悪役令息のやり直し~酷い火傷でゾンビといわれた俺、婚約破棄を言い渡されたけど幸せになってやります

葉月

文字の大きさ
6 / 29

第6話 ホの字なんですか?

しおりを挟む
「どこ行くんです? あっ、まさかとは思いますが、パイセンはティティスにえっ、えっちな悪戯しよと思っていませんかッ!」
「するかボケェ!」

 主人公アレスと真逆設定のリオニス・グラップラーは、自分でもびっくりするほど性欲がない。まだ16歳だというのに朝立すらしたことがない。ひょっとして自分は勃起不全なのではないかと疑心暗鬼に陥るほどだ。

「では、あからさまにがっかりしないでもらいたいです? 言い当てられてがっくりしたのかと勘ぐってしまうじゃないですか」
「アホかッ! 俺を先程のような下劣な連中と一緒にしてくれるな!」

 男なのにまったくこれっぽっちもスケベなことに興味を持てない自分が恐ろしくて、少し落ちていただけなんて言えるわけもない。

「この辺りでいいか」

 アルカミア魔法学校の敷地内は広く、山はもちろん美しい湖もある。週末になればボートに乗った恋人であふれ返ることも珍しくない。

「こんな茂みのなかで何をしようというのです? パイセンはやっぱり!?」
「しつこい! 怒るぞ!」
「……」

 ティティスってそんなに魅力ないんですかね? 落ち込んだティティスが平らな胸をペタペタ叩く。
 無いものがさらに潰れて無くなるぞと思ったが、紳士な俺は言わないでおく。

「水式による魔力円環は初心者には少し難しいんだよ。だから、はじめは感覚を掴むために落ち葉集めがおすすめだ」
「落ち葉集め、ですか?」
「この辺りに散らばった落ち葉を魔力だけで集めて円環。個体にならない分、力加減を間違えれば枯葉は少しずつ減っていく。水式と違って枯葉は一体ではないからな。よって魔力を込めすぎた箇所に集まった枯葉は耐えきれず粉砕。逆に弱ければ円環から弾かれて地面に落下する」

 水式による魔力円環を苦手とする者の多くは、力加減がわからないと答える者が多い。失敗すれば水浸しになるという強迫観念から力んだり、逆に力を弱めてしまう者が多いのだ。
 だからこそ、初心者は気軽にはじめられる落ち葉集めがベストってわけだ。

 これだとどの箇所に力が入り過ぎてるか、逆に魔力が足りないのかが一目瞭然となる。

「ますば手のひらを空にかざし、円を描くイメージで魔力を開放する」
「お手本を見せてくれるですか!」
「するとほら、こうやって魔力の磁場が発生するだろ。あとはこの円の中に風を捕まえるイメージでさらに魔力を込めていく、と」

 ほんの少し俺は魔力を練って風をイメージしたはずが、何故か光の輪が広がり風の妖精が集まってしまった。彼女たちは枯草色の髪を撫であげて悪戯な笑みを俺に向けた。

「げっ!?」
「ちょっ――グラップラーさんやり過ぎですよ!?」

 俺は軽く魔力円環の手解きをしてやる――つもりだったのだが……。

 悪戯な風の精霊たちによって巻き起こった巨大な竜巻は、辺り一帯を飲み込んでいく。
 光が収まると周囲の木々は根こそぎ葉をもがれ、気付けば辺りには見るも無惨な裸木が立ち並んでいた。

 さすが史上最強のラスボスというべきか。軽くやっただけでこの有様。
 というか、俺は何もしていない。
 風の精霊シルフィードたちが面白がって勝手にやってしまったのだ。

 さすが武闘派で名高いグラップラー家の血筋、というかラスボス。精霊に愛されたラスボスはわずかな魔力で恐ろしいほどの風を巻き起こしてしまう。
 しかも無詠唱。
 さらには見えるはずのない精霊が見えるという加護チート付き。

「ハゲ山になってしまったじゃないですか!」
「ティ、ティティスの練習用に集めてやったのだ!」
「絶対嘘ですッ! パイセンは先程『げっ』って言ってたじゃないですか! 力加減間違えたのバレバレですよ! というかなんなんですか、さっきのデタラメな強風は!」
「いや、あれはその、なんだ……」

 ああだこうだなんとか誤魔化しつつ、俺はティティスに練習するよう促した。

 はじめこそ苦戦していたティティスだったが、湖が黄昏色に染まる頃には、随分と上達していた。
 意外と飲み込みが早い。

「どうしてパイセンはここまでティティスに親切にしてくれるんです?」

 落ち葉を用いた魔力円環を行いながら、ティティスが背中越しに話しかけてきた。

「別に。ただ魔法に熱心な後輩に教示してるだけだ。特に理由はない」

 本来アレスが行うイベントを、先回りして俺がやってるだけ、なんてことは口が裂けても言えない。

「な、なんだよ?」
「それ本心です?」
「嘘をつく必要がどこにあるんだよ」

 とぼとぼと歩み寄ってきたティティスが、俺の顔をまじまじと見つめる。
 まさかとは思うが、何か気付かれたのか?

「ひとつお伺いしたいのですが、ひょっとしてパイセンはティティスにホの字だったりしませんか?」
「は? いや、全然しませんけど」
「嘘です!」
「嘘じゃねぇよ! なんで俺がティティスにホの字になるんだよ! そんな素振りこれっぽっちも見せてないだろ。そういうのを自意識過剰って言うんだよ!」
「田舎の両親が言っていました! 男性が女性に親切にする時にはえっち心があるか、その人にホの字の時だけだと! 何もしてこないパイセンにえっち心がないのは確認済みです。では、残る可能性はホの字だけじゃないですか! ―――痛ッ!?」

 くだらんこと言ってないで早く訓練を続けろと、俺はげんこつをお見舞いしてやった。
 しかし、その後もティティスはくどいくらいに、本当は自分のことが好きなのではないかと聞いてきたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令嬢は死んで生き返ってついでに中身も入れ替えました

蒼黒せい
恋愛
侯爵令嬢ミリアはその性格の悪さと家の権威散らし、散財から学園内では大層嫌われていた。しかし、突如不治の病にかかった彼女は5年という長い年月苦しみ続け、そして治療の甲斐もなく亡くなってしまう。しかし、直後に彼女は息を吹き返す。病を克服して。 だが、その中身は全くの別人であった。かつて『日本人』として生きていた女性は、異世界という新たな世界で二度目の生を謳歌する… ※同名アカウントでなろう・カクヨムにも投稿しています

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...