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ルーファウス・ヴァレンタイン 初めての八百万
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無敵のルーファウス
国境にて十二天を捕獲、今回の事をきっかけに八百万の様子をみつつ、稀人たる斗真に挨拶をしに行こうと考えていた。
様々な噂を聞く八百万、曰く生の食材を料理として出す店、曰く内臓を料理として出す店、曰くイールや食用に適さない食材を見事に美食に変える店など不思議な噂が王都を駆け巡り、上位貴族はもちろん高位ランクの冒険者果は幻と言われた、伝説の名がついている方々ですら、八百万に食事をしに集まると言う。
伝説の名を持つ者達、幻のガンダルフ、空間のエスメラルダ、魔道具にメフィストフェレスを超える薬の製作者、フラメル・トリスメギストスなど会いたくても会えない存在達が当たり前の様に八百万で食事していると言う。
私には食事がそこまで人間を変える事が出来るのか?理解ができなかった。
確かに前に現れた稀人も、やたらと飯にうるさかったが、残念ながら私はその当時人間同士の戦争や邪神討伐戦などで稀人に会う事ができなかった。
唯一稀人と深く関わったのが、現王の従弟アーサー様の祖父のみ。
そもそも今の食事でも味に問題があるとは思えないし、これといって文句もない、我が世界の食事もそう悪いものではないと思うのだが、こうも多くの人間が八百万を好んで絶賛すると流石の私も気になると言うものだ。
だが食事とはそんな簡単に進化?と言うか今現在の食文化以上の先がそう簡単にあるとは思えないのだ。
想像すのが難しいといってもいい。
肉や魚なんかはシンプルに塩コショウで満足しているし、王宮には王宮の料理長の味付けが存在している。
王宮の料理人は、王族に料理を作る事に自負があるだろうし、様々な修行をして味の勉強もしてきた料理人だ。
いかに稀人とはいえ、料理人でもない人間にそう簡単に味で負けるだろうか?とてもじゃないが考えられない。
料理と言うものが、そうそう大げさに他世界とかけ離れていると言う事が理解できない、認識できない、想像できない、そしてそこまで人を魅了する料理の存在を考える事、想像することが出来ない。
どうせ何かの物珍しさにひかれているのではないか?そういえば宿も特殊な力で作ったと言っていた。
そうだ、料理に驚いているのではなく、その特殊な力とやらにみんな興味があって、それであつまっているのではないか?きっとそうに決まっている。
まずは隠れて列に並ぶ、確かに冒険者が多いが、それ以外にも情報屋のトムソンやタント老、料理人アステリオスなど曲者ぞろいじゃないか、ゆっくりと確実に進んでいく列。
近くにいくと、いい香りが辺りに漂っている。
なんだ!?この匂いは!?まさか本当に料理でこれだけの人間を魅了してるとでもいうのか?高位貴族や冒険者、その他の有名人も本当に彼の料理を食べるために集まっているのか?それほどのものなのか?たかだか料理だぞ!そんなものが本当にここまでの人を動かせるというのか?
