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ヒメゴト
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少しだけ吹っ切れたような冬樹の様子に。
清香は考えながら、ひとつひとつ自分の思いを口にした。
「ずっとひとりで秘密を抱えて来たってことだよね。きっと…私なんかには想像できない位、沢山の辛い思いをしてきたんでしょうね…」
冬樹は、静かに清香の言葉に耳を傾けている。
「でも、本当はね…。『冬樹くん』を想う気持ちも分かるんだけど…『夏樹ちゃん』自身のことも大切にして欲しいって、私は思うんだ…」
「夏樹…の…?」
冬樹は少し驚いたように、清香を見た。
「うん…。例え話をしたらキリがないんだけど…女の子として過ごしていたら出来たこと、やりたいこと、きっと一杯あったんじゃないかなって」
「オレは…別に…」
「うん…。そんな風に自身の気持ちを押し隠してしまうのが、少し悲しいなって思ったの。でも…あの日から『冬樹くん』として生きている今のあなたの気持ちが、夏樹ちゃんの『想い』や『願い』そのものなんだっていうのが痛い程分かったから…。それを尊重してあげたい気もする、かな…」
そう言って清香は、少し困ったような笑顔を向けた。
(夏樹の…願い…)
「安心して。このことは誰にも言わないと約束するわ。でも、その代わり…条件があるの」
「条…件…?」
冬樹は、思わず不安げに清香を見詰めた。
そんな冬樹の反応に、清香はふふっ…と優しく微笑むと、
「困った時には、ちゃんと私を頼ること。知ったからには、しっかり協力させて貰うわよっ。特に学校でのことなら任せてね。少しは役に立てるハズよっ」
清香は人差し指をピッ…と立てて、言い聞かせるように言って笑った。
「それ位はさせてね。本当は、大人として…本当にこのままにしていて良いのか…正直迷ってるの。でも、あなたが決意する『その時』が来るまでは、せめて見守らせてね…」
そんな温かい言葉に。
「…せん…せい…」
涙腺が緩くなってしまったのか、再び冬樹の瞳には涙が溢れてきた。
肩を震わせながらも、声を出さずに泣き続ける冬樹に。
「ほらほら…冬樹くん。あんまり泣いてると、熱上がっちゃうぞ?」
清香は初めて『冬樹』と名を呼ぶと。
慰めるように、その熱い背をそっと撫でた。
清香は考えながら、ひとつひとつ自分の思いを口にした。
「ずっとひとりで秘密を抱えて来たってことだよね。きっと…私なんかには想像できない位、沢山の辛い思いをしてきたんでしょうね…」
冬樹は、静かに清香の言葉に耳を傾けている。
「でも、本当はね…。『冬樹くん』を想う気持ちも分かるんだけど…『夏樹ちゃん』自身のことも大切にして欲しいって、私は思うんだ…」
「夏樹…の…?」
冬樹は少し驚いたように、清香を見た。
「うん…。例え話をしたらキリがないんだけど…女の子として過ごしていたら出来たこと、やりたいこと、きっと一杯あったんじゃないかなって」
「オレは…別に…」
「うん…。そんな風に自身の気持ちを押し隠してしまうのが、少し悲しいなって思ったの。でも…あの日から『冬樹くん』として生きている今のあなたの気持ちが、夏樹ちゃんの『想い』や『願い』そのものなんだっていうのが痛い程分かったから…。それを尊重してあげたい気もする、かな…」
そう言って清香は、少し困ったような笑顔を向けた。
(夏樹の…願い…)
「安心して。このことは誰にも言わないと約束するわ。でも、その代わり…条件があるの」
「条…件…?」
冬樹は、思わず不安げに清香を見詰めた。
そんな冬樹の反応に、清香はふふっ…と優しく微笑むと、
「困った時には、ちゃんと私を頼ること。知ったからには、しっかり協力させて貰うわよっ。特に学校でのことなら任せてね。少しは役に立てるハズよっ」
清香は人差し指をピッ…と立てて、言い聞かせるように言って笑った。
「それ位はさせてね。本当は、大人として…本当にこのままにしていて良いのか…正直迷ってるの。でも、あなたが決意する『その時』が来るまでは、せめて見守らせてね…」
そんな温かい言葉に。
「…せん…せい…」
涙腺が緩くなってしまったのか、再び冬樹の瞳には涙が溢れてきた。
肩を震わせながらも、声を出さずに泣き続ける冬樹に。
「ほらほら…冬樹くん。あんまり泣いてると、熱上がっちゃうぞ?」
清香は初めて『冬樹』と名を呼ぶと。
慰めるように、その熱い背をそっと撫でた。
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