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第1章 医療の星 [医星]
第4話 不穏な来院者
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【登場人物】
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校中等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
▼ヴィスタ診療所
[ヴィスタ]
医星で医者をしている若い女性。
優しく温かい女医。
ヴィスタ診療所の代表。
[バリス・スピア]
医星で医者をしている青年。
目つきがとても悪い。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
~ヴィスタ診療所~
「なら俺の依頼を聞いてくれよ、何でも屋」
着火式タバコを加えた白色長髪の男が診療所のドアを開けた。
まだ若く、目つきは悪いものの顔立ちは整っている。
「着火式の禁煙がご所望なら神立病院に行きな。うちに禁煙外来はねぇよ」
バリスは面倒ごとを予感したのか、“シッシ”と手を振った。
「生憎これでも禁煙してるつもりでなぁ。今は1日3本しか吸ってねぇ」
「あんたは?」
「政府軍中佐、ラルト・ローズだ」
政府軍中佐。その職位にヴィスタが声を上げる。
「せ、政府軍の中佐さん!?どうしてうちの診療所に!?」
「最近医薬品の強奪事件が頻発してるだろ?それの捜査だよ」
「そんなのは警察に任せときゃいいだろ。なんで政府軍が?」
ラルトはタバコを掌で燃やし尽くすと、次のタバコを取り出した。
「星内の捜査はその星の警察が」
タバコを右手でクルクルと回しながら説明を続ける。
「星外にも影響を及ぼす国際的な捜査は政府軍が行う」
ラルトは左手の人差し指をタバコの先に付けて点火させてタバコを吸うと、大きく煙を吐いた。
「医療の中心でもあるこの星から医薬品が強奪されるのは政府軍としても黙っておけない」
院内に充満する煙を、バリスはわざとらしく手で払っている。
「で、なんでこんなしがない診療所に?」
「上層部はお前らを怪しんでる」
「それ言っていいのか?」
プラズマはラルトに尋ね、バリスも続いた。
「あんたは俺たちを怪しんでないような言い方だな」
「さぁ……けどな、この星の99.9%以上はまがいなりにも一枚岩。限りなく0に近い外れ者が疑われるのも至極真っ当だろ。」
「なぁ?元軍医で【猛毒】の二つ名を持つバリス・スピアさんよ」
プラズマの頭上にはハテナマークが浮かんでいる。
「なぁ、さっきからその二つ名ってのは何なんだ?」
ラルトは呆れた表情を浮かべている。
『二つ名の制度も知らないのか』と。
「良くも悪くも、ある一定の影響力を持った人物に、政府軍大元帥などから与えられる二つ名だ」
「こいつは去年まだ軍医だったときに、有名なテロ犯、朱種五級国際手配犯を一人でとっ捕まえやがったんだ」
「その時に大元帥からもらった二つ名が【猛毒】」
「しゅしゅ?なんだそれ?」
「おいおい、朱種ってのは逮捕手配がかかってる指名手配犯だろ。手配には6等級あって、5級が最下位だ」
「じゃぁ、バリスが倒したのって一番雑魚いやつじゃん。」
「うるせぇわ。」
話が逸れ始めたところで、ラルトがパンッと手を叩き話を元に戻す。
「で、……そこの金髪頭。お前何でもやってくれんだろ?」
「おうよ!」
「なら医薬品強盗の犯人。炙り出してくれ」
「えっ?でもお前も捜査してるんだろ?」
まさかの政府軍の仕事の丸投げにプラズマはつい声を上げてしまった。
「政府軍中佐は忙しいんだよ。こんなのに時間割いてられるか」
「来週中には医薬品強盗集団が灰種三級国際手配組織に認定される」
「そうなりゃ晴れて立派なテロ組織のできあがりだ。関わった奴らも自動的に朱種五級手配犯」
「てことで面倒になる前に頼んだぜ、何でも屋」
「頼んだって言われても……強奪集団がどこにいるかなんて……」
「貧困街区だ」
突然バリスが強盗集団の拠点を口にした。
そしてその言葉に不安を抱いたのはヴィスタだった。
「バリス……?なんで彼らの居場所を知ってるの……?」
「あなたもしかして……」
「俺も行く。電気野郎だけじゃ迷うだろうからな。」
プラズマは訝しそうな目でバリスを見た。
「あんなにめんどくさがってたお前がどういう風の吹き回しだ?」