ルーファウスには自分の世界の料理が、稀人の世界の料理より格段に流儀も何もかもが遅れている事それを認める事が出来なかった。
どこかに王族や色々な高級料理を食べて来たという自信があり、その度に料理と言う物に疑問を感じ続けていた。
戦場で腹を満たす為だけに食べる義務的な物と、王族や貴族たち人をもてないし喜ばせるために作られる豪華な食事の違い、この料理と言うものにそれだけの大きな違いはあるだろうか?味わって、飲み込んで、そしていつも思う事は、まぁこんなもんだろうといった感動も何もない虚無的な感想。
戦場での飯だって、腹が減ってれば美味いもんだ、ダンジョンでの飯だって同じだ、腹が減ってれば塩を振った肉でも美味い、調理なんかせんでも素材の肉が極上なら塩だけで美味いのだ、それを味が食感が風味がこくがなどと語るほどのものなんかあるのかと。
そしてこの世界ではルーファウスの様に、食事とは何処か義務的で美味い不味いなどと論ずる事はないと思っている人間が多い、素材が美味いが故に調理技術が進化せず停滞し、食文化と言うものが人類と共に育たなくなった結果、娯楽的な側面の食事と言うものが完全に削がれ、生きるために、腹が減るが故に仕方なく食べ物を食べる、そんな人間が少なくないのだ。
感動も喜びもなく、楽しくもないから、落胆すること、執着することもなく機械に電池をはめる如く、腹さえ満たされればそれでよい、むしろ食事による感動や喜びなどが必要なものか?とすら考えていた人間には、八百万に食事をする為だけに人が群がる行為が異常なものに感じられた。
まさに自分の理解外の出来事。
そしてルーファウスはついに八百万の真相、本当に料理が美味くてこれだけの人間を集めているのか知る事になる。
その日の料理はイール、貧民も食わないと言われていた水害のイールだった。
そしてこの店に充満する、素晴らしい香気がその貧民も食わないと言われるイールを焼いて出た香りだと知って、自分の頭がおかしくなったのではないか?と不安になったりと、戸惑っていると、目の前に運ばれてくるイール、うな丼。
開いたイールをタレで焼いたのか?中々に食欲をそそる見た目に、匂い、匂いは完全に嗅いだことのない香ばしさやイールの美味さを物語っているかのように、この香りには抗えず、フォークを駆使して一口恐る恐る食べてみると。
パリパリサクサクとした軽快な皮目を突き破り、甘味のあるタレと交わるイールの脂!そして歯は身に到達すると、これが柔らかくほくほくとしながらも身はしっかりしっとりしてタレと非常に合う。
そして下に敷き詰められた米!昔蓬莱の国から仕入れた新たな主食と期待された米!調理の方法もあまりわからず、いつしか家畜の餌になった米!それがほくほくとして噛み応えがあり、甘味もある。
確かにこれなら主食としてもうし分ない!イールを食い!米を掻っ込む!なるほど!なるほど!これは私も知らない!知らない所ではない!私がいままで食べて来た食歴、この味をしってしまうと、王宮の料理や貴族の料理、レストランの料理がどれだけ幼稚で稚拙なものだったかがわかる!この料理も、そう複雑な工程は踏んではいないだろう。
それなのに圧倒的に料理の出来が違う!タレ!このタレが複雑な味に焼いたイール自体と交じり合う事でタレ単体やイール単体では出せない味に到達させているのだ。
そして米!イール丼、否うな丼だったか、料理としては簡単な部類にはいるのではないのか?なのに何故こんなに美味い?この世界の料理人が知恵や技術を凝らしたものと何故こんなに違い、そして遠く感じるのか?ここまで、ここまでの差が稀人の世界とあると言うのか!?
料理に対して初めて美味いとはこういう事だと知り、そして知らいな味に畏怖の念を覚える。
長い時を生きてきて、初めて知る味、長い時を生きてきて、知らなかった時の愚かしさ虚空さ、そしてこの料理はいくつもある料理の一旦であるという、喜んでいいのか?楽しみにしていいのか?と思う心。
