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episode 1 逃避
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火を得た安心感から、僕はすぐに気を引き締め直した。この火を絶やさないこと、そして身を守る場所が必要だ。野生動物、そして夜露から身を隠せる場所。
一夜が明け、探索を開始すると、水場からそう遠くない場所に、巨大な木を見つけた。その根元が、地面から少し浮き上がるようにして、浅い窪みを作っていた。
「ここなら」
迷いはなかった。巨木の存在自体が天然の壁になる。僕は火を起こすために集めていた枯れ木や近くの若木を使い、根元の窪みに沿って屋根を作り始めた。
石を積み、太い枝を渡して骨組みにし、その上から小枝と大量の枯葉を重ねていく。もちろん、雨風を完全に防ぐことなどできないが、何もないよりは遥かにマシだ。作業を終える頃には、まだ日が残っていたものの、辺りは薄暗くなり始めていた。
次に、このシェルター内で火を安全に維持する方法を考える。サバイバル番組では、雨が降るとすぐに焚き木が消えて落胆するシーンは珍しくない。巨木の根元側の土を掘り、窪みを作り、そこに慎重に焚き火を移す。土を掘り起こすのにも、石と杖しか道具がないため苦労した。窪みの中へ炎を移し入れると、冷えていた巨木の根がじんわりと温かくなるのを感じた。
「よし、これで今夜は凌げる」
安心は束の間、喉の渇きが再燃した。昨日飲んだ水は澄んで見えたが、腹を壊すリスクは消えていない。だが今は火がある。ならば、安全な水を確保するべきだ。
まずは容器が必要だ。僕は近くの若木の幹に向かい、先ほど火床作りで使った拳大の石を簡易的なナイフとして使う。石の尖った部分を樹皮に当て、叩き、切り裂くように作業を進める。不格好ではあったが、なんとか剥ぎ取った樹皮を折り曲げた。率直に言って、それは「箱」という呼称に失礼なレベルの代物だったが、今は仕方ない。
水場へ戻り、皮の箱で水をすくい入れる。水は簡単に漏れ出し、半分ほどは土に吸われる。それでも諦めずに何度も往復し、なんとかコップ数杯分の水を確保した。
火床の窪みに慎重に石を組み、水を溜めた皮の箱を恐る恐る乗せる。しばらくすると、水面に泡が立ち始めた。
煮沸消毒だ。不格好な皮の器の中の水が、ぐらぐらと煮える。熱で皮から何かが溶け出しているかもしれないが、細菌を殺せるなら背に腹は代えられない。湯気が立ち上り、あたりに焦げたような、濡れた木の匂いが漂う。完全に煮沸を終えた後、水を冷まし、再度飲む。
「……あぁ、生き返る」
温かい。そして、さっき飲んだ湧き水ほどの感動はないが、安全だという確信が、何よりの滋養になった。これで、火とシェルターと安全な水を確保だ。
小さく、だが確かな前進。生きるために必須の作業とはいえ、この手で道を切り拓いたという**達成感**が心地よかった。
丸二日が経過し、ここまでかなり順調に進んでいる。だが、それはそれだけだ。食料が確保できなければ詰む。僕は早速、槐の杖の先を火で炙り、石で削り、再び炙るという作業を繰り返しながら、槍の穂先を尖らせていった。
何が食べられて、毒なのかもわからない。果物はあるだろうか?そして肉だ。タンパク質の確保ができなければ、いずれ動けなくなる。
巨木に背を預け、自作の**槐槍**を抱き込むように抱えながら、ようやく寝ることができた。
—————————————————
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一夜が明け、探索を開始すると、水場からそう遠くない場所に、巨大な木を見つけた。その根元が、地面から少し浮き上がるようにして、浅い窪みを作っていた。
「ここなら」
迷いはなかった。巨木の存在自体が天然の壁になる。僕は火を起こすために集めていた枯れ木や近くの若木を使い、根元の窪みに沿って屋根を作り始めた。
石を積み、太い枝を渡して骨組みにし、その上から小枝と大量の枯葉を重ねていく。もちろん、雨風を完全に防ぐことなどできないが、何もないよりは遥かにマシだ。作業を終える頃には、まだ日が残っていたものの、辺りは薄暗くなり始めていた。
次に、このシェルター内で火を安全に維持する方法を考える。サバイバル番組では、雨が降るとすぐに焚き木が消えて落胆するシーンは珍しくない。巨木の根元側の土を掘り、窪みを作り、そこに慎重に焚き火を移す。土を掘り起こすのにも、石と杖しか道具がないため苦労した。窪みの中へ炎を移し入れると、冷えていた巨木の根がじんわりと温かくなるのを感じた。
「よし、これで今夜は凌げる」
安心は束の間、喉の渇きが再燃した。昨日飲んだ水は澄んで見えたが、腹を壊すリスクは消えていない。だが今は火がある。ならば、安全な水を確保するべきだ。
まずは容器が必要だ。僕は近くの若木の幹に向かい、先ほど火床作りで使った拳大の石を簡易的なナイフとして使う。石の尖った部分を樹皮に当て、叩き、切り裂くように作業を進める。不格好ではあったが、なんとか剥ぎ取った樹皮を折り曲げた。率直に言って、それは「箱」という呼称に失礼なレベルの代物だったが、今は仕方ない。
水場へ戻り、皮の箱で水をすくい入れる。水は簡単に漏れ出し、半分ほどは土に吸われる。それでも諦めずに何度も往復し、なんとかコップ数杯分の水を確保した。
火床の窪みに慎重に石を組み、水を溜めた皮の箱を恐る恐る乗せる。しばらくすると、水面に泡が立ち始めた。
煮沸消毒だ。不格好な皮の器の中の水が、ぐらぐらと煮える。熱で皮から何かが溶け出しているかもしれないが、細菌を殺せるなら背に腹は代えられない。湯気が立ち上り、あたりに焦げたような、濡れた木の匂いが漂う。完全に煮沸を終えた後、水を冷まし、再度飲む。
「……あぁ、生き返る」
温かい。そして、さっき飲んだ湧き水ほどの感動はないが、安全だという確信が、何よりの滋養になった。これで、火とシェルターと安全な水を確保だ。
小さく、だが確かな前進。生きるために必須の作業とはいえ、この手で道を切り拓いたという**達成感**が心地よかった。
丸二日が経過し、ここまでかなり順調に進んでいる。だが、それはそれだけだ。食料が確保できなければ詰む。僕は早速、槐の杖の先を火で炙り、石で削り、再び炙るという作業を繰り返しながら、槍の穂先を尖らせていった。
何が食べられて、毒なのかもわからない。果物はあるだろうか?そして肉だ。タンパク質の確保ができなければ、いずれ動けなくなる。
巨木に背を預け、自作の**槐槍**を抱き込むように抱えながら、ようやく寝ることができた。
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