誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン

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4巻

4-2

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「あれは海賊船ね」
「やっぱりそうなんだな」

 リンネも音を聞いて体を起こし、俺が見ていた方向に視線を向けてポツリと呟く。
 予想通り、迫ってきているのは海賊船だったらしい。
 異世界の海で起こるイベントといえば、海賊かモンスターの襲撃と相場が決まっている。
 俺はどんな海賊が近づいてきているのか興味を持った。
 海賊船はドンドンッと大砲を撃ちながら、なおもアルゴノイアに近づいてくる。
 しかし、命中率がそれほど高くないのか、船に当たる様子はない。
 近くに落ちて大きな水しぶきが跳ねる程度だ。
 そして、船に乗っている人が見えるくらいに近づくと、大砲の音が止まった。
 もしかしたら先ほどまでの砲撃は威嚇いかくだったのかもしれない。
 アルゴノイアの横に船を並べると、一人の人間が先頭に立った。

「ここで会ったが、百年目。あなたたち、命が惜しければ金目のものを置いていきなさい!」

 その人物は、いかにも海賊船の船長らしい帽子とマントを身に着けていた。
 ただ、どう見ても年若い女の子。
 ウェーブのかかった象牙色のロングヘアーに金色の眼。片目は眼帯で隠れている。
 中二病をわずらっていそうな出で立ちだ。
 服に着られている感がいなめない。
 そんな彼女の後ろには、屈強な肉体をもつ人相の悪い半裸の男たちが並んでいた。

「あんたたちは何者だ?」
「私たちは泣く子も黙るヘコポー海賊団。商人や軍船さえ私たちを恐れてこの海域に近づかないっていうのに、あなたたちはそんなことも知らないの? その上、暢気に船の上で休んでいるなんて、狙ってくれと言っているようなもの。どうやら愚か者のようね」

 俺の質問に、船長らしい女の子が偉そうな態度で答える。
 確かに彼女の言う通り、小さな帆船で船旅なんて格好の獲物だと言われても仕方ないか。
 しかし、あの子も俺たちが何者かも知らないで手を出そうとしている。
 お互い様だな。

「海賊団か。その海賊団が俺たちにいったい何の用だ?」
「だから、金目のものを出しなさいって言ってるでしょ。そうすれば、見逃してあげるわ」
「ありがたくって涙が出るな。でも、俺たちがここで――」

 俺が売られた喧嘩を買おうとすると、突然リンネに後ろから口を塞がれた。
 俺とリンネは海賊船に背を向けてしゃがんで二人で話し合う。

「ど、どうしたんだ?」

 リンネは新しい玩具おもちゃを手に入れた子供のようにウキウキした様子で答えた。

「あの海賊たちも映画の敵役として登場させましょうよ」
「はぁ?」

 リンネが変なことを言い出したせいで、俺はおかしな声を出してしまった。


 海賊が魔法少女ものの映画の敵役、もしくはかませ犬になるのは悪くはない。
 ただ、犯罪者を起用するのはいかがなものか。

「見たところ、あの海賊団は大した悪事は働いてないわ。少なくとも人身売買や殺人なんかはしてなさそう。そういう人特有の殺気も感じないしね。ちょっと痛い目に遭わせるのにちょうどいいわ」

 確かに金目のものを差し出せば、本当に逃がしてくれそうな雰囲気があの海賊団にはある。
 リンネが言う通り、彼らはそれほど悪い奴らではないのかもしれない。

「まぁ、リンネの要望っていうなら俺は別にいいけど」
『おもしろそー!』
『僕も頑張るよ!』
「それじゃあ、決まりね。撮影よろしく」

 だからと言って、略奪が悪いことには変わりない。
 しっかりと教育する必要があるだろう。
 それなら、魔法少女リンネの餌食えじきになってもらおうじゃないか。
 しびれを切らした海賊船長が再び告げる。

