誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン

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4巻

4-3

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「いったい何が…………これは!」
「すっごーい!」

 俺が周りを見回すと、そこには信じられない世界が広がっていた。
 プールやウォータースライダーなどのウォーターパーク、カフェエリア、数々の店が並んでおりまるでリゾートホテルのような施設へと様変わりしている。
 そんな光景を前に、リンネは目を輝かせ、シーラや海賊たちはパニック状態になった。
 すっかり超技術に慣れてしまったリンネと違い、この世界の住人であるシーラたちにとっては衝撃的な光景に違いない。
 彼女たちからすれば、天変地異にも似た所業に見えるはずだ。
 恐怖で混乱したとしてもとがめることはできない。

「ひぇええええ!」
『すっごいかわったぁ』
『いい匂いがするぅ?』

 周囲の変化にフィーが飛び跳ねてはしゃぐ。
 イナホもヒクヒクと鼻を動かしたかと思うと、体を起き上がらせて周りを見た。
 シーラたちは驚愕のあまり放心してしまっている。

『どうでい。アルゴノイアの豪華客船バージョンだ。今までは船内までガラリと変形する機能は整備不足で封印してあったんだが、ようやく整備が終わったからな。今回お披露目したのよ! すげぇだろ!』
「あぁ、これはたまげたよ。まさかここまで大きな船になるとは思わなかった」

 さしもの俺もこれだけの変化を見せられれば、驚かざるを得ない。

『あんがとよ。このくれぇアルゴノイアにとっちゃ朝飯前だがな!』

 俺たちの様子を見てダンボンが自慢げに語る。
 大洞窟を探索した際、馬車のチャリオンとシルバがドリル装甲車になる時も車のように変化したが、それとは比べ物にならないくらい大規模な変形だった。
 流石、超技術によって造られた宇宙船。変形のスケールが違う。

「今ある施設は全部使えるのか?」
『おうよ! 好きに楽しんでくれ。そんじゃあ俺は戻るわ。またな!』
「わざわざありがとな!」
『いいってことよ!』

 俺たちに機能を見せて満足したダンボンは颯爽さっそうと立ち去っていった。

「さて、色々気になるところだが、まずは腹ごしらえだろ」
「ご案内します。こちらへどうぞ」
「任せた」

 それまで気配を感じさせなかったバレッタが突然目の前に現れ、俺たちを誘導する。
 忍者顔負けの神出鬼没さだ。
 超古代文明の技術を結集させた便利な装備――インフィレーネで体の汚れやべたつきを浄化し、バレッタの後をついていく。

「おーい、ついてこい」
「は、はいぃいい」

 固まったままついてこないシーラたちに声をかけると、彼女たちはようやく時が動き出したかのように慌てて俺たちの後を追ってきた。

「ここって本当に船の上か?」
「街みたいだな」
「俺たち夢でも見てんのか?」

 海賊たちは怯えながらひそひそとささやき合っている。
 こんな変形機能を持つ乗り物なんて、この世界にはほぼないだろうから、この反応も当然だろうな。
 俺たちは、ウォーターエリアを抜けて屋内に入った。
 そこは様々な商品を扱う店が立ち並ぶショップエリア。
 リンネはイナホを抱き、お上りさんのように視線をキョロキョロさせながら歩く。
 時折ガラス張りのショーウィンドウに駆け寄って、ガラスの中のアイテムを見つめた。
 フィーもテンションが上がっているのか、空を飛び回っていた。
 シーラと海賊たちはいまだ恐る恐る俺たちの後をついてくる。

「うわぁ……ここがアルゴノイアだなんて信じられないわね」

 リンネの言う通りだ。
 アルゴノイアとは全く別の乗り物だと言っても過言ではない。
 おそらく、都市ごとアルゴノイアの一室に押し込んだように、どこかに本来のアルゴノイアの内部は保管されているのだろう。
 シーラは、辺りの景色を見ながら戦々恐々としている。