美味い!美味い!美味い!と掻っ込む!飲み込む感覚が心地よく、胃の中にずっしりと落ちていくと次第に満たされている満腹感。
料理に初めて感じた満足感、喜び、そして次はどんなものが食えるのかと言う期待とわくわく感、待ち遠しいと言う焦燥感に楽しみが増えたと実感する。
どうりで多くの人間を引き付けるはずだと、納得し、そして自分達がどれだけ食と言うものを蔑ろにしていたかを理解した。
満たされればそれでよかった日々、不味かろうが生きられればそれで満足だった毎日、そんな日常との決別。
ウェールズの飯屋も八百万に習い、料理人の意識や色々なものが改革されている事に気が付き。
俺達の食の未来はこれからなのだと言う事と、その未来は明るくそして大きく広がっている事に期待と楽しみで胸が弾んだ。
俺達の未来は明るい、そしてその最初の一歩を分け与えてくれた八百万の店主、稀人八意斗真。
食事が終わると、俺は彼に挨拶をした。
生まれ変わった、初めての自分で。
国境にて十二天を捕獲、今回の事をきっかけに八百万の様子をみつつ、稀人たる斗真に挨拶をしに行こうと考えていた。
様々な噂を聞く八百万、曰く生の食材を料理として出す店、曰く内臓を料理として出す店、曰くイールや食用に適さない食材を見事に美食に変える店など不思議な噂が王都を駆け巡り、上位貴族はもちろん高位ランクの冒険者果は幻と言われた、伝説の名がついている方々ですら、八百万に食事をしに集まると言う。
伝説の名を持つ者達、幻のガンダルフ、空間のエスメラルダ、魔道具にメフィストフェレスを超える薬の製作者、フラメル・トリスメギストスなど会いたくても会えない存在達が当たり前の様に八百万で食事していると言う。
私には食事がそこまで人間を変える事が出来るのか?理解ができなかった。
確かに前に現れた稀人も、やたらと飯にうるさかったが、残念ながら私はその当時人間同士の戦争や邪神討伐戦などで稀人に会う事ができなかった。
唯一稀人と深く関わったのが、現王の従弟アーサー様の祖父のみ。
そもそも今の食事でも味に問題があるとは思えないし、これといって文句もない、我が世界の食事もそう悪いものではないと思うのだが、こうも多くの人間が八百万を好んで絶賛すると流石の私も気になると言うものだ。
だが食事とはそんな簡単に進化?と言うか今現在の食文化以上の先がそう簡単にあるとは思えないのだ。
想像すのが難しいといってもいい。
肉や魚なんかはシンプルに塩コショウで満足しているし、王宮には王宮の料理長の味付けが存在している。
王宮の料理人は、王族に料理を作る事に自負があるだろうし、様々な修行をして味の勉強もしてきた料理人だ。
いかに稀人とはいえ、料理人でもない人間にそう簡単に味で負けるだろうか?とてもじゃないが考えられない。
料理と言うものが、そうそう大げさに他世界とかけ離れていると言う事が理解できない、認識できない、想像できない、そしてそこまで人を魅了する料理の存在を考える事、想像することが出来ない。
どうせ何かの物珍しさにひかれているのではないか?そういえば宿も特殊な力で作ったと言っていた。
そうだ、料理に驚いているのではなく、その特殊な力とやらにみんな興味があって、それであつまっているのではないか?きっとそうに決まっている。
まずは隠れて列に並ぶ、確かに冒険者が多いが、それ以外にも情報屋のトムソンやタント老、料理人アステリオスなど曲者ぞろいじゃないか、ゆっくりと確実に進んでいく列。
近くにいくと、いい香りが辺りに漂っている。
なんだ!?この匂いは!?まさか本当に料理でこれだけの人間を魅了してるとでもいうのか?高位貴族や冒険者、その他の有名人も本当に彼の料理を食べるために集まっているのか?それほどのものなのか?たかだか料理だぞ!そんなものが本当にここまでの人を動かせるというのか?