「何をコソコソと話しているのかしら? 出すの、出さないの?」
「お前たちのような海賊団に差し出すものなんてない。さっさと失せろ」

 俺が挑発した瞬間、海賊船から男たちがロープを使ってターザンのように飛び移ってきた。
 本来ならアルゴノイアの障壁で弾くことも可能だが、今は撮影のために海賊たちが甲板に降りられるようにしている。

「どうやら痛い目を見ないと分からないようね。野郎ども、少し懲らしめてやりなさい」
「「「ひゃっはー!」」」

 ドローンカメラを飛ばして、俺は撮影を開始した。
 すぐに、海賊たちが俺たちを囲む。
 リンネは、水着に魔法少女が持つステッキという奇抜な格好で相手と対峙する。

「あ、あわわわっ。落ちちゃう!」

 男たちの後で海賊女子がアルゴノイアに渡ってきたが、慣れていないのか、船から落ちそうになっていた。
 震えているな。もしかしたら、まだ船長になったばかりなのかもしれない。
 相手が海賊とはいえ、少しだけ可哀そうになってきた。

「降参しておけばいいものを。あなたたちが悪いのよ。野郎どもやってしまいなさい!」

 海賊女子はこっそり合流して指示を出す。
 手下たちが一斉に飛びかかってきた。
 俺は攻撃をかわしながらリンネの戦闘風景を撮影する。

「おらぁっ!」
「くそっ、当たらねぇ!」
「後ろに目でもついてんのか!?」

 海賊たちは必死に斬りかかってくるが、撮影中の俺に剣をかすらせることさえできない。
 見たところ、Bランク冒険者程度の実力だ。
 何より必要以上に傷つけたくないという躊躇ちゅうちょが感じられる攻撃ばかりだ。

「あなたたちみたいな悪党は、この魔法少女リンネが退治してあげるわ!」

 リンネがステッキを掲げ、海賊に迫って優しく振り下ろす。

「何!?」

 海賊たちは驚愕きょうがくで顔をゆがませた。
 まさか水着にステッキを持つ美少女が攻勢に出るとは思わなかったのだろう。
 隙だらけの海賊は、ステッキの攻撃を受けて一撃で沈んだ。

「ぐへっ!?」

 後ろから別動隊の海賊たちが迫るが、リンネはすぐに振り返って詠唱して魔法を放った。

「うぉおおおおおおっ」
「火のマナよ、炎の弾丸となれ。ファイヤーボール!」
「ぐわぁあああっ」

 リンネの言葉の直後に、小さな火の玉が海賊に直撃して吹っ飛んでいく。
 一対一では不利だと見た海賊たちが連携して、複数の集団でリンネに戦いを挑む。

「くそっ。お前ら、まとめて行くぞ!」
『おう!』

 しかし、Bランク程度の力しかない雑魚ざこではリンネに太刀打ちできるはずもない。
 リンネはすぐに魔法で対抗する。

「地のマナよ、つぶてとなりて敵を討て。ロックバレット!」
「「「ぐわぁああああっ」」」

 いくつもの石礫が海賊めがけて飛翔し、彼らを吹き飛ばした。
 エルフの国で魔法を習ってから数カ月。
 リンネは魔法を随分使いこなせるようになったと思う。
 ちなみに呪文は映画撮影用にリンネが考えたものである。

「よそ見してんじゃねぇ!」
「ほいっ!」
「ぐへっ」

 無防備に見える俺にターゲットを変えて、海賊が襲いかかってくる。
 しかし、ヒラリと躱して軽く拳を叩き込んだだけで海賊は倒れた。

『僕の眠りを妨げるのは許さない! 猫パンチ!』
『とんじゃえぇ!』
「うわぁああああっ!」

 イナホとフィーも参戦し、海賊たちをバッタバッタとなぎ払う。
 イナホたちもBランク程度なら簡単に倒せるな。
 それからも俺たちが敵を退治する一方的な展開が続き、海賊たちはほとんど壊滅状態となった。
 手下たちが海賊女子にすがりつく。

「か、かしら! あいつら強すぎますぜ!」
「頼みます! 頭、あいつらに目にモノを見せてやってくだせぇ!」
「頭ぁ、お助けを!」

 腕を組んで観戦を決め込んでいた船長が俺たちの方にゆっくりと歩いてきた。
 本当にやる気なのか?

