堕ちろ!激かわ猫男子

芋谷

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エプロン(1)

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「てかさー。アインの家ってまあまあデカくなかった?」

職場からの帰り道。毎日セックスするという約束のために、昨日と同じようにして二人で帰り道を歩んでいる途中で、突然にダリスがそんなことを言い出した。

「暗かったしパニクってたから前上がったときどこにあったかは忘れちゃったけど、確か一番大通りちょい手前くらいのデカいとこだったよね?」
「そうだな。職場に近いし良い物件だと思って引っ越したんだ。風呂とトイレも別れているし、何より広くて天井が高い」
「あー……うちちっちゃいよね、それはごめん」

確かにダリスの家は狭い。キッチンがなくユニットバスなのをはじめ、ベッドと家具に占領され残された床のスペースには余裕がなく、天井が低いためドアを潜るとき若干身を曲げないと頭をぶつけるほどだ。
ただ、そんな全てが小さい規模の家もいかにもダリスらしくて可愛らしいし、空間が狭い分より近くに彼を感じられる気がして、そこそこ気に入っていた。もし彼と同棲するならばどちらの家になるのだろうか。彼と付き合う前までは狭い家より広い家の方が住み心地がいいと感じていたが、彼と一緒ならどこに住んだってきっと楽しいし幸せに違いない。

「……って思うんだけど。どう?あの、ねえ。アイン話聞いてる?」
「えっ、あ」

名前を呼ばれ我に返る。

「はー……。今日アインの家行きたいって話。ここからだとちょっと道引き返すことになるけど……だめ?」
「全く問題ない。むしろ大歓迎だ」

話の流れはまるで分からなかったが、彼が家に来るという思わぬ嬉しい事態となって、心躍った。

中央通路まで引き返し、北西口から地上へ出る。細い道路を歩いていくつか角を曲がった先の自宅があるビルはいつもの姿だったが、ダリスはやたら目を輝かせて中に入るように急かした。
エレベーターの縦移動と廊下の横移動を終えて、カードキーで開錠する。十六畳近くあるワンルームに入るなり彼はベッドまで走り、ぴょこんと飛び乗った。マットレスもそれなりに良いものを使っているから、ふかふか感が気持ちいいのだろう。飛び跳ねるまではしないものの、スプリングを軋ませてはしゃいでいる。前回の訪問とはまるで違う状況に可笑しくなり、頬が緩んだ。

「やっぱいい家住んでるねー。インテリアは最低だけど」
「最低とはなんだ」
「天井ディルドとラブドール」
「……」

ぐうの音も出ず黙る。なんとか話題を変えようと頭を回す。

「……そういえば。急に来たいと言い出したが、どうしたんだ?」
「えー今それ言う!?ほんと話聞いてないね。ほら、前着て欲しいやつあるとか言ってたでしょ、それ着たげるって言ってたじゃんおれ」

そうだったか?と思い返すが、まるで思い出せない。彼との生活の妄想で頭がいっぱいだったからかもしれない。

「おれかわいー服着るの好きだからさ。……あと変なことされるよか服着てる方が楽だし」

馬鹿正直にべらべら話す彼に苦笑いするが、着てくれる分には嬉しいため、素直に礼を言う。

「で、何着る?」
「そうだな……」

買い貯めていた様々な服を思い浮かべる。ナース服。チャイナドレス。制服。ボンデージやランジェリー類。色々考えた末、要望を声にする。

「滅茶苦茶なことを言っていると分かっているんだが。ひとつ着てもらいたいものがあって」
「なに、言ってみ?」
「その……裸エプロンとか、……だめか」

苦虫を噛み潰したような表情。

「はぁ?きっしょ……ないわー……」
「挿入なしでもいい!頼む。三時間だけそれを着て、一緒にいてくれないか。これだけで構わないから。ダリスの裸エプロンがどうしても見たいんだ」
「……」

ダリスはくるくると髪をいじりながら、考える様子を見せる。

「いいよ。分かった。けど時間もうちょい短くして、おれはやく帰りたい」
「着てくれるのか!ありがとう。それで良い」

挿れない方がぶっちゃけ楽だしね、と呟く声を背中で受けながら、さっそくふりふりのエプロンを開封し、手渡す。女性用のものだったが、華奢なダリスにはぴったりの大きさだろう。

