幼馴染の彼に想いを伝えれないまま死んだはずの私がタイムリープで幼稚園児となり人生をやり直す。

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第4章 演劇部編

第16話 彼の本音と私の願い

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 私は今、自分の部屋で彼が書いた脚本を読んでいる。

 前から内容は知っていたけど、それは『前の世界』で山口先生と立花部長が手直しをした台本を読んだだけだったので『オリジナル』を読むのは初めてだった。

 でも……

 ほとんど昔読んだ台本と内容は変わっていない。

 最後のまとめだけは少し違うけど当時、山口先生達は他の部員が妬まない様に気を遣って手直しをしたって言ったのかもしれない。

 彼が書いた脚本のタイトルは『ドジな幽霊』……
 タイトルだけ見れば小四の子が考えそうなタイトルだけど、内容は結構考えている。

 自分だけ成仏できない幽霊がお墓の前を通る人達を驚かせば成仏できるのだと勘違いして色々な人を驚かせようとするけど、性格がドジで臆病な幽霊は逆に驚かされて逃げ回る羽目に……

 前半はお笑い要素満載だけど、最後の場面は幽霊が疲れ果て、お墓の前で倒れているところを老夫婦に助けられて、それが自分の両親だと分かり親よりも先に死んでしまった事をお詫びし、そして育ててくれたことへの感謝の言葉を両親に言うことができた瞬間に成仏することができたという少し心にグッとくるようなお話……

 私は今までずっと、この最後の感動的な場面は山口先生が考えたんだと思っていたけど、実は違ったんだということが『この世界』で初めて知った。

 五十鈴君、本当に凄い……
 私は心の底から彼のことを尊敬した。

 ただ、私は明日彼に脚本の感想をどう言えば良いのか悩んでいる。
 正直に凄く良かったと言えば副部長になりたくない彼は脚本を提出しない可能性もある。

 でも私は彼に『前の世界』と同様に副部長になってもらいたい。いえ、なるべきだと思っている。

 そうなると私は彼が安心して脚本を提出する気持ちにさせる為に『まぁまぁの出来だと思う』みたいな嘘の感想を言った方が良いのかなぁ……

 彼に嘘をつくのはイヤだなぁ……でも正直な感想を言えば彼は提出を拒むだろうし……

 そう言えば彼は自分の書いた脚本には自信が有る様なことを言っていたような……
 だとすれば『まぁまぁの出来だと思う』なんて感想を言っちゃったら逆に彼は気を悪くしてしまい、私に対してマイナスの感情を持ってしまうかもしれないじゃない。

 そ、それだけは避けなくちゃいけないわ!!

 うーん、どうしようかなぁ……


 【あくる日】

「石田、どうだった? 俺の脚本……」

「凄く良かったよ。とても面白かったわ」

「そ、そっかぁ……面白かったのかぁ……」

 彼の今の表情、やはりまんざらでもない感じがするわ。

「私は今度の七夕祭りで五十鈴君の書いた脚本で演劇がしたいと思ったわ」

「うーん、でもなぁ……」

「でもさ、いくら五十鈴君の書いた脚本が面白いからといって絶対に選ばれるかどうかは分からないわよ。だってそうでしょ? 五年生の人達だって脚本を書いてくるんだからさ」

