101回目の人生で、俺が初めて好きになった相手は破滅確定の皇女殿下!?

葉月

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第2話 今度こそは長生きしたい

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 一度目の人生は、極めて過酷なものだった。無一文で城から追放された俺は、空腹の体を引きずってある森にたどり着いた。

 子供の頃から剣の訓練と少しの魔法を学んではいたが、その力は今と比べるとはるかに劣っていた。

 魔物に立ち向かえる自信はあったが、現実は甘くはなかった。城での剣の訓練とはまるで違い、王子だからと手加減されることもなければ、そもそも相手は人間ではないのだ。

 予想外の出来事に翻弄され、気がつくと意識が朦朧としていた。
 そんな俺の前に、悠然と剣を構える男が現れた。

 彼の名前はアーロン。左目に大きな傷がある、中年の男性だ。
 俺に最初に生きる術を、勝つための剣を教えてくれた恩人でもある。

 かつてアーロンはどこかの国の騎士だったそうだが、詳しい経緯は聞いていない。彼の人生は複雑だったのだろう。騎士であったにも関わらず、冒険者に落ちるほどだ……。

 しかし、不幸中の幸いと言ってしまえば彼に失礼かもしれないが、俺たちの人生が似ていたことから、パーティを結成することになる。その後、アーロンと俺は二人で数々の依頼をこなし、様々な場所を訪れた。

 難解なダンジョンに挑戦し、エルフの森を守る使命に就いたりもした。彼とは語り尽くせないほどの冒険をした。そして、数年が経ち、俺たちは冒険者として大きな功績を積み重ね、Sランク冒険者に認定された。

 小国からの騎士団への誘いを受けた際、俺はアーロンにとっての長年の夢、再び騎士になるという夢が叶うことを心から喜んだ。しかし、そんな幸せも長くは続かなかった。俺たちは騎士として戦場に駆り出され、そして死んだ。

 たとえSランク冒険者であっても、数の暴力と帝国の聖騎士団にはかなわなかった。

 そして、気がつくと俺は18歳、父から王位継承権を剥奪された瞬間に戻っていた。

「ランス・ランナウェイよ! たとえ私の息子であっても、貴様の愚かな行為をこれ以上見過ごすわけにはいかん。この時をもって、貴様の王位継承権を剥奪する!」

 初めは何が起きているのか理解できなかった。俺を呆然とした表情で見つめる父は、「王位継承権を剥奪されるなんて思わなかったか、馬鹿者め」と、非常に満足げだった。

 周りを見渡しても、すべてがあの日のままだ。鍛え上げたはずの肉体は二回り以上も縮んでしまっていた。

 悪い夢のような気分に襲われた。もしくは、敵の幻術魔法にかかったのかもしれないと思った。

 頬をつねってみるが、痛みは確かにある。夢や幻術の場合、痛覚は鈍くなるはずだ。どういう現象がこれを引き起こしたのかは分からないが、俺は時を遡っているのだと確信した。

 これは神の与えてくれたチャンスだと、俺は神に感謝した。これで大切な恩人や仲間、そしてアーロンを救えると信じていた。俺がミスをしなければ、アーロンが俺を庇って犠牲になることはない。

 そのため、王家から追放された瞬間、俺はアーロンと出会ったあの森へと駆け出していた。

 もう一度やり直すんだ。今度こそ、アーロンと共に最高の人生を手に入れようと心に誓い。

「今行くぞ、アーロン!!」

 俺は心から喜び、抑えきれない感情が爆発した。


 あの森に、アーロンに救われた森に向かうんだ。そこでアーロンと再び出会い、旅をしよう。今回は前回よりも早くSランクに昇進できるかもしれない。

 そうすれば、他の国からの誘いもあるかもしれない。なければ、ただ自分がミスをしなければいいだけの話だ。

 高価な衣服を売り払い、手に入れた金で武具屋へ向かった。安価な服と十分な長剣を手に入れ、俺は森へと足を踏み入れた。

 しかし、どれだけ待ってもアーロンは現れなかった。俺は彼に会うことができなかったのだ。

 少し考えれば分かることだった。前回の人生では、俺は魔物に襲われて瀕死の状態だったのだ。その時、どこからともなくアーロンが英雄のように現れた。

 しかし、一度目の人生で鍛え上げていた俺は、肉体こそ華奢になっていたが、剣術の腕は前回とは比べものにならなかった。
 俺は、襲いくる魔物をすべて倒してしまっていたのだ。

 その結果、アーロンは現れなかった。おそらく、彼はどこか遠くから俺が魔物に襲われているのを目撃し、必死に助けに来てくれたのだろう。

 だが、今回は状況が異なっていた。俺はあまりにも強くなりすぎていたのだ。

 このようにして、二度目の人生では冒険者になることはなかった。一人で冒険者になる選択肢もあったが、心に大きな空虚感が広がっていたため、そんな気にはなれなかった。Sランク冒険者に昇進し、爵位を手に入れる必要もなかった。そんなのは虚しいだけだった。

