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トクベツな場所
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自分の弱さを改めて認識して心の中で小さくため息をつきながらも、先程から気になっていた疑問を口にした。
「でも、急にどうして…?」
「ん?ああ。だって、向かう先は同じなんだし?今日も辰臣さんトコ、寄るだろ?」
そう当然のように言われて、少し戸惑った。
自分的には顔を出す予定はなく、もしも一人で帰っていたら迷わず真っ直ぐ家を目指すつもりだったから。
それが顔に出てしまっていたんだろうか。目の前の彼が意外そうな顔をした。
「あれ…なに?もしかして、寄らないつもりだった?それ聞いたら、ランボー悲しむぞー。ついでに辰臣さんもだけど」
「………」
だって、そんなに部外者の自分が頻繁に出入りして良いものなのだろうか?あの人にとっては、あの場所が大切な職場であるに違いないのに。
前回は、あまりに無垢な笑顔を向けられてしまい、誘いを断れず流されてしまったけれど、本来はあまり深入りするものじゃないと、いつもの予防線を張り始めている自分がいた。
(でも…)
今までなら、すぐに距離を取って関係を断ち切るところなのに、何故かこの人たちにはそれが出来ずにいる。ランボーのこととか、向こうのペースに乗せられてしまっている感もあるのだけど。でも…。
本当は、それだけじゃないと自分でも気付いている。
「まぁな…。いくら動物好きでも『救済センター』ってだけあって、基本的に辛い目にあってる動物たちばっか目の当たりにするし、決して楽しい場所ではないからな…。辰臣さん的には、あんたのことを凄く買ってて勝手に大きな戦力とみなしてる感があるけど、流石にそれも迷惑な話だと思うし。ま、無理する必要はねぇよ」
「別に、無理してるって訳じゃないけど…」
「そうか?なら、いいんだけどな」
寧ろ、二人と話しているのは心地が良いくらいだった。
昨日のように、ゆっくり人と会話をしたのは本当に久し振りのことだった。
勿論、辛い目に合っていた動物たちを救う為の場所だから、自分なんかが無責任に楽しんで良い場所ではないとは思うけれど。
でも、純粋で優しさの塊のような大空さんと。
一見ぶっきらぼうに見える幸村くんも結構気さくな人で。大空さんを誰よりも尊敬していて兄のように慕っていながらも、要所要所上手く仕切っていて。互いに寄せ合う信頼感みたいなものは見ていて気持ちが良いくらいだった。
それに、何より…。
昨日からずっと、気になっていた。
こうして幸村くんと会話をしていても、普段と決定的に違うこと。
「辰臣さんって見掛けに寄らず、押しが強いだろ?笑顔で上乗せしてくるっつーか。本人に自覚がないだけホント厄介なんだよなー」
「あ…分かる気がする」
「だろっ?」
「話の分かる奴がいて良かった」と、嬉しそうに笑う幸村くんは、本当に大空さんのことが好きなんだなぁと分かる。そんな気持ちが溢れている笑顔だ。
でも、本当にそれだけ。表情から読み取れるだけだ。
そう。何故か彼からは、心の声が聞こえて来ない。
それは、驚いたことに大空さんにも言えることだった。
昨日、それに気付いた自分は、もしかしたらもう『声』が聞こえなくなったのではないか?と考えた。
でも、家に帰って普段通り祖母の心の声を耳にしたことで、その期待は簡単に打ち砕かれてしまったのだが。
他の人の『声』は変わらずに聞こえている。
でも、彼(ら)の声は聞こえない。
それは、いったい何故なのだろう…?
でも、理由はどうであれ…。心の声が聞こえて来ないということが、こんなにも気が休まるものだとは思ってもみなかった。
あの時、母の『声』を聞く以前は、ずっとそれが当たり前のことだったのに。
表に出ている表情や言葉。それとは別の…隠された感情、本音。
それは時に、建前だったり思惑だったり。気遣いや憐れみだったり。
喜びや悲しみ、愛情、怒り。驚きや諦め、嫌悪、恐怖、不満、羞恥。
人は皆、何かしら心に秘めた感情を持っている。
自分では、そんなことを思わないようにしようとか、考えないようにしようと思っていても、心に浮かんで湧いてしまうのが感情であり、本音だ。
でも、それは自然なことで。感情を持っている者にとっては、ごく当たり前のことだ。
そして、敢えてそれを外には出さず、皆がそれぞれ上手く関係を保ち、成り立っているのが社会なのだと思う。
そんな秘められた個々の心を見透かしてしまう能力なんて必要ない。私は、そう思う。
そんなものは、存在してはいけないのだ。誰だって心の内を覗かれたくはないし、知られたくない。
もしも、それが聞こえてしまっている事実を知ったら…。きっと、誰もが私を気持ち悪がり、恐れ、離れていくに決まっている。
そう。母のように…。
「ん?どうした、月岡?」
「……あ…」
自分の思考に囚われていたのか、気付けば足を止めてしまっていた。
少し先から自分を振り返り、同様に足を止めて待ってくれている幸村くんに「なんでもない」と、ゆっくり歩み寄った。
彼は、こちらの様子を伺うように不思議そうな顔を見せていたが、やはり何も聞こえては来なかったことに、少しだけ安堵する。