「ごちゃごちゃうるせぇ。行くのか、行かないのか」
「行く!!!」
「バリス………?」
ヴィスタは、突然強盗集団の拠点を知っていると言い出したバリスに対して不安と焦りを含んだような表情を向けた。
「だいたいの予想はついてる。ヴィスタ、お前はついて来るなよ」
「けど……マジで眠いから3時間くらい寝ていい……?」
そう言ってプラズマは許可を得る前に病室のベッドに潜り込んだ。
~貧困街区~
「ここが貧困街ねぇ………」
病院が軒を連ねる中心街区の四方を囲む山。
その山に掘られたトンネルを通り抜けると貧困街区へと行き着く。
トンネルには警備隊が常駐しており、普通の中心街区民であれば止められるのだが………
はみ出しものと見做されたバリスと共にいることで、声をかけられることもなくトンネルを通過できた。
板張りの建物。
道端で空っぽの缶を見つめながら物を恵んでもらおうとしている子供達。
そこかしこにこびりついている乾いた血痕。
中心街区とは全く異なる、暗く、生気のない街だった。
大通りの両脇には廃ビルが立ち並ぶ。
バリスを先頭に大通りの真ん中を進んでいると、通りの端からみすぼらしい姿の少年が駆け寄ってきた。
「バリスさん!また診に来てくれたんですか?」
「いや、今日は別の用だ」
「そうですか………」
「カースはどこだ?」
「カースさんは……いつものところだと思います。」
「わかった。ありがとな」
少年の肩に手を置くとバリスがまた歩き始めた。
プラズマは少し駆けてバリスの後についていく。
「バリス、さっき言ってたカースって?」
「この貧困街区をまとめてる奴だ」
バリスは振り向くことなく真っ直ぐ前を向き歩き続ける。
~貧民街区・某廃ビル内~
大勢の男達がプラズマ達を睨みつける中、その奥の寂れた玉座のような椅子に座る男。
「おう、バリスか」
異様だった。
かつては豪勢だったであろう寂れた玉座が廃ビルの中にポツンと置かれていたのだから。
「カース、お前薬品強奪の指示出してるな」
「バリス、相手を割らせるにゃ緩急や前置きが必要なんだぜ?」
「いいから答えろ」
バリスの鋭い語気に、カースという男は観念したように喋りだした。
「あぁ、お前の言うとおり俺たちは薬を強奪してるぜ?ったく医星警察でも随一だった元刑事のありがたい御高説だってのに」
「あんたにゃ世話になってるから言うけどなバリス、俺の指示じゃない。俺たちはある人からの指示に従ってるだけだ」
その言葉にバリスは眉を顰め、苦い表情を浮かべた。
「やはり神立と研星会のゴタゴタが絡んでたか………カース、強奪はやめろ。政府軍が嗅ぎつけてる」
「お前らは二大病院の勢力闘争にいいように利用されてるだけだ。」
バリスの忠告にカースの眉がピクリと動く。
カースは玉座から立ち上がると、バリスの方へと歩き出す。
「二大病院?あいつらのことなんて知らないねぇ」
「それに例え利用されてようがなんだろうが、俺たちの貧民街区に医薬品が入るのはいいことだ」
バリスは表情をより曇らせた。
「お前らは近いうちに灰種手配組織に指定される」
「………どうせ五級だろ?」
「三級だ」
バリスの三級という言葉に辺りがざわつき始める。
「カースまずいって!灰種の三級ってことは、関係性が認められるだけで朱種の五級に指定される!!パクられる!!」
「んなことは分かってる!だからってみんなを見捨てるのかよ!!」
カースは両手を握りしめ拳を震わせた。
「俺達には……貧民街区には医薬品が必要なんだ……!」
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~11年前・政府軍付属遺伝子能力養成学校中等部~
「では次、手配関係………」
「ローズ」
「ZZZzzzzz………」
「おい、ローズ……!」
「ラルト・ローズ!!起きろ!!」
「は、はいっ!!」
「私の授業を寝るほどだ。もちろんこれから尋ねることなど頭に入っていることだろう」
「逮捕状手配と危険組織手配の種類は何だ」
「逮捕は………赤いやつで、組織手配は………赤じゃないやつです……よね………?」
「逮捕状は朱種手配、危険組織は灰種手配だろうが」
「他の手配は……もういい。お前達……腕立て用意」
「恨むならローズを恨め」
~1時間後~
「829………830………831………」
「ローズの声が小さいから最初からやり直し」
「1………2………」
To be continued to next EXTRA STORY.....?