「あわわわっ、私、死んじゃうのかなぁ……」
『いらっしゃいませ!』

 変わったのは、船内の見た目だけじゃない。
 店には店員として天使アンドロイドが常駐していて、商品をちゃんと買えるようになっていた。
 また、人型ゴーレムが警備員代わりに船内を巡回している。
 バレッタとの同期で、彼らに搭載とうさいされている人工知能は完全に修復されたようだ。
 最初に会った時は、俺たちを完全に敵だと認識していたからな。
 今の彼らの仕草や喋り方は、人間と全く見分けがつかない。むしろバレッタよりも人間らしさを感じる。

「どんな料理でも揃っておりますが、いかがしますか?」
「そうだなぁ。皆は何が食べたい?」

 どうせどれも美味しさは問題ないはずなので、皆の要望を確認する。

「今日はたくさん動いたからお肉かしら?」
『僕もお肉!』

 うちの食いしん坊の二人が肉をご所望だ。

「かしこまりました」

 俺たちはバレッタに連れられて高級感溢れるお店に入る。
 屋内は高級ホテルさながらの豪華さでありながら、シックな内装だ。
 地球ではただの庶民で、こういう場所と無縁だった俺はなんだか落ち着かない気持ちになった。
 海賊たち以外は全く狼狽える様子はない。
 肝が据わっているというかなんというか。
 そのお店は厨房が中心にあり、その周りに鉄板が設置されている。
 ここは、お昼にバレッタが目の前で焼きそばを焼いてくれたのと同じく、目の前で一流のシェフが料理する鉄板焼きのお店のようだ。シェフは天使アンドロイドだが。
 海賊たちは未知の恐怖に晒されながらも、案内されるままに席に着く。

「すぐに料理をお持ちいたします」

 提供された前菜に舌鼓を打っていると、目の前でステーキが焼かれ始める。
 ――ジュワァッ
 分厚くて差しの入った肉は、いかにも高そうだ。
 目の前で調理され、香ばしい匂いが漂ってくる。

「じゅる……お、美味しそう」
「くっそうまそうだな」
「やべぇ、よだれが止まらねぇぜ」

 シーラも海賊たちも恐怖を忘れ、目の前の料理に釘付けになっていた。
 やはり、目の前で調理する光景には人を引きつける力がある。
 彼らは出来上がったステーキを食べた瞬間、涙を流しながらその美味しさを噛みしめていた。

「この世にこんなに美味しいお肉があったなんて……」
「うめぇ、うますぎる!」
「あぁ、これが人生最後の食事に違いない」
「そうじゃなきゃ、こんなに美味いもんは食えねぇもんなぁ」

 悪いことをしていた罪悪感からか、この後、処刑されるとでも思っているようだ。

「これはいくらでもいけるわね」
『おかわり~』
『フィーも!』

 リンネたちからも好評だ。
 腕を振るう天使アンドロイドシェフからおかわりをもらっていた。
 俺も皿に取り分けられた肉を頬張る。

「うわっ……溶けた」

 高い肉なんて食べる機会がなかった。
 初めて食べたが、ほとんど噛まなくても口の中で肉が溶けて消えてしまった。
 癖もなく、すっきりとした肉の旨味が口いっぱいに広がる。
 俺は口から多幸感で満たされていった。

「次はこちらになります」

 鉄板焼きの後はお寿司が出てきた。
 生食に慣れてない海賊たちは二の足を踏んでいる。
 しかし、俺たちが美味そうに食べているのを見て、恐る恐る口に運んだ。
 一度食べたら、すぐにその味の虜になったようで、彼らの手は止まらなくなっていた。
 新鮮な食材で作られているらしく、生臭くなく、魚の甘みと酢の酸味が絶妙な塩梅あんばいで混ざり合っている。熟練の寿司職人に勝るとも劣らない職人技を感じた。

「刺身とはまた違うわね!」
『うみゃっ、うみゃっ』
『おいひぃー!』
「生の魚ってこんなに美味しいの!?」

 リンネたちは当然だが、海賊たちも感激していた。
 俺としては、海賊たちでさえ生の魚介類を食べたことがないのは意外な話だったが、安全かどうかを見分ける能力がなければ、それも当然なのかもしれない。
 ご飯を食べ終えた時、店内の窓から見える景色はすっかり暗闇に染まっていた。

