4 / 5
第4話 なにが「ふぉっふぉっふぉ」だ
しおりを挟む
「昇坂くん、今から私たちはサンタクロースになるわ」
石上さんは僕にそう言い放つと、勝手に『コミュニティハウス光』の建物へと入っていく。
その様子は勝手知ったるといったもので、入り口の門を開き、スタスタと玄関へむかっていった。
「これは昇坂くんの分よ」
外観よりもこじんまりとした玄関をぬけ、特に誰とも出くわさずに『コミュニティルーム』と書かれた部屋へ通された。そこにはいくつかの学校机と揃いの椅子が並んでいる。
「なにそれ」
僕の疑問には返答はない。脈絡もなしに手渡されたものは、パンパン膨れた大きな白い袋だった。持ってみるとけっこう重い。
「私ね、子どもが嫌いなの」
相変わらず会話ができない人である。未来人は会話というツールを捨てたのかもしれない。
先ほど「サンタクロースになる」と宣言した人とは思えない台詞を吐きながら、石上さんはそのまま部屋から出ようとスライド式のドアに手をかける。
「え、いや、ちょっとどこいくの?」
見知らぬ場所に取り残されそうになった焦りから、僕の喉からは思いのほか必死な声がでた。
石上さんがドアを見つめたまま言う。
「もちろん着替えてくるの。着いてきちゃだめよ。えっち」
何がもちろんなのか全然わからなかったが、無表情に「えっち」と言った石上さんがかなり良かったので、僕は「待て」をされた犬のように大人しく待つことにした。
カッチ、コッチ、としばらく時計の針が動く音だけが室内に響いた。今頃気がついたことだが、部屋の壁には子どもが描いたような似顔絵や草花の絵が画鋲でとめてあった。
僕がぼんやりとその壁に貼られた絵を見ていると、時計の音に紛れて控え目なドアの開く音がした。
入ってきたのは完璧なサンタスタイルとなった石上さんだった。赤の上着とズボンに、ポンポンのついた帽子、顔には白くて長い髭が張り付いている。なるほど。僕が持たされているのはサンタが持つ袋のようだ。
「ふぉっふぉっふぉ」
なにが「ふぉっふぉっふぉ」だ。正直、僕は怒っていた。
なぜズボンスタイルなんだ
この多様化の時代、恥ずかしげもなくミニスカサンタだって良いじゃないか。女の子のサンタスタイルはもうそっちの方がポピュラーなはずだ。まぁ本当にされたら僕には刺激が強過ぎて目のやり場に困っていた気はするが。
「ふぉっふぉっふぉ」
石上さんは笑い声の練習をしていた。その表情こそいつもと変わらないが、額からは汗が垂れている。見ているこっちも暑い。
ひとしきり笑い声の練習をした後、満足した石上さんはようやく僕におおまかな説明をはじめた。
どうやらまずこの『コミュニティハウス光』という建物は孤児院らしい。何となく施設の様子で想像はついている部分もあったが。石上さんの戸籍の持ち主……ええいややこしいなこの設定。石上さん(仮)もここでお世話になっていたという。何でも孤児院のイベントはクリスマスのみらしく、石上さんの解釈によるとこの施設のイベントは全て『クリスマス』なるらしい。
石上さんの「未来」のための計画では、刺激に飢えた孤児院の子どもたちに突発的なプレゼントを渡すことによってその欲望を刺激し、ふたたび刺激のない生活に戻すことで子どもたちは潜在的な資本主義の豚になるのだという(ほぼ原文まま)
心の底から「どうしてそんなことを?」と僕が聞くと
「私は未来人だから」
という返答がきた。最近こういっておけば何とかなると思ってないか。
しかし、未来はディストピアでもなっているのだろうか?
それとも行き過ぎた資本主義により滅ぶことが義務付けられているのか?
