れた様子もない。小さな流れは途中で途切れてしまっている。その水路の周辺にも、それらしい痕跡が見当たらない。
「大丈夫……なのかな?」
本当に、運が良かったのだろう。願望がそう見せただけでなく、本当にこの水場は荒らされていないようだ。
「となると、ここを中心にテリトリーを拡げる他ないか。」
人里が近くにあるのか?他に危険はないか?何もわからないのだ。少なくとも水を安全に持ち運べるようになるまでは動けない。
「次は……火が欲しい。」
空を見ると、薄らと夜の影が近づいているように思う。『キャストアウェイ』で主人公がやってたように火をつけられるだろうか?
とにかく周りが見えてるうちに、火床となる木材、そして摩擦熱で着火させるための棒が必要だ。
付近を探索して見つけた枯れ木に、拳代の石。それに三十センチほどの枝を確保することができた。
枯れ木に石の尖った部分を当て、その上から石を打ちつける。中心をなぞるように何度かその作業を繰り返すうちに、ボロボロになりながらも、なんとか木を割ることができた。
外側を下にしてできるだけ平らになるように土を盛って固定する。割った面の真ん中あたりに窪みを作るように石を打ちながら加工し、その過程で出た木屑と枯草を用意した。綿でもあれば最高なんだが……
窪みに向かって棒を擦り続ける。摩擦音だけが響く。慣れない作業で腕はすぐにパンパンになるが、手を止めるわけにはいかない。何度も、何度も……頼む……そう念じながら必死に動かし続けていると、木屑が溜まり、摩擦熱で黒く焦げていく。きっともうすぐ……そう何度も言い聞かせながら続ける。
息が切れる。「くそっ……頼むよ……。」辺りは既に暗くなってきている。このまま夜を迎えるなんてまっぴらだ。
ひたすらに木を擦り続けていると、鼻腔をくすぐる焦げた匂い。後、少し……。微かに煙が立ち始めた。
頼む、頼む……もう十分な熱を持っているはず。手で黒焦げた箇所を覆うように囲み、そっと息を吹きかける。
二度三度……小さな赤い光が灯る。
「やった!」
この小さな火種を絶やさぬよう、枯草と木屑を被せ息を吹き込む。着いた!
その瞬間、橙色の炎が勢いよく立ち昇る。それは、美しく、目を奪われるほどの光だった。落ち着け。すぐに木屑と枯葉を追加して、更に小枝を被せていく。
火を育てる。
言葉通り育てるように枝を重ね、ある程度燃えてきたら、少し大きめの枯れ木の塊も追加していく。
「はは、やった!火だ!」
なんて暖かいのだろう。
安全かわからないこの場所で、この小さな火は心許ないけれど、それでも、、絶やさなければ僕を守ってくれる。
朝まで、木や枯れ草を焚べながら次に何をなすべきか考える。
安全を確保するならシェルターがいる。
雨と風をしのげればなんとかなる。次に食糧だ。
水の濾過も必要だし、やる事は多い。
それでも、、、凛々と燃える火を見つめていると「なんとかなる」そう思えたんだ。
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