「仕方ないわね……ゴクリッ」

 見た感じ、あの女の子はそれほど強く見えない。実力を隠しているのか?
 部下たちも海賊女子の実力を疑っていない。
 見た目で判断したらダメなタイプかもしれない。
 ボロボロになっているくせに、船長が歩き出した瞬間、海賊たちは強気になった。

「へっへっへっ。頭が来たからにはお前たちはおわりだぜぇ」
「今更命乞いをしても許さないんだからな!」
「「「そうだそうだ!」」」

 まさに虎のる狐。
 海賊女子は腰にいた剣を抜いて構える。

「ここは私に任せなさい!」
「さっすが頭!」
「かっこいい!」
「そこにしびれる。憧れる!」

 芝居がかった振る舞いを見て、後ろの海賊たちが持てはやす。
 リンネが油断なくステッキを構えた。

「どうやら、親玉も私の魔法の餌食になりたいようね」
「やめておいた方がいいわよ。あなたは私を倒せないわ」
「そこまで言うのなら仕方ないわね。氷のマナよ、敵を貫く槍を成せ、アイスランス!」

 どちらも一歩も譲らず、二人が対峙する。
 リンネが先に動き、二メートルを超える氷の槍を放った。
 次の瞬間、海賊女子は百八十度態度を変え、即座に土下座をして許しを請う。

「申し訳ございませんでしたぁああああああっ!」

 その行動を見たリンネが間抜けな顔をさらした。

「え?」

 俺もリンネも周りにいた海賊たちも、急な展開についていけず、固まってしまう。
 アイスランスも目標を見失い、明後日の方向に飛んで消えていった。
 海賊女子は、ダメ押しとばかりに甲板に頭を打ちつける。

「どうか命だけはお助けくださいぃいいいっ!」
「「「ええぇえええええええええっ!?」」」

 そこでようやく全員の思考が追いつき、叫び声が重なった。
 その時の俺たちの気持ちは、全員一致していたと思う。
 ありえない展開にいら立っていたリンネから、威圧感が漏れ出している。

「はぁっ!?」
「ひっ」

 海賊女子はそれを一目見ただけで小さく悲鳴を上げた。
 納得できないリンネが海賊女子に詰め寄る。

「いったいどういうことよ!」
「じ、実は……」

 急に態度を変えた海賊女子が懇々こんこんと説明を始めた。
 話によると、彼女の名はシーラというらしい。
 シーラは早くに両親を亡くし、海賊団の団長をしていた祖父によって育てられたのだが、その祖父が亡くなってしまったことで、船長の後継者になったようだ。
 突然海賊団を引き継いだうえに、シーラは若い女の子でなんの経験も人望もない。
 海賊団のメンバーはおさがシーラの祖父だからこそまとまり、ついてきた者たちばかり。
 そのため、シーラの力及ばず大量の退団者が出てしまった。
 結果として海賊団の規模が大幅に小さくなり、ほとんど解散状態。
 今シーラと一緒にいるのは、彼女の祖父に大恩がある人間だけだという。
 さらには、メンバーの退団により、元々海賊を狩る海賊として活動していたヘコポー海賊団は、義賊として活動するのが難しくなった。
 元々祖父が残した遺産でやりくりしていたが、それももう底を突きそうな状態。
 そこで、どうにかお金を稼ぐため、意を決して船で外に繰り出したところで、俺たちを見つけたらしい。
 ここが危険であることを、身をもって知ってもらうため、脅迫したが、俺たちの戦闘力が予想以上だったので、びびってしまったとのことだった。
 これまでは団員になめられないように気丈に振舞っていたが、実は臆病な性格だったらしい。
 実際ある程度の戦闘力は持っていたので、今まではどうにかなっていたようだが、俺たち相手では誤魔化しきれなかったと語っていた。

