異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝

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冒険者の慟哭

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 -冒険者レックスー 
 
 あれもこれも!全部あの店が悪いんだ! 
 
 ニーアギルドマスターが頻繁に通う店があった、最初こそなんとも思わなかったが、商業ギルドでも宣伝されてて、街でも噂されてる、そんなにどいつもこいつも話に出すもんだから、時間がある時に足が赴くまま、その店に飯を食いに行った。 
 
 八百万。 
 
 中に入ると、狐人族の子供が席まで案内してくれて、水までもってきてくれた。 
 
 冷たくて美味い水に、意表を突かれた、こんなに上等な綺麗な水がただか・・・・料理で相当金でもとってるのかね?メニューなんぞなく、その日限りの料理が出て来る、そしてこの店では主食として米を出すんだ。 
 
 米、商業ギルドが新たな主食にと東国と取引して手に入れた米、物珍しさで別の店で食った事があるけど、味も希薄でなんともいえないもんだった、まぁ腹には溜まる方なんじゃないかってくらいだ。 
 
 だけどこの店の米は違う!ほくほくとして噛み応えがあり、むっちりとして咀嚼すると仄かに甘味が感じられる!これにこの店の出すおかずが死ぬほどあうんだ!おかずを口にして飯をかっこむと混然一体となってそれぞれが口の中で美味さを倍増させる。 
 
 そして付け合わせの塩漬けがまた美味い!煮物を口にしてまた飯をかっこむ!そしてスープを飲むとはぁっと声が漏れ出る謎の満足感・・・・これにやられる人間は多い、問題は夜だ!昼にあれだけ満足いく飯を食っちまうと、夜はもう物悲しい、唯一八百万で出さない、エールを他の店でかっこみ肉を口にするんだ。 
 
 寝る時になると考える、明日の昼飯は一体どんな飯が出るんだ?ミートパスタ!あれとサラダとスープも良かった、何より肉とトマトが美味くて麺って奴に絡んでたまらなかった、だけどあの店の本質は米だ!レッドクリスタルボアのカツを食ってその後の米!肉を受け止める米がなんともいえなくたまんねぇんだ!。 
 
 雫牛の薄切りの肉があまじょっぱくて、また米が進む!んでもって塩漬けと煮物よ!この完成度がやたらたけぇ!一度このループにハマっちまうともう米が恋しくてたまんなくなる!と思ったら今度は夜の部なんか始めやがった!。 
 
 今までエールなんて出さなかった店が、エールを出しやがる、しかも串焼きもだ!聞けば串焼きは内臓を丁寧に処理して出すって言うじゃねぇか!最初こそとまどったさ、でも内臓のあの美味さ!マルチョウもシマチョウも美味い脂をじゅわっと出すんだ!コリコリのセンマイ、ハチノス!プリンとしたシビレの美味さ!こりっこりのウルテや一癖も二癖もある部位ばかり、こりゃ食わないなんて手はないぜ! 
 
 そんな美味い内臓の串焼きを冷えたエールで流し込むと、もうたまんないなんてもんじゃなく、おらぁわけわかんなくなっちまうほど酔っ払うくらい飲んじまった!もうこれなしじゃ生きていけない程にだ!もつ焼きは味噌味でまた美味い!でも酒もいいけど米をくれって言いたくなるほど美味いんだ!もつ煮はもつ煮でまた違った味がして、ぷるぷるの脂の旨味をスープで流し込む!もうこれはご馳走よ!。 
 
 街にはまだ八百万にいった事のない奴の方が多い、あえて進めないんだ、常連同志で挨拶したり、目配せしたりする事もあるけど、これ以上はやっちまって俺達の食う分がなくなっちまうと目も当てられないからな、夜の部も始まって冒険者の仲間内でもごきげんな奴は多い。 
 
 そんな中まさかの休み!?おいおいおいおいおいおい冗談だろ!?俺の腹の具合はどうしてくれる!?米が!!否米じゃなくてもいい!!もうここの飯って決めてたんだ!あえて遠くに行かず近場で帰ってこれる範囲内で狩りしてたんだ!それなのに休みはないだろう!!??そんな俺達をしり目に、ニーアギルドマスターだけは中に入っていきやがった!? 
 
 香ばしい、いい匂いと楽しそうな談笑の声・・・・・・・ちくしょう!ちくしょおおおおおおおう!!! 
 
 こうなったら他の美味い店にいってやるさ!きっといい店ならこの心の空洞を埋めてくれる!! 
 
 俺が考え付く事は、他の奴も思いつく事で、周りを見れば見知った顔がチラホラ、そんでもって飯を注文、いい肉がステーキで運ばれてくる、一口食うと悪くない、パンもそれなり、スープもまぁまぁ、銀貨8枚から金貨1枚相当の飯はそれなりに悪くなかった、だが俺の心の空洞はぽっかりと穴が開いたまま、周りをみれば同じような轟沈した顔が目につく。 
 
 なんか違う・・・・確かに値段相応なんだろうな、使ってる素材も高く良い物なんだろうな・・・・でもなんか違うんだよなぁ、腹は満たされど、心のもやもやは晴れぬまま店をでて、苛立ちを獲物にぶつける様に狩りをした。 
 
 気づけば夜、いつもならもっと早く帰って、八百万で一杯やってる所だ、それなのに・・・・・夜も休み・・・・・・・ギルドに帰ると、行き場を失った俺の様な冒険者が何人かいてギルドの酒場で酒を飲んでた、聞けばニーアマスターにクリスタ、ギムレッドの旦那にフィガロとルーカスが楽しそうに店に入っていったらしい、なんでも何かを祝うんだとか。 
 
 きっと今頃俺らの知らない美味いもんくっているんだろうな、あの人らは権力もあって冒険者としてもトップと言うか英雄レベルだ、国が個人を招待するレベルの超大物だ、俺はまだそんな大物じゃないが、畜生八百万のマスターと友達だったら、俺も招待されたかもしれないのに!?俺もレオンみたいに獲物を狩って調理をお願いしてみようかな?親しくなれるかもしれない!!。 
 
 そんな事考えながら今も思う、ああっ明日の昼飯何が出るんだろうなぁ・・・・・。
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