どちらにせよ未来人の価値観は現代人には僕には計りきれなかった。
「昇坂くんは現代人だものね」
言っていることはふざけているが、石上さんは顔が整っている分なんとなく雰囲気がある。
「そういうことよ」
それだけ言うと、得意の遠くを見つめる眼差しをする石上さん。
格好つけているところ悪いけど、ボタボタ汗を垂らす石上さんにハンカチを渡しておいた。
石上さんは僕にそう言い放つと、勝手に『コミュニティハウス光』の建物へと入っていく。
その様子は勝手知ったるといったもので、入り口の門を開き、スタスタと玄関へむかっていった。
「これは昇坂くんの分よ」
外観よりもこじんまりとした玄関をぬけ、特に誰とも出くわさずに『コミュニティルーム』と書かれた部屋へ通された。そこにはいくつかの学校机と揃いの椅子が並んでいる。
「なにそれ」
僕の疑問には返答はない。脈絡もなしに手渡されたものは、パンパン膨れた大きな白い袋だった。持ってみるとけっこう重い。
「私ね、子どもが嫌いなの」
相変わらず会話ができない人である。未来人は会話というツールを捨てたのかもしれない。
先ほど「サンタクロースになる」と宣言した人とは思えない台詞を吐きながら、石上さんはそのまま部屋から出ようとスライド式のドアに手をかける。
「え、いや、ちょっとどこいくの?」
見知らぬ場所に取り残されそうになった焦りから、僕の喉からは思いのほか必死な声がでた。
石上さんがドアを見つめたまま言う。
「もちろん着替えてくるの。着いてきちゃだめよ。えっち」
何がもちろんなのか全然わからなかったが、無表情に「えっち」と言った石上さんがかなり良かったので、僕は「待て」をされた犬のように大人しく待つことにした。
カッチ、コッチ、としばらく時計の針が動く音だけが室内に響いた。今頃気がついたことだが、部屋の壁には子どもが描いたような似顔絵や草花の絵が画鋲でとめてあった。
僕がぼんやりとその壁に貼られた絵を見ていると、時計の音に紛れて控え目なドアの開く音がした。
入ってきたのは完璧なサンタスタイルとなった石上さんだった。赤の上着とズボンに、ポンポンのついた帽子、顔には白くて長い髭が張り付いている。なるほど。僕が持たされているのはサンタが持つ袋のようだ。
「ふぉっふぉっふぉ」
なにが「ふぉっふぉっふぉ」だ。正直、僕は怒っていた。
なぜズボンスタイルなんだ
この多様化の時代、恥ずかしげもなくミニスカサンタだって良いじゃないか。女の子のサンタスタイルはもうそっちの方がポピュラーなはずだ。まぁ本当にされたら僕には刺激が強過ぎて目のやり場に困っていた気はするが。
「ふぉっふぉっふぉ」
石上さんは笑い声の練習をしていた。その表情こそいつもと変わらないが、額からは汗が垂れている。見ているこっちも暑い。
ひとしきり笑い声の練習をした後、満足した石上さんはようやく僕におおまかな説明をはじめた。
どうやらまずこの『コミュニティハウス光』という建物は孤児院らしい。何となく施設の様子で想像はついている部分もあったが。石上さんの戸籍の持ち主……ええいややこしいなこの設定。石上さん(仮)もここでお世話になっていたという。何でも孤児院のイベントはクリスマスのみらしく、石上さんの解釈によるとこの施設のイベントは全て『クリスマス』なるらしい。
石上さんの「未来」のための計画では、刺激に飢えた孤児院の子どもたちに突発的なプレゼントを渡すことによってその欲望を刺激し、ふたたび刺激のない生活に戻すことで子どもたちは潜在的な資本主義の豚になるのだという(ほぼ原文まま)
心の底から「どうしてそんなことを?」と僕が聞くと
「私は未来人だから」
という返答がきた。最近こういっておけば何とかなると思ってないか。
しかし、未来はディストピアでもなっているのだろうか?
それとも行き過ぎた資本主義により滅ぶことが義務付けられているのか?
どちらにせよ未来人の価値観は現代人には僕には計りきれなかった。
「昇坂くんは現代人だものね」
言っていることはふざけているが、石上さんは顔が整っている分なんとなく雰囲気がある。
「そういうことよ」
それだけ言うと、得意の遠くを見つめる眼差しをする石上さん。
格好つけているところ悪いけど、ボタボタ汗を垂らす石上さんにハンカチを渡しておいた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる