未来に帰りたい石山さんと家に帰りたい昇坂くん。

「未来に帰りたいわ」
 
 風が吹き抜けるデパートの屋上で、石山さんはそんなことを言った。夏真っ盛り。ビルの隙間風までも太陽に熱されて、生温かった。

 石山さんはいつも通りの無表情で、風で暴れる髪を手でおさえる。抑えた手の隙間から覗く目はどこか遠くを眺めていた。
 
「ドラえもんみたいなこと言うね」
 
「え? どら…なにそれ?」
 
 怪訝そうにこちらを見る石山さん。形の良い眉が八の字になっている。え、嘘だろ? 日本人に知らない人っているの?
 
「ドラえもん知らないの?」
 
「知らない」

「嘘でしょ!? あれだよ、ほら! あの、ネズミが苦手な」


未来へ帰りたい石山(いしやま)さんと家へ帰りたい昇坂(のぼりざか)くん。約束を携え、二人はタイムマシンを探すのだった。
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