【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
111 / 303
違和感の先にあるもの

9-2

しおりを挟む
「今日も健在だねっ。唯花ちゃん」
長瀬はすっかり顔見知りのようで、雅耶と一緒に近付くと自ら声を掛けた。
「あっ長瀬くん、こんにちはー」
彼女も笑って長瀬に挨拶している。
「久賀くん、今日から部活お休みだよね?待ってて良かったー。今日も一緒に帰ろう♪」
「あ、うん…」
嬉しそうに笑っている彼女、大貫唯花おおぬき ゆいかは、雅耶が近づくなり、当然のように隣にピッタリと並んだ。

「………」
それを数歩後ろで立ち止まって見ていた冬樹は、ゆっくりと再び歩き出すと、
「じゃあ、オレは先に帰るね」
すたすたと、雅耶達の横を抜けて行った。
「あっ冬樹っ待てよ。一緒に…」
雅耶が慌てたように声を掛けるが、冬樹は足を止めることなく振り返ると、
「オレ…馬に蹴られたくないからさ」
そう言って笑うと「じゃあな」と手を振った。
「あっそれって、『人の恋路を邪魔する奴は…』ってやつ?あっ冬樹チャン!待ってよーっ。俺も蹴られたくないし、冬樹チャンと一緒に帰るよーっ」
長瀬も冬樹の後を追って行ってしまった。
冬樹の隣に並んだ長瀬が、向こうから手を振っている。

結局、余計な気を使われて二人に置いて行かれるカタチになり、雅耶は心の中で小さく溜息を付くと、このところ毎日のように一緒に帰っている唯花と歩き出した。


本当は、そろそろ限界だと思い始めていた。
最初は、帰り道に女の子に待ち伏せされる…という、その行為そのものがどこか照れくさい新鮮なものに感じていたけれど、今は苦痛でしか無かった。思っていたよりも周囲の反応が大きく、皆に騒がれ過ぎたのも気が重くなった要因の一つかも知れなかったが。
本当は、告白されたその場で断る筈が、自分のことを知ってから答えを出して欲しいと彼女に押され、確かに知りもせずに即断るのは失礼かなと思ってしまった結果がこの状態だった。
今となっては、それを後悔している自分がいる。
ヘタに『悪い子ではない』と知ってしまった分、逆に断りにくくなってしまったのは事実だった。

「でねーその子がねー…」
隣でにこにこ笑って話す彼女は、確かに可愛いとは思う。
だが…。

帰る方向が一緒なのだから当然なのだが、ずっと目の前を歩いている冬樹と長瀬の姿が気になって、雅耶はつい目で追ってしまっていた。今では、何だかんだと仲の良い二人は、ずっと楽しそうに会話を続けながら歩いている。

『本当なら、俺があそこにいる筈なのに…』

思わず、そんな言葉が頭に浮かび。
(俺は最低だな…)
そして、自己嫌悪に陥った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...