「さて、船内を回ってみるか」
「お腹もいっぱいになったし、それもいいわね」

 席を立つと、俺はシーラに尋ねる。

「お前たちはどうする?」
「ひぃっ、私たちはもう休ませてもらってもいいでしょうか?」

 彼らにとって今日はまさに驚愕の連続。
 精神的な疲労も大きいに違いない。
 仲間たちだけで話したいこともあるだろう。
 豪華客船と言っても、乗っているのは俺たちだけだ。
 折角だから、いい部屋に泊まらせて、しっかりと体の疲れを休めてもらおう。
 何も言わなくても、バレッタなら俺の意図を汲んでくれるはずだ。

「そうか。バレッタ、頼む」
「かしこまりました」

 バレッタが手を鳴らすと、メイド服の天使アンドロイドがやってきた。

「皆様、こちらへ」
「あわわわっ、自分たちの船で十分なのですが……」
「気にするな。魔の海域まで案内してもらうんだ。お前たちの船は俺たちが守っておいてやるから、今日はゆっくりしていけ」
「は、はぁい」

 シーラは涙を流しながら天使についていった。
 その涙が、喜びなのか、悲しみなのか、俺には分からなかった。
 彼女たちを見送ってから、俺はバレッタに尋ねた。

「この豪華客船にはどんな施設があるんだ?」
「そうですね。プール、ウォータースライダーを除けば、シアター、カジノ、コンサートホールなどがございます」
「おおっ。結構あるな。リンネ、気になるのはあるか?」
「そうね。コンサートが気になるかしら? カジノはこの世界にもあるし、シアターってアルゴノイアのシアター室と同じでしょ?」
「そうだな。それじゃあ、俺たちはコンサートホールに行こうか。今は何やってるんだ?」
「そうですね。リクエストがあれば、基本的にお応えできますよ。魔法少女リリアーナシリーズの楽曲ですとか」
「ホントに!?」

 リリアーナという言葉を聞いた瞬間、リンネが目を輝かせる。

「はい」

 魔法少女リリアーナとは、彼女が何回も見るほど好きな作品の一つだ。
 バレッタもそれを見越しての発言だったに違いない。
 流石バレッタ。リンネのこともよく分かっている。
 テンションが上がったリンネがグイグイと俺の腕を引いた。
 餌をぶら下げられてはしゃぐリンネの姿が可愛い。

「さぁさぁ、ケンゴ、今すぐ行きましょ!」
「はいはい」

 少々呆れつつも、俺たちはコンサートホールに向かった。

「これは凄いな」
「この部屋を見るだけでもなんだかワクワクするわね」
『ふしぎ~』

 ホールのつくりは、地球で見たものとは全く別物だった。
 中心に空中に浮いた舞台があり、その周りに球体の客席が浮いている。
 席は観覧車のように乗り込むタイプだ。舞台から三百六十度、どこの位置でも演奏を聴くことができるらしい。
 フィーは室内を飛び回り、普段とは雰囲気の違う部屋に目を輝かせた。

「こちらにお乗りください」

 バレッタに案内されて客席に乗る。

「特等席にご案内します」

 全員が乗り込んだのを確認したところで、自動的に一番よく聞こえる場所へと客席を移動させられた。オーケストラの少し上から見下ろす位置に止まる。
 その直後、舞台の上に楽団が姿を現した。
 奏者に扮した天使アンドロイドで構成されたオーケストラだ。
 服装や担当する楽器は全員違っている。

「うぉおおおっ。オーケストラって見たことないんだよな」
「私も劇場とは縁がなかったから初めて見るわ。ホント楽しみ」

 サラリーマン時代。アニソン系のコンサートに行ったことはあれど、クラシックコンサートは経験がなかった。
 だから、初めて見るオーケストラに俺も気分が高揚している。
 初めてっていうのは、いつになってもワクワクドキドキするよな。

