【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
245 / 303
ドラッグ&トラップ

19-7

しおりを挟む
「チッ、こうなったら…」
どういじってみても出続けるエラーに萩原は舌打ちをすると、パソコンはそのままに立ち上がり、今度は冬樹を無理やり立ち上がらせようと、再び腕を掴み上げた。

「…いた…っ…」
「ほらっ立つんだっ!」

薬のせいで身体が痺れて立ち上がる力がないというのに、勝手なものだ。
それでも、無理矢理冬樹の腕を肩に掛け、引き摺りながら連れ出そうとする萩原に。
「…くそっ!離せっ!…触るなっ…」
(身体さえ自由に動けばこんな奴、速攻のしてやるのに…)
冬樹は歯痒い思いを抱いていた。

その時、床に転がったまま今まで放置されていた力が萩原に向かって怒鳴った。
「お前っ…何処へ行くつもりだッ?」
だが、萩原はチラリと力を見やると言った。
「この子を本社まで連れて行かなくてはいけないので、力様…申し訳ありませんが少々お待ちいただけますか?」
その冷たい言葉に、力は目を剥いた。



萩原の言う『本社』は、この別荘から優に片道一時間は掛かる所にある。単純に計算しても、再び戻って来るまでには二時間は掛かるということになる。
(それだけの時間、俺を此処に放置する気なのか…?)
それに、冬樹を本社へ連れて行く…ということは…。

「お前っ、結局は親父の駒だったのかっ?」

(…ずっと、お前だけは俺の味方だと思っていたのに…)
信じていた男に裏切られ、力は悔しげに奥歯を噛んだ。
「申し訳ありません、力様。基本的に私の雇い主は、あなたのお父様ですから。主人の命令は絶対なのですよ」
「…親父、の…?」
「ええ。今迄は貴方のご希望を第一に優先して行動し、お守りするようにとのめいを受けておりました。ですが、先日少々変更がありまして…。貴方を利用してでも、この少年の確保を優先するようにと仰せつかったものですから」
そう、何でもないことのように話す萩原に、力はそれ以上何も言えず視線を逸らすしかなかった。
そうして床に蹲ったまま、力の入らない拳を悔しげに握りしめた。


萩原は、脱力している冬樹をやっとのことで引き摺ってドアの前まで来ると。
「チッ、薬を使ったのが逆にあだとなったかっ…」
イラつきながら、片手で勢いよくその扉を開けた。
だが、次の瞬間。

「…うっ!」

ドア横に潜んでいた人物の手刀が素早く萩原の首後ろに決まって、萩原はあっけなくその場に崩れ落ちてしまった。

「あっ…」
冬樹が、萩原に抱えられたまま共に地に倒れ込むのを覚悟した瞬間…。
横から伸びて来た人物の腕の中へと引き込まれると、優しく抱き留められた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...