「一般人を襲うのは今回が初めてなんだな?」
「あわわわっ。そ、そうです」
「それが本当なら許してもよさそうだな」

 リンネが言っていたこととも合致するし、初犯なら情状酌量の余地はある。

「ほ、本当です!」
「見たところ、嘘はついてなさそうだし、許してもいいと思うわよ」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ。でも……ただとはいかないわ」

 パァッと笑顔の花を咲かせるシーラに、チッチッチッと指を振るリンネ。

「ひっ。い、いったい何をすれば……もしかして私の体が目的ですか!?」

 シーラは自分の体を抱いて後ずさった。
 リンネは何を要求するつもりなんだろうか?

「そんなものはいらないわよ。条件はたった一つ。魔の海域まで案内すること」
「ひぇっ。ま、魔の海域ですか!?」

 なるほど、そういうことか。
 ある程度の場所は教えてもらったものの、魔の海域の具体的な位置については俺たちもまだ把握できていない。
 大洞窟で話を聞いた時も、どの辺りだという情報はなかった。
 ヘコポー海賊団が目的地を知っているのなら、リンネの提案は悪くない。
 義賊として活動できるように鍛え、丁寧に言い聞かせれば逃がしてもいいだろう。
 それにしても、シーラの反応を見る限り、魔の海域は海賊にも相当恐れられている場所みたいだな。
 彼女の顔色がサーッと青くなった。
 顔には「行きたくない」と書いてある。
 しかし、リンネが放つ無言の圧力を前に断るという選択肢はとれない。

「そうよ。何か文句ある?」
「か、かかか、海域の中には入らなくてもいいんですよね?」
「そうね。魔の海域の近くまで案内してくれればいいわ」

 リンネの言葉で、シーラは露骨に安堵した。
 海を渡り歩く海賊でも恐れる魔の海域。
 どんな場所なのか気になるな。
 少しワクワクしてきた。

「わ、分かりました。ご案内します」
「交渉成立ね」
「あの、つかぬことをお聞きしますが、魔の海域には何をしに行くんですか? もしかして、あなた方も魔の海域の財宝を探しに?」
「ん? 魔の海域には財宝が眠っているのか?」

 それは初耳だ。
 俺たちが聞いているのは、行方不明者が続出する危険な海域だということだけ。
 でも確かに、人の手が及ばない海域なので、どこかにお宝が眠っている可能性はある。

「私も詳しいことは分かりませんが、海賊王ガッセーが残した宝が眠っていると言われています。ガッセーの子孫や後継者と自称する人たちも、財宝を探すために魔の海域に挑戦しているようですが、誰一人帰ってきた者はおりません」

 海賊王の財宝。もし本当なら莫大な価値があるに違いない。
 そして何より、ロマンがある。
 リンネも俺と同じようにそれを感じ取って、口端を吊り上げていた。

「へぇ、そんな財宝があるのね。面白そうじゃない」
「え、怖くないんですか?」
「なんで?」

 目を丸くするシーラに、リンネは目を瞬かせ、首を傾げる。

「だって誰一人帰ってきてないんですよ? 死ぬかもしれないじゃないですか」

 そういえば、シーラの感覚が普通なんだよな。
 圧倒的な技術と力を手に入れたせいで、自分が死ぬことを想像できなくなっていた。
 そのせいか、危機感が薄れている気がする。

『ケンゴ様たちが死ぬことはありえません』
『あ、はい』

 バレッタに力強く断言されたことで、なおさら死を遠く感じてしまった。
 だから、誰も帰ってこない場所だと言われても怖くないんだよな。

「いつでも死ぬ覚悟はできている、とはいかないけど、いつ死んでも後悔のないように生きてきたつもりだし、私には頼れる仲間がいるから何も怖くないわ。それに何より、誰も戻って来られないような場所を冒険するなんてたぎるじゃない。冒険者冥利みょうりに尽きるわね」