「ま、まぁそうだけどさぁ……」

「山口先生や立花部長だってそう簡単に四年生を副部長にするとは思えないんだけどなぁ……」

 私がそう言うと彼は少し考えている表情をした。

「そ、そうだよな? 提出しないってのも俺はイヤだし、それに俺の脚本が選ばれたり俺が副部長になるなんていう『未来』はないかもしれないもんな?」

 『未来』……?
 五十鈴君ってたまにおかしな表現をするよなぁ……

「そうよそうよ。だから何も気にしないで普通に提出すればいいと思うわ」

「そうだな。石田、ありがとな。お前に脚本を読んでもらって良かったよ。それに……」

「えっ? それに何?」

「いっ……いや、何でも無い……」



 【一週間後】

 ついに発表の時が来た……

 立花部長が話始める。

「今回、本当にみんな良く頑張ってくれました。とても良い脚本が多かったですよ」

 きっと私の横に座っている五十鈴君は今の立花部長の言葉で自分以外にも面白い脚本があるのだと思って安心しているんだろうなぁ……

「全ての脚本の中で特に良いと思った脚本が二つありました。それも五年生と四年生で一つずつ……」

 『五年生と四年生で一つずつ』と聞いた瞬間、私もそして彼も体がビクッとなった。

 五年生の福田さんはニヤニヤした顔で部長の方を見ている。
 高山君は自分には関係ないといった顔で窓の外を眺めている。

 そんな中、立花部長が話の続きをする。

「五年生で一番良かった脚本は佐藤さんです」

 名前を聞いた途端、キャーッと佐藤さんの雄たけびが教室を占領した。

「佐藤さん、静かにしなさい!!」

 顧問の山口先生が少し笑顔で佐藤さんに注意をした。

 立花部長が再度口を開き、笑顔で佐藤さんの名前を呼ぶ時よりも大きな声でこう言った。

「そして四年生で一番良かった脚本は五十鈴君です!!」

「 「 「お――――――――っ!!」 」 」

 教室中がどよめいた。

「へーっ、四生なのに凄いなぁ!! ほんと凄いよっ!!」

 五年の福田さんがとても嬉しそうに言っている。

「くそっ……」

 自信があったと思われる田中君は小さい声で呟いている。

「えっ!?」

 ずっと窓の外を眺めていた高山君もさすがに五十鈴君の方を向き元々大きな目が更に大きくなり驚きを隠せない様子であった。

「浩美、五十鈴君凄いよね!?」

 順子は興奮しながら私に話しかけてくる。

 教室が驚きと興奮でざわつきが収まらないまま立花部長は話し出す。

「今回、佐藤さんと五十鈴君の作品で、どちらを採用するか最後までみんな悩んだんだけど最終的に五十鈴君の脚本を採用することにしました。佐藤さんのラブストーリーも良いんだけど、五十鈴君の考えたストーリーは低学年の子達が観てもとても楽しいと思ったの。でもまぁ、少し修正は必要なんだけどね……」

 あっ、やはり『修正』って言っているわ。本当は修正なんて必要の無いくらい素敵な脚本なんだろうけど……

「なので七夕祭りで行う演劇は五十鈴君の考えた脚本、『ドジな幽霊』に決定します!!」

 自分の脚本が選ばれず少し落ち込んでいる佐藤さんをチラッと見てから立花部長は話を続ける。

「今回五十鈴君の脚本を採用しますので前から言っていた通り副部長は五十鈴君にやってもらいたいのだけれど五十鈴君いいかな?」

「えーっ、僕が副部長ですか!? ぼ、僕なんかでいいのかなぁ……」

 彼はとても複雑な表情をしながら部長に言っていたが最後に私の顔を恨めしそうな表情で見てきた。

 私はドキッとしてしまい、思わず苦笑いをした。

「異議なし、大賛成だよ!! 五十鈴君、自信を持っていいよ!!」

 そんな中、福田さんがすかさず言い出した。

「僕の脚本はSFだから小さい子には少し難しいかもしれないね……い、五十鈴の幽霊モノなら小さい子も、わ、分かりやすいしさ……」

 田中君は悔しい気持ちを押し殺してそう呟いている。

 それに続けて他の部員達も拍手をしながら五十鈴君の副部長に賛同した。
 ただ一人を除いて……

 その除かれた一人である佐藤さんの方を立花部長が向き直しある提案をしたのであった。

「ねぇ佐藤さん、私から一つお願いがあるんだけどいいかな?」

「えっ? な、なんですか?」

 佐藤さんが蚊の鳴くような元気の無い声で答えた。

「実は来年の話だけど、来年の部長は佐藤さんにお願いしたいの。やっぱり部長は六年生がするべきだと思うし、五十鈴君は来年まだ五年生だし……佐藤さんは今の五年生の中でも一番実力もあるしやる気も一番あるから、部長にもってこいだと思うの。今年は私や五十鈴君の補佐みたいな感じで来年に向けての練習だと思って頑張ってほしいなぁって……どうかな? イヤかな? 来年も佐藤さんが演劇部に残ってくれたらの話なんだけどね。運動部に行くなら無理には言えないんだけど……」

 立花部長の提案を聞いているうちに佐藤さんの暗い表情が段々明るくなっていき、そして満面の笑顔に変わり、

「はい、わかりました!! 私、部長や五十鈴君の補佐として頑張ります!!」

 佐藤さんは『次期部長』が確定したことにより、ご機嫌になり、五十鈴君に対して満面の笑顔でこう言った。

「五十鈴君よろしく!! これから一緒に頑張りましょうね!?」

 
 こうして五十鈴君からすれば不本意かもしれないけど、『前の世界』と同じく、四年生にして演劇部副部長となった。

 部員全員に大きな拍手で歓迎されている様子を立花部長、佐藤次期部長、福田さんなどは笑顔で眺め、田中君は作り笑いをしながら五十鈴君と握手をし、高山君はなんとも言えない表情で彼を見つめていた。

 そんな様子を見ながら私も順子と一緒に拍手をするのだった。

 新副部長がようやく決まり演劇部は明日から七夕祭りに向けて彼の脚本「ドジな幽霊」の稽古に入るのである。




――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。

『前の世界』同様に五十鈴君が演劇部副部長になることに!!
そして彼が書いた脚本で七夕祭りにむけて稽古が始まる。

演劇部時代が一番楽しい思い出であった浩美は『この世界』での演劇部でも楽しい思い出をつくることができるのでしょうか?

それでは、どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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