『僕は眠くなってきちゃった……zzz』

 イナホは音楽には興味はないのか、ご飯でお腹いっぱいになったせいか、ふかふかの席の上で丸まって寝息を立て始める。

『はずむぅ!』

 フィーはふかふかの席の上を飛び跳ねて席の座り心地を確かめていた。

『ご来場の皆様、開演の時間となりました。ご着席願います』

 準備が整うと、アナウンスが入り、フィーが大人しく席に座る。

『それでは、これより魔法少女リリアーナシリーズの楽曲の演奏を始めます』

 アナウンスの後、ホール内の灯りが落ち、楽団にスポットライトが当たる。
 ――ジャジャンッ
 そして、指揮者の動きに合わせて演奏が始まった。
 席を囲っている透明な壁を越えて体にガツンとぶつかってくる音の波。
 やはり、このダイレクトな衝撃こそ生演奏の醍醐味だよな。
 アンドロイドだけあって演奏には全く乱れがない。
 だが、それでいて人間らしい遊びや個性も残しており、深みのあるハーモニーが奏でられていた。

「とんでもない技量だな」
「……」

 呟いてもリンネの反応が返ってこないと思って彼女に視線を向ける。
 リンネは演奏に引き込まれ、完全に聞き入っていた。
 フィーも楽しそうに体を揺らしてリズムに乗っている。
 俺も野暮なことを考えるのをやめ、目をつむり、しばらくの間、音楽に身を任せた。

「わぁあああああああああっ!」

 全ての演目が終わった後、リンネは立ち上がって拍手を始めた。
 頬には涙のあとが残っている。
 どうやら自分が愛してやまない作品の音楽を聴いて感動してしまったらしい。
 俺も同じように立ち上がり、バレッタやフィーも続いて拍手を送った。
 それほどに心打たれる演奏だった。

「あぁ~、凄く良かったわ。シアターで画面越しに聞くのとはまた違うわね」
「そうだな。映画で流れる音楽もいいけど、生の演奏の良さっていうのはあるよな」
「ホントホント。感動しちゃったもの」

 リンネは先ほどの演奏を思い出し、余韻にひたる。

「んーっ! さて、この後、どうする?」

 俺は体をグッと伸ばしてリンネに尋ねた。

「イナホは寝てるし、フィーも眠そうだから。そろそろ寝ましょうか」

 フィーは俺が、イナホはリンネが抱きかかえている。
 イナホは眠ったまま起きず、フィーは俺の腕の中で船を漕いでいた。
 俺も今日一日充実した時間を過ごしてほどよい疲労を感じている。
 確かに、休んだ方がよさそうだな。

「そうだな。そうするか」
「こちらへ」

 俺たちはバレッタに案内されて寝室へ向かった。

「おぉ~、いつものアルゴノイアよりも豪華な感じだな」
「そうね。オシャレさと高級さを感じるわ」

 案内されたのは研究室のように味気のない部屋ではなく、それこそ高級ホテルのワンフロアに一室しかないような最高級スイートルームのような場所だ。
 まるでセレブにでもなった気分だな。
 ただ、ここは船の上。
 外に見えるのが、真っ暗な海だけなのは残念だな。
 イナホとフィーをベッドの上に寝かせ、俺たちも横になる。

「それじゃあ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

 挨拶を交わし、俺たちは眠りについた。


 次の日、外から入ってきた太陽の光で自然と目が覚める。

「ふぁ~、朝か」
「ん~、おはよう」
「あぁ、おはよう」

 俺が目を覚ましたのとほぼ同時に、リンネも起きてきた。

『おあよ……』

 フィーも半分寝ているような状態ではあるが、体を起こして目をこする。
 イナホはいつも通り、全く目を覚ます気配がない。

「おはようございます、ケンゴ様」
「あ、ああ、おはよう」

 そして、見計らったようにバレッタが扉を開いてやってきた。
 いつもバレッタがそばにいるようになったので、これも今や当たり前の光景だ。
 いまだになかなか慣れないが。