 さまようように世界を旅した俺は、ある村にたどり着いていた。そこは石化病と呼ばれる死の病に襲われた村だった。

 その村で、石化病に苦しむ少女ククルと出会った。彼女の皮膚は魚の鱗のように石と化していた。

 俺は彼女を救うために、魔法医学の勉強を本格的に始めることにした。以前の冒険者時代に世界中を旅し、アーロンから緊急時のために薬草などの知識を教わっていたことが役に立った。

 そして、俺は石化病を治療する薬の開発に成功した。世界中で石化病に苦しむ人々を救いたいという思いから、俺はククルの名前を冠した論文を発表した。この論文は魔法医学界に衝撃を与え、世界中で石化病に苦しむ人々を救う手助けとなった。

 その後、俺はもっと多くの人々を救う方法を模索し、再び世界中を旅した。ある場所では人体発火現象である発火病に苦しむ人々を救い、別の場所では難病である冷凍病に苦しむ人々を救った。

 しかし、ある辺境の地を訪れた際、特殊な難病である魔力喰らいグールに苦しむ人々と出会った。この病気は無意識に他人の魔力を吸い取り、その結果、人々を死に至らしめるものだった。

 この病気の研究中に無理が祟り、俺は命を落としてしまった。

 そして、二度目の人生が幕を閉じ、三度目の人生が幕を開ける。繰り返される王位継承権の剥奪。

 何度目かの人生で、自らを剣帝と名乗る強者に出会い、俺はその弟子となった。その後も、勇者と出会ったり、賢者の弟子になったりと、どの人生も充実していた。どの人生も本当に楽しかった。

 しかし、問題が二つほどある。一つは長生きできないということ。もう一つはこの無限ループから抜け出せないということだ。

 101回もの人生を繰り返す中で、出会った人々が誰も俺を覚えていないことは辛く苦しい。技術や知識が増えても、心は満たされない。孤独感は人生を繰り返すたびに増していく。

 可能であるなら、この無限ループから脱出する方法を見つけたい。

 そして、もう一つ。
 繰り返される人生の中で、俺は結婚をしたことがなかった。結婚どころか、恋人ができたこともない。いつしか俺の心にはこんな気持ちが芽生え始めていた。

 彼女が欲しい!

 一度くらいは甘やかされて、のんびり過ごしてみたい。それから長生きして、年老いて、天寿を全うできたらどれほど幸せか。

 そう決意して、とりあえず賢者に会ってアドバイスをもらうために、飛空魔法で空を飛んだ。

「さて、東と北東の空を行くルートは使わない。北は、坑道がな……」

 以前の人生で北の坑道ルートを通った際、無事に賢者に会えたのだが、俺はあの坑道が苦手だ。

「まだ時間はあるし、帝国までは列車を使うか。そこから馬車で東に向かうルートも有りだな」

 そう決めて、チケットを購入して列車に乗り込む。あらかじめ持ち出していた資金があるので、当分は困ることはない。

 数日にわたる列車の旅を終え、現在はのんびりと馬車に揺られている。破産寸前の城から持ち出した宝石や金銭を車内で数えていると、突然馬車が大きく揺れて急停車した。

「な、なんだ!?」
「すまねぇ旦那! ひ、引き返しますぜっ」

 狭い森の小道で引き返そうとするも、小回りが利かず手間取っている様子だった。俺は一体何が起こっているのか、窓から身を乗り出した。

「あれは……帝国の聖騎士?」

 シュタインズ帝国のエンブレムが刻まれた豪奢な馬車を、騎乗した三人の聖騎士が取り囲んでいるのが見えた。

「何がどうなっている?」

 周りには血を流して倒れる燕尾服を着た男や、侍女らしき人々も見受けられた。

「臣下による反乱か……ん?」

 扉が開くと、夜を溶かしたような美しい黒髪の女性が悠然と馬車から降りてきた。その気品あふれる佇まいに、俺は見覚えがあった。

「レーヴェン・W・シュタインズ!?」

 シュタインズ帝国の第一皇女殿下。
 しかし、なぜ彼女がこんなところにいるのだ。それになぜ、自国の聖騎士に襲われている? さっぱりわからない。

「誰の差し金だ」

 艶っぽく色っぽい、だがそれでいて格好いい声音。その美貌と相まって、凄まじい存在感を放っている。高貴を具現化したような人物だった。

 レーヴェン皇女殿下はサッと地に倒れた臣下たちに視線を流し、眉をひそめる。美しさが相まって、とてつもなく恐ろしい表情となっていた。それと同時に、俺は彼女の姿に釘付けになっていた。一秒でも長く彼女の姿をこの瞳に焼きつけたい、そんな風に思ってしまった。

「セドリック!」

 騎士の一人が声を荒らげながら、こちらに鋭い視線を向けた。

「目撃者は一人とて生かしておくなッ!」
「はっ!」

 セドリックと名乗る男がこちらに向かって突進してきた。
 どうやら、俺たちを消すつもりのようだ。

「じょ、冗談じゃねぇぜ!?」

 御者台から飛び降りた男が茂みの奥へ逃げていく。

「ルータス! そっちは任せた」
「了解した」

 セドリックは仲間に御者を追わせ、自身はもう一人の目撃者、俺を排除しようとしているようだ。

「仕方ない」

 少し相手をしてやることにする。
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