【完結】ツインクロス

龍野ゆうき

文字の大きさ
296 / 303
新たなスタートライン

24-2

しおりを挟む
その逮捕劇から、一週間後。

日曜日の昼下がり。
雅耶は部活を終えた足で家の最寄駅まで戻って来ると、暫く駅前の噴水広場で時間を潰していた。
駅側からの入口が正面に見えるベンチに腰掛けると、ある人物が現れるのを待つ。
良く晴れた空には小さな雲が僅かに浮かんでいるだけで、頭上からは燦々と日差しが降り注いでいたが、真夏のようなジリジリとした熱さは、もう無い。
つい先日まで続いていた暑さが嘘のように、季節は確実に秋へと移り変わりつつあった。
爽やかな風に吹かれながら、持っていた雑誌に何気なく目を通していると、不意に制服のポケットの携帯が震え、意識がそちらへと移る。
届いたメールを確認すると、雅耶はすぐに駅の方角へと目を向けた。
すると…。

待っていた人物が、広場に入って来るのが見えた。
きょろきょろと周囲を見渡していて、こちらには気付いていない様子なので、雅耶は立ち上がると軽く手を上げた。
すると、すぐに気付いて小走りに駆け寄って来る。
ほぼ一週間ぶりに見るその、はにかんだような笑顔に、思わず心が弾んでゆくのを雅耶は感じていた。



「ごめん、雅耶。結構待たせちゃったんじゃないか…?」

目の前まで来て、夏樹が申し訳なさそうに言った。
「いや、そうでもないよ。部活の帰りだし、時間的に丁度良かったからさ」
そう答えると、ベンチに置いてあったスポーツバッグを手に取った。
そうして、どちらからともなく自然に歩き始める。

「それより、お帰り。…で、どうだったんだ?」
「あ、うん。ただいま…。一応、無事…手続きは全部終えたんだ」
「…ってことは…」
「うん。無事、夏樹に…戻れた」
少し照れながらも、笑顔で見上げてくる夏樹に。

「ホントかっ?!やったなっ!おめでとうっ!!」

雅耶は立ち止まると、興奮気味に声を上げた。
その、思いのほか大きくなってしまった声に、思わず周囲の人々の注目を浴びてしまった二人だったが、そんなものを気に掛けている余裕は雅耶にはなかった。

これまでの八年間…、夏樹はずっと一人で苦しんできたのだ。
冬樹に対しての後悔の念は勿論のこと、周囲を偽り続けることへの罪悪感。そして、背徳感に。
誰にも打ち明けられず秘密をひた隠しにし、時には己を打ち消して…。
それらの苦痛から、これでやっと解放されるのだ。

再び、自分自身の道を歩んで行ける、スタートラインに立てたのだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...