【登場人物】
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校中等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
▼ヴィスタ診療所
[ヴィスタ]
医星で医者をしている若い女性。
優しく温かい女医。
ヴィスタ診療所の代表。
[バリス・スピア]
医星で医者をしている青年。
目つきがとても悪い。
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~ヴィスタ診療所~
「なら俺の依頼を聞いてくれよ、何でも屋」
着火式タバコを加えた白色長髪の男が診療所のドアを開けた。
まだ若く、目つきは悪いものの顔立ちは整っている。
「着火式の禁煙がご所望なら神立病院に行きな。うちに禁煙外来はねぇよ」
バリスは面倒ごとを予感したのか、“シッシ”と手を振った。
「生憎これでも禁煙してるつもりでなぁ。今は1日3本しか吸ってねぇ」
「あんたは?」
「政府軍中佐、ラルト・ローズだ」
政府軍中佐。その職位にヴィスタが声を上げる。
「せ、政府軍の中佐さん!?どうしてうちの診療所に!?」
「最近医薬品の強奪事件が頻発してるだろ?それの捜査だよ」
「そんなのは警察に任せときゃいいだろ。なんで政府軍が?」
ラルトはタバコを掌で燃やし尽くすと、次のタバコを取り出した。
「星内の捜査はその星の警察が」
タバコを右手でクルクルと回しながら説明を続ける。
「星外にも影響を及ぼす国際的な捜査は政府軍が行う」
ラルトは左手の人差し指をタバコの先に付けて点火させてタバコを吸うと、大きく煙を吐いた。
「医療の中心でもあるこの星から医薬品が強奪されるのは政府軍としても黙っておけない」
院内に充満する煙を、バリスはわざとらしく手で払っている。
「で、なんでこんなしがない診療所に?」
「上層部はお前らを怪しんでる」
「それ言っていいのか?」
プラズマはラルトに尋ね、バリスも続いた。
「あんたは俺たちを怪しんでないような言い方だな」
「さぁ……けどな、この星の99.9%以上はまがいなりにも一枚岩。限りなく0に近い外れ者が疑われるのも至極真っ当だろ。」
「なぁ?元軍医で【猛毒】の二つ名を持つバリス・スピアさんよ」
プラズマの頭上にはハテナマークが浮かんでいる。
「なぁ、さっきからその二つ名ってのは何なんだ?」
ラルトは呆れた表情を浮かべている。
『二つ名の制度も知らないのか』と。
「良くも悪くも、ある一定の影響力を持った人物に、政府軍大元帥などから与えられる二つ名だ」
「こいつは去年まだ軍医だったときに、有名なテロ犯、朱種五級国際手配犯を一人でとっ捕まえやがったんだ」
「その時に大元帥からもらった二つ名が【猛毒】」
「しゅしゅ?なんだそれ?」
「おいおい、朱種ってのは逮捕手配がかかってる指名手配犯だろ。手配には6等級あって、5級が最下位だ」
「じゃぁ、バリスが倒したのって一番雑魚いやつじゃん。」
「うるせぇわ。」
話が逸れ始めたところで、ラルトがパンッと手を叩き話を元に戻す。
「で、……そこの金髪頭。お前何でもやってくれんだろ?」
「おうよ!」
「なら医薬品強盗の犯人。炙り出してくれ」
「えっ?でもお前も捜査してるんだろ?」
まさかの政府軍の仕事の丸投げにプラズマはつい声を上げてしまった。
「政府軍中佐は忙しいんだよ。こんなのに時間割いてられるか」
「来週中には医薬品強盗集団が灰種三級国際手配組織に認定される」
「そうなりゃ晴れて立派なテロ組織のできあがりだ。関わった奴らも自動的に朱種五級手配犯」
「てことで面倒になる前に頼んだぜ、何でも屋」
「頼んだって言われても……強奪集団がどこにいるかなんて……」
「貧困街区だ」
突然バリスが強盗集団の拠点を口にした。
そしてその言葉に不安を抱いたのはヴィスタだった。
「バリス……?なんで彼らの居場所を知ってるの……?」
「あなたもしかして……」
「俺も行く。電気野郎だけじゃ迷うだろうからな。」
プラズマは訝しそうな目でバリスを見た。
「あんなにめんどくさがってたお前がどういう風の吹き回しだ?」
「ごちゃごちゃうるせぇ。行くのか、行かないのか」
「行く!!!」
「バリス………?」