 拳をぎゅっと握るリンネの目には炎が宿っていた。
 リンネはやっぱり根っからの冒険者気質なんだよな。

「あわわわっ、私はとんでもない人の船を襲ってしまったようですね。ち、ちなみにお名前をお聞きしても?」
「そういえば、自己紹介してなかったわね。私はリンネ・グラヴァール。冒険者よ」

 リンネの名前を聞いてハッとした表情になったシーラ。
 彼女は恐る恐るリンネに尋ねた。

「も、もしかして孤高の剣の女神とか呼ばれてらっしゃいますか?」
「自分で名乗ったことはないけど、そう呼ばれているらしいことは知っているわ」

 予想が的中したことを知ったシーラは再び大慌てで土下座する。
 最強の冒険者の一人に狼藉ろうぜきを働いたとなれば、殺されても文句は言えない。
 許してもらえたのは奇跡に等しいだろう。
 もし、会ったのが別のSSSランク冒険者だったら、シーラは死んでいたかもしれない。

「ひぇええええっ! SSSランク冒険者! 申し訳ございませんでしたぁ!」
「もういいって言ったでしょ」

 ヤレヤレと呆れて首を振るリンネ。
 シーラが頭を上げ、今度は俺に顔を向けた。

「俺はケンゴ・フクス。ただのSランク冒険者だ」

 まだ、いちSランク冒険者にすぎない俺はそれほど怯えられることはないはずだ。
 しかし、俺の予想は外れた。
 シーラは魂が抜けたように呆けてしまった。

「あわわわっ。そんなの勝てるはずない……」
「そんなことよりもガッセーの財宝について教えてよ」
「は、はい。なんでもそれを手に入れれば、世界を手中に収められるとか」

 世界が手に入るとすれば、命がけで探しに行く人間がいるのも理解できるな。
 俺は管理が面倒そうだから全く欲しいと思わないが。

「へぇ~、ますますどんなお宝なのか気になるわね。どのくらいで魔の海域まで行けるの?」
「そ、そうですね。この辺りからですと、一週間ほどかかるかと」
「結構遠いのね」

 シーラと話をしていると、船の中から旧型のパソコンのディスプレイ画面に手足を生やしたような物体が飛んでくる。

『てやんでぇ!』
「ん? ダンボンか。どうしたんだ?」

 大洞窟の最奥に隠されていた超古代文明都市で、管理業務を担っていたゴーレムのダンボンだ。
 俺たちが都市を訪れた際、超技術を使って船の中に都市ごと移設することを決め、行動をともにするようになった。その都市に一緒にいた天使型アンドロイドや人型ゴーレムも、今ではうちの船員だ。
 一億年以上もの間、都市を維持してきた腕を買って、ダンボンにはアルゴノイアの管理を任せている。
 コミカルで可愛らしい見た目のおかげで、ちょっと荒っぽい口調でも微笑ましい気持ちになるな。

『おうっ。船の変形機能がバージョンアップしたから伝えに来たのよ』
「別に通信でもよかったのに」

 わざわざ直接言いに来るなんて律儀なものだ。

『何言ってんだ、バーロー。今ここで実演してみせんだよ』
「なんでだ?」

 別に機能を試すのなんていつでもいいはずだ。

『そろそろ日も暮れるだろ。その機能を試すのにちょうどいいんだよ』
「そういうことなら見せてもらうよ。ぜひやってみてくれ」
『おうよっ! それじゃあ、始めるぜ。レッツ、ショータイム!』

 ゴゴゴゴという地鳴りのような音が鳴った後、船が光り輝く。
 そして、次の瞬間、甲板が急速に拡大し始めた。

「お、おお!?」
「な、何これ!?」
「ひぃいいいっ!」

 その変化に狼狽うろたえる俺たちと、すぐそばで怯えるシーラ。

『うごいてるぅ!』
『むにゃむにゃ……』

 フィーははしゃぎ、イナホは眠ったまま起きる気配がない。
 そして、一分もしないうちに動きが止まった。


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