「お食事にされますか?」
「そうだな」
『ご飯!』

 しっかり寝たので、空腹だ。
 ご飯と聞いた途端、パッチリと目を覚ますイナホ。相変わらず食いしん坊だな。
 数分もしないうちに部屋に料理が運び込まれる。
 しかも、バイキング形式だった。明らかに数人で食べきれる量ではない。
 結局、俺たちは朝からがっつりと食事を摂ることになった。

「ん~、お風呂入りたいわね」
「それもそうだな」

 昨日はインフィレーネの機能で体を浄化しただけで済ませた。
 日本人としては、やはり毎日しっかりとお湯で洗い流したいところだ。

「この部屋には温泉がご用意されております」
「船の中なのに?」
「はい。この程度、たやすいことです」
「どういう仕組みだ、それ」

 地面に接してないのに温泉なんて引いてこれるのか?
 アルゴノイアの風呂はどういう構造になってんだろうな。
 通常の宇宙船形態の時にどこかから温泉を引いてきていた可能性は否めない。
 硫黄いおう臭さも感じなかったけど、それも超高度な技術のおかげなのかもしれないな。

「おおっ、これは凄いな」
『いい眺め~』
『キラキラ~』

 一足先に風呂に向かうと、奥が全面ガラス張りの窓になっていて、朝日に照らされた海が一望できた。
 まさに絶景という他ない。
 夜は船内から外の景色が何も見えなかったが、これは格別だ。

「いい景色ね」

 見惚れていると、後ろからリンネの声が聞こえた。
 タオルで隠れているものの彼女の素晴らしい肢体が目に入る。

「こっちも絶景だな」
「何言ってんのよ!」
「ぐはっ!」

 あごに手を当ててジッと見つめていたら、殴られる羽目になった。
 吹き飛んだ俺は湯船に落ちて、湯の上に浮かぶ。

『いたそー! いたいのいたいのとんでけー!』

 フィーが慰めてくれたおかげで癒されたが、今のはかなり威力があったな。
 体を洗い終え、皆で湯船にかる。
 しばし素晴らしい朝日を堪能してから、俺たちは風呂を出て、船内ホテルのロビーに向かった。

「あっ、お、おはようございます!」
「「「おはようございます、アニキ!」」」

 ロビーにはシーラと海賊たちが待っていて、仰々ぎょうぎょうしい挨拶で出迎えられた。
 アニキという呼ばれ方で、俺はふとアルクィメスのチンピラ冒険者たちを思い出す。
 あいつら、元気にしているだろうか。
 たまには顔を出しに行くのもいいかもしれないな。

「いや、そんなにかしこまらなくていいし、アニキとか言わなくていいから」
「ひっ、申し訳ございません」

 優しく言ったつもりが、シーラに怯えられてしまった。
 俺ってそんなに怖いか?

「はぁ、まぁいい。昨日はゆっくり休めたか?」
「は、はい。まさかこれほど素晴らしい場所で休むことができると思いませんでした。信じられないくらい寝心地がよかったですし、朝も海では食べられないような新鮮な食材をふんだんに使った料理をいただいて、何も言うことはありません」

 彼女からは気力が充実しているのを感じる。
 言葉通り、しっかり休むことができたようだ。

「そうか、それならよかった。それじゃあ、さっそく案内してもらいたんだが、大丈夫か?」
「わ、分かりました!」

 俺が確認すると、シーラが頬を引きつらせながら首をガクガクと縦に振った。
 俺たちは元々甲板だったウォーターエリアの方に移動する。

「ひぇええええっ」

 昨日とは逆に船が小さくなって元の帆船へと姿を変える。
 その様子を見ていたシーラたちが、状況が理解できず再び怯えていた。
 気を取り直し、シーラたちが自分たちの船に乗り込み、先導を開始する。

「それではついてきてください!」

 俺たちはアルゴノイアに乗ったまま、彼女の船の後を追うのだった。


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