ヴィスタは、突然強盗集団の拠点を知っていると言い出したバリスに対して不安と焦りを含んだような表情を向けた。
「だいたいの予想はついてる。ヴィスタ、お前はついて来るなよ」
「けど……マジで眠いから3時間くらい寝ていい……?」
そう言ってプラズマは許可を得る前に病室のベッドに潜り込んだ。
~貧困街区~
「ここが貧困街ねぇ………」
病院が軒を連ねる中心街区の四方を囲む山。
その山に掘られたトンネルを通り抜けると貧困街区へと行き着く。
トンネルには警備隊が常駐しており、普通の中心街区民であれば止められるのだが………
はみ出しものと見做されたバリスと共にいることで、声をかけられることもなくトンネルを通過できた。
板張りの建物。
道端で空っぽの缶を見つめながら物を恵んでもらおうとしている子供達。
そこかしこにこびりついている乾いた血痕。
中心街区とは全く異なる、暗く、生気のない街だった。
大通りの両脇には廃ビルが立ち並ぶ。
バリスを先頭に大通りの真ん中を進んでいると、通りの端からみすぼらしい姿の少年が駆け寄ってきた。
「バリスさん!また診に来てくれたんですか?」
「いや、今日は別の用だ」
「そうですか………」
「カースはどこだ?」
「カースさんは……いつものところだと思います。」
「わかった。ありがとな」
少年の肩に手を置くとバリスがまた歩き始めた。
プラズマは少し駆けてバリスの後についていく。
「バリス、さっき言ってたカースって?」
「この貧困街区をまとめてる奴だ」
バリスは振り向くことなく真っ直ぐ前を向き歩き続ける。
~貧民街区・某廃ビル内~
大勢の男達がプラズマ達を睨みつける中、その奥の寂れた玉座のような椅子に座る男。
「おう、バリスか」
異様だった。
かつては豪勢だったであろう寂れた玉座が廃ビルの中にポツンと置かれていたのだから。
「カース、お前薬品強奪の指示出してるな」
「バリス、相手を割らせるにゃ緩急や前置きが必要なんだぜ?」
「いいから答えろ」
バリスの鋭い語気に、カースという男は観念したように喋りだした。
「あぁ、お前の言うとおり俺たちは薬を強奪してるぜ?ったく医星警察でも随一だった元刑事のありがたい御高説だってのに」
「あんたにゃ世話になってるから言うけどなバリス、俺の指示じゃない。俺たちはある人からの指示に従ってるだけだ」
その言葉にバリスは眉を顰め、苦い表情を浮かべた。
「やはり神立と研星会のゴタゴタが絡んでたか………カース、強奪はやめろ。政府軍が嗅ぎつけてる」
「お前らは二大病院の勢力闘争にいいように利用されてるだけだ。」
バリスの忠告にカースの眉がピクリと動く。
カースは玉座から立ち上がると、バリスの方へと歩き出す。
「二大病院?あいつらのことなんて知らないねぇ」
「それに例え利用されてようがなんだろうが、俺たちの貧民街区に医薬品が入るのはいいことだ」
バリスは表情をより曇らせた。
「お前らは近いうちに灰種手配組織に指定される」
「………どうせ五級だろ?」
「三級だ」
バリスの三級という言葉に辺りがざわつき始める。
「カースまずいって!灰種の三級ってことは、関係性が認められるだけで朱種の五級に指定される!!パクられる!!」
「んなことは分かってる!だからってみんなを見捨てるのかよ!!」
カースは両手を握りしめ拳を震わせた。
「俺達には……貧民街区には医薬品が必要なんだ……!」
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~11年前・政府軍付属遺伝子能力養成学校中等部~
「では次、手配関係………」
「ローズ」
「ZZZzzzzz………」
「おい、ローズ……!」
「ラルト・ローズ!!起きろ!!」
「は、はいっ!!」
「私の授業を寝るほどだ。もちろんこれから尋ねることなど頭に入っていることだろう」
「逮捕状手配と危険組織手配の種類は何だ」
「逮捕は………赤いやつで、組織手配は………赤じゃないやつです……よね………?」
「逮捕状は朱種手配、危険組織は灰種手配だろうが」
「他の手配は……もういい。お前達……腕立て用意」
「恨むならローズを恨め」
~1時間後~
「829………830………831………」
「ローズの声が小さいから最初からやり直し」
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