「……はい」

着替えはすぐに終わった。かつて彼の服を回収し採寸していただけあり、ダリスのためにと購入していたそのエプロンは丁度良いサイズ感であった。

「思っていたとおりかわいいな」

苦々しい表情の彼を抱きしめる。たった布一枚の彼の体温は裸も同然で、とくとくと落ち着いた脈動が感じられる。うなじから下はエプロンを留める紐畳のリボン以外の布はなく、すっと伸びた背骨のラインと丸く引き締まった尻が興奮をそそる。

「アイン、今日はえっちしないって」
「ああ」
「……」

丸見えの生尻を揉む。痩せた贅肉の少ない体の揉み心地は極上とは言い難いが、小さく可愛らしい尻に、幸福感を感じる。

「っ……♡は、離してっ」

腕からするりと彼が抜ける。触っても減るわけではないのだしと不満に思うが、あと三時間はこの姿の彼と一緒にいられるのだ。機嫌を損ねたくないと思い、再度抱きつくのは諦めた。
向かい合って沈黙すること数秒、きまりの悪くなったダリスが目を逸らす。

「…………えっちはダメだからね」
「そうだな。それはすまなかった。することは特に考えていなかったな……夕飯でも食べてくか?」

適当に声に出した提案に、ゆらりと彼の尻尾が揺れた。

「凝ったものは無理だが、ほどほどのものなら作れる」
「いいじゃん。食べてみたいかも」
「じゃあ決まりだな。手伝ってくれないか?」
「……。まあ……いいけど。おれ全然料理できないよ」
「大丈夫」

部屋の隅のキッチンスペースへ向かうと、ぱたぱたとダリスが追ってきた。彼はIHコンロと流し台、電子レンジに換気扇といった簡単な設備のキッチンを物珍しそうに眺め、勝手に引き出しを開け閉めする。鍋や包丁などを出し、いくらかの食材を取り出す。慣れない彼に長時間調理に付き合わせるのも良くないだろうし、パスタでも作るかと乾麺を取り出した。

「ねえ、これなに?」

暗所に保管してあったペットボトルを持ったダリスが問いかける。

「水だな」
「水は別であるじゃん、ラベル貼ってある未開封のやつ。これなんで封開いてんの?」

水というのは部分的に正しく、そして嘘であった。正しくそれは、ダリス汁__先日彼がここを訪問した時の残り湯で、ここ数日毎日温め直し白湯として飲んでいた代物だった。

「水だ」
「……なんかよく見るとこれごみ?ほこり?みたいなの浮いてるんだけど」
「早く閉まって手伝ってくれ。シーフードミックスを解凍したい」
「ねーぇ!なにこれ。教えてよ」
「強いて言うなら出汁みたいなもんだ」

ぷくーと頬を膨らませながら文句を言う彼が可愛くて、口が滑ってしまった。あまり納得していない様子の彼は、まじまじとボトルを見つめる。

「どういうやつ?」
「どういうやつ、とは」
「ほらなんかあるじゃん、こんぶとか、かつおとか」
「……」
「アイン?」
「…………」
「……えほんとにこれ何の水なの」
「もういいだろ」

言い訳が思いつかず沈黙で返事をしていると、ダリスがペットボトルの蓋を捻り、それに唇を近づけた。

「おいダリス?」
「ん……っ。……なにこれ。水……ではないけど出汁ってほどおいしくないよ」
「……」
「純粋に気になってるだけでぜったい怒んないから。これなあに?」

ただでさえ可愛い彼に、上目遣いと裸エプロンと甘い声色が重なって、胸が苦しくなる。観念した俺は、重い口を開いた。

「風呂水だ」
「ん?」
「お前が入った後の風呂の残り湯を貯めていた」

さあっと彼の表情が消える。

「……なんて?」
「だから。お前の風呂の残り湯を保存していただけだ」
「え……、え。……ッ」

口元に手を当てた彼はようやく事態を把握して、今度は顔を真っ赤にした。

「なにしてんの!?!?きもすぎ!!!!まってほんとに意味わかんない、なんで残り湯!?!!」
「……」
「さいあく!!!!!!今すぐ捨ててこれ、てかあと何本あるの!!!!?」
「一本だ」
「うそだぜったい!!!!!!!」

シンクの下を漁られ、ペットボトル五本分のダリス汁を回収される。目の前で破棄されどうしようもなく悲しかったが、三ヶ月間毎日セックスできるのだから、きっとまたダリス汁を手に入れる機会はあるのだろうと気を持ち直した。
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