「そういえばさ、俺あんたに聞きたいことがあったんだよ」
「でも、急にどうして…?」
「ん?ああ。だって、向かう先は同じなんだし?今日も辰臣さんトコ、寄るだろ?」
そう当然のように言われて、少し戸惑った。
自分的には顔を出す予定はなく、もしも一人で帰っていたら迷わず真っ直ぐ家を目指すつもりだったから。
それが顔に出てしまっていたんだろうか。目の前の彼が意外そうな顔をした。
「あれ…なに?もしかして、寄らないつもりだった?それ聞いたら、ランボー悲しむぞー。ついでに辰臣さんもだけど」
「………」
だって、そんなに部外者の自分が頻繁に出入りして良いものなのだろうか?あの人にとっては、あの場所が大切な職場であるに違いないのに。
前回は、あまりに無垢な笑顔を向けられてしまい、誘いを断れず流されてしまったけれど、本来はあまり深入りするものじゃないと、いつもの予防線を張り始めている自分がいた。
(でも…)
今までなら、すぐに距離を取って関係を断ち切るところなのに、何故かこの人たちにはそれが出来ずにいる。ランボーのこととか、向こうのペースに乗せられてしまっている感もあるのだけど。でも…。
本当は、それだけじゃないと自分でも気付いている。
「まぁな…。いくら動物好きでも『救済センター』ってだけあって、基本的に辛い目にあってる動物たちばっか目の当たりにするし、決して楽しい場所ではないからな…。辰臣さん的には、あんたのことを凄く買ってて勝手に大きな戦力とみなしてる感があるけど、流石にそれも迷惑な話だと思うし。ま、無理する必要はねぇよ」
「別に、無理してるって訳じゃないけど…」
「そうか?なら、いいんだけどな」
寧ろ、二人と話しているのは心地が良いくらいだった。
昨日のように、ゆっくり人と会話をしたのは本当に久し振りのことだった。
勿論、辛い目に合っていた動物たちを救う為の場所だから、自分なんかが無責任に楽しんで良い場所ではないとは思うけれど。
でも、純粋で優しさの塊のような大空さんと。
一見ぶっきらぼうに見える幸村くんも結構気さくな人で。大空さんを誰よりも尊敬していて兄のように慕っていながらも、要所要所上手く仕切っていて。互いに寄せ合う信頼感みたいなものは見ていて気持ちが良いくらいだった。
それに、何より…。
昨日からずっと、気になっていた。
こうして幸村くんと会話をしていても、普段と決定的に違うこと。
「辰臣さんって見掛けに寄らず、押しが強いだろ?笑顔で上乗せしてくるっつーか。本人に自覚がないだけホント厄介なんだよなー」
「あ…分かる気がする」
「だろっ?」
「話の分かる奴がいて良かった」と、嬉しそうに笑う幸村くんは、本当に大空さんのことが好きなんだなぁと分かる。そんな気持ちが溢れている笑顔だ。
でも、本当にそれだけ。表情から読み取れるだけだ。
そう。何故か彼からは、心の声が聞こえて来ない。
それは、驚いたことに大空さんにも言えることだった。
昨日、それに気付いた自分は、もしかしたらもう『声』が聞こえなくなったのではないか?と考えた。
でも、家に帰って普段通り祖母の心の声を耳にしたことで、その期待は簡単に打ち砕かれてしまったのだが。
他の人の『声』は変わらずに聞こえている。
でも、彼(ら)の声は聞こえない。
それは、いったい何故なのだろう…?
でも、理由はどうであれ…。心の声が聞こえて来ないということが、こんなにも気が休まるものだとは思ってもみなかった。
あの時、母の『声』を聞く以前は、ずっとそれが当たり前のことだったのに。
表に出ている表情や言葉。それとは別の…隠された感情、本音。
それは時に、建前だったり思惑だったり。気遣いや憐れみだったり。
喜びや悲しみ、愛情、怒り。驚きや諦め、嫌悪、恐怖、不満、羞恥。
人は皆、何かしら心に秘めた感情を持っている。
自分では、そんなことを思わないようにしようとか、考えないようにしようと思っていても、心に浮かんで湧いてしまうのが感情であり、本音だ。
でも、それは自然なことで。感情を持っている者にとっては、ごく当たり前のことだ。
そして、敢えてそれを外には出さず、皆がそれぞれ上手く関係を保ち、成り立っているのが社会なのだと思う。
そんな秘められた個々の心を見透かしてしまう能力なんて必要ない。私は、そう思う。
そんなものは、存在してはいけないのだ。誰だって心の内を覗かれたくはないし、知られたくない。
もしも、それが聞こえてしまっている事実を知ったら…。きっと、誰もが私を気持ち悪がり、恐れ、離れていくに決まっている。
そう。母のように…。
「ん?どうした、月岡?」
「……あ…」
自分の思考に囚われていたのか、気付けば足を止めてしまっていた。
少し先から自分を振り返り、同様に足を止めて待ってくれている幸村くんに「なんでもない」と、ゆっくり歩み寄った。
彼は、こちらの様子を伺うように不思議そうな顔を見せていたが、やはり何も聞こえては来なかったことに、少しだけ安堵する。
「そういえばさ、俺あんたに聞きたいことがあったんだよ」
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