ルーファウスには自分の世界の料理が、稀人の世界の料理より格段に流儀も何もかもが遅れている事それを認める事が出来なかった。
どこかに王族や色々な高級料理を食べて来たという自信があり、その度に料理と言う物に疑問を感じ続けていた。
戦場で腹を満たす為だけに食べる義務的な物と、王族や貴族たち人をもてないし喜ばせるために作られる豪華な食事の違い、この料理と言うものにそれだけの大きな違いはあるだろうか?味わって、飲み込んで、そしていつも思う事は、まぁこんなもんだろうといった感動も何もない虚無的な感想。
戦場での飯だって、腹が減ってれば美味いもんだ、ダンジョンでの飯だって同じだ、腹が減ってれば塩を振った肉でも美味い、調理なんかせんでも素材の肉が極上なら塩だけで美味いのだ、それを味が食感が風味がこくがなどと語るほどのものなんかあるのかと。
そしてこの世界ではルーファウスの様に、食事とは何処か義務的で美味い不味いなどと論ずる事はないと思っている人間が多い、素材が美味いが故に調理技術が進化せず停滞し、食文化と言うものが人類と共に育たなくなった結果、娯楽的な側面の食事と言うものが完全に削がれ、生きるために、腹が減るが故に仕方なく食べ物を食べる、そんな人間が少なくないのだ。
感動も喜びもなく、楽しくもないから、落胆すること、執着することもなく機械に電池をはめる如く、腹さえ満たされればそれでよい、むしろ食事による感動や喜びなどが必要なものか?とすら考えていた人間には、八百万に食事をする為だけに人が群がる行為が異常なものに感じられた。
まさに自分の理解外の出来事。
そしてルーファウスはついに八百万の真相、本当に料理が美味くてこれだけの人間を集めているのか知る事になる。
その日の料理はイール、貧民も食わないと言われていた水害のイールだった。
そしてこの店に充満する、素晴らしい香気がその貧民も食わないと言われるイールを焼いて出た香りだと知って、自分の頭がおかしくなったのではないか?と不安になったりと、戸惑っていると、目の前に運ばれてくるイール、うな丼。
開いたイールをタレで焼いたのか?中々に食欲をそそる見た目に、匂い、匂いは完全に嗅いだことのない香ばしさやイールの美味さを物語っているかのように、この香りには抗えず、フォークを駆使して一口恐る恐る食べてみると。
パリパリサクサクとした軽快な皮目を突き破り、甘味のあるタレと交わるイールの脂!そして歯は身に到達すると、これが柔らかくほくほくとしながらも身はしっかりしっとりしてタレと非常に合う。
そして下に敷き詰められた米!昔蓬莱の国から仕入れた新たな主食と期待された米!調理の方法もあまりわからず、いつしか家畜の餌になった米!それがほくほくとして噛み応えがあり、甘味もある。
確かにこれなら主食としてもうし分ない!イールを食い!米を掻っ込む!なるほど!なるほど!これは私も知らない!知らない所ではない!私がいままで食べて来た食歴、この味をしってしまうと、王宮の料理や貴族の料理、レストランの料理がどれだけ幼稚で稚拙なものだったかがわかる!この料理も、そう複雑な工程は踏んではいないだろう。
それなのに圧倒的に料理の出来が違う!タレ!このタレが複雑な味に焼いたイール自体と交じり合う事でタレ単体やイール単体では出せない味に到達させているのだ。
そして米!イール丼、否うな丼だったか、料理としては簡単な部類にはいるのではないのか?なのに何故こんなに美味い?この世界の料理人が知恵や技術を凝らしたものと何故こんなに違い、そして遠く感じるのか?ここまで、ここまでの差が稀人の世界とあると言うのか!?
料理に対して初めて美味いとはこういう事だと知り、そして知らいな味に畏怖の念を覚える。
長い時を生きてきて、初めて知る味、長い時を生きてきて、知らなかった時の愚かしさ虚空さ、そしてこの料理はいくつもある料理の一旦であるという、喜んでいいのか?楽しみにしていいのか?と思う心。
美味い!美味い!美味い!と掻っ込む!飲み込む感覚が心地よく、胃の中にずっしりと落ちていくと次第に満たされている満腹感。
料理に初めて感じた満足感、喜び、そして次はどんなものが食えるのかと言う期待とわくわく感、待ち遠しいと言う焦燥感に楽しみが増えたと実感する。
どうりで多くの人間を引き付けるはずだと、納得し、そして自分達がどれだけ食と言うものを蔑ろにしていたかを理解した。
満たされればそれでよかった日々、不味かろうが生きられればそれで満足だった毎日、そんな日常との決別。
ウェールズの飯屋も八百万に習い、料理人の意識や色々なものが改革されている事に気が付き。
俺達の食の未来はこれからなのだと言う事と、その未来は明るくそして大きく広がっている事に期待と楽しみで胸が弾んだ。
俺達の未来は明るい、そしてその最初の一歩を分け与えてくれた八百万の店主、稀人八意斗真。
食事が終わると、俺は彼に挨拶をした。
生まれ変わった、初めての自分で。
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