101回目の人生で、俺が初めて好きになった相手は破滅確定の皇女殿下!?

葉月

文字の大きさ
6 / 35

第6話 辺境の地

しおりを挟む
「ここはかなり質素な村だね」
「辺境の村だからな」

 レーヴェンの別邸から程近い村は、華やかとは程遠く、どちらかと言えば陰鬱な雰囲気が漂っていた。

 その主な原因は、村人たちの無気力さだろう。
 大人も子供も年寄りも、みんなが外套を着ている。幼い子供たちもいるが、笑顔は見当たらない。
 この静まり返った村は、どこか不気味さを感じさせる。

 ここが有名な幽霊村ゴーストヴィレッジだと紹介されたとしても、ああなるほどと思わず手を叩いてしまうだろう。
 ここを通りかかった旅人が誤って教会に通報し、エクソシストが派遣されてくるのではないかと心配するほどだ。それと同時に、この雰囲気にはどこか懐かしさも漂っていた。嫌な懐かしさだ。
 寂れた村というか、死んだ村を通り過ぎると、同様に不気味な雰囲気をまとったお屋敷が見えてきた。

「………」

 とても失礼なことだとは理解しているが、えっ、冗談じゃないよね。ここがかの有名なシュタインズ帝国第一皇女の別邸なのか……? そう思ってしまうほど、敷地内はひどく荒れ果てていた。

 門は錆びついて片側が壊れ、ほとんど門としての役割を果たしていない。広大な敷地は雑草が繁茂し、放置されている。敷地の中央に設置された大きな噴水は枯れ果て、壊れてしまっていた。肝心の屋敷自体も、こう言っちゃ悪いが、控えめに言ってお化け屋敷みたいだった。

 とても、ここが彼女の別邸だとは信じられない。からかわれているのかもしれないと思い、彼女を横目に確認する。
 彼女は窓の外を深刻な顔で見つめていた。そりゃそんな表情にもなるわけだ。

 そもそも皇女殿下がこんな辺境の地に別邸を持つこと自体が不思議だ。
 帝都から離れた片田舎でのんびりバカンスを楽しむのなら分かるが、ここはそんな場所とは思えない。

 杜撰な管理体制にも限度というものがある。
 これでは元々廃墟だったと言われた方が納得だ。

「すまんな。このような場所で……」
「あ、いや……」

 言葉が詰まってしまい、どう返すべきか迷ってしまう。それでも、無言でいるわけにはいかない。

「えー……と」

 ヤバい。褒める点が見当たらないな……。

「窓がたくさんあるね!」
「家だからな」
「サ、サンルーフがあるぞ! 特別な馬車に付いているあれだ! ほら、あそこの屋根部分が開閉式になっていて開いてる!」
「あれは大きな穴が空いているだけだな」
「………っ。あ、あそこに露天風呂がある!」
「壁が崩れて浴室がむき出しになっているだけだな」
「うぅっ……」

 ちーん。

 という具合に、俺は完全に意気消沈。
 もう余計なことは口にしないことにしよう。

「すまんな。恩人に気を遣わせてしまって」
「そ、そんなことないよ」
「皇女がこのような場所に、そう言って笑ってくれても構わんのだぞ。いや、むしろ笑ってくれ」

 乾いた笑いが胸に突き刺さる。

「あの、なんで別邸ここに?」

 帝都からわざわざこのような辺境の地にやって来る理由がわからない。せめてもっと適切な場所が他にもあったはずだ。彼女は仮にも皇女殿下なのだから。

「……さあ、着いた」
「………あ、うん」

 聞こえていないふりをして、レーヴェンは馬車を下りた。しつこく尋ねるのは失礼だと思い、俺は口を閉ざすことにした。

「殿下っ!」

 馬車から降りると、執事らしき人物が屋敷から飛び出してきた。
 白髪を後ろに流した総髪スタイルの男性で、年齢はおおよそ60歳ぐらいだろうか。年の割にしっかりとした体つきをしていて、その立ち振る舞いから強さを感じさせる。若い頃はかなり腕のいい武人だったのだろう。

「これは……テレサッ!?」

 御者台のゴーレムに疑問符を浮かべたものの、執事はすぐにレーヴェンに抱きかかえられた少女に目を向けた。

「一体何があったのです!」
「詳しい話はあとだ」

 レーヴェンは屋敷から出てきたメイドの一人にテレサを預けた。濡羽色の髪を後ろで束ね、銀縁の眼鏡がよく似合うメイドだ。四人のメイドの中では最年長と思われるが、それでも歳はおそらくレーヴェンと同じくらいだろう。

「ポーションがあれば飲ませてやってくれ。ここへ来る途中、パウロたちにやられたのだ」
「「「「「!?」」」」」

 皆が一様に驚いた顔を見せたが、それもほんの一瞬。彼らはあらかじめそうなることを予測していたかのように、表情を引き締めた。まるで戦場に向かう戦士のようだった。

「そちらの御方は」
「元ランナー国の第一王子、ランスだ」
「「「「「!?」」」」」

 皇女が他国の元王子を連れてきたことが、彼らにとっては仲間の従者に裏切られたことよりも驚いたのだろう。一斉に視線が俺に向けられた。

「襲われていたところでランスに出会った。テレサの応急処置もランスが行ってくれた」
「感謝いたします、ランス殿下」

 恭しく頭を下げる執事に続き、侍女たちも頭を下げた。

「ランスは王家を追放された身だ。もう王子ではない」
「なっ!?」

 眼球が飛び出るくらいの衝撃だったようだ。

「あは、はははっ」

 照れ笑いで誤魔化しておく。

「とりあえず中へ、ランス殿も」
「こんなところだ、遠慮はいらん」

 貴族であれば、ましてや王族であれば、このようなところと口にする者もいるだろう。
 しかし、俺は野宿ばかりの生活も経験してきた。お化け屋敷くらい問題ない。むしろ雨風しのげるだけでもありがたい。

 それに、幼い頃から憧れていた女性に招かれたのなら、どんな場所でもかまわない。

「では、お言葉に甘えて」

 レッツゴーだ!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~

女譜香あいす
ファンタジー
 数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。  聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。  だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。  そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。  これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。

追放された悪役令嬢、前世のスマホ知識で通信革命を起こしたら、王国に必須の存在になっていました

黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢エリザは、婚約者の第二王子アルフォンスに身に覚えのない罪を着せられ、満座の中で婚約破棄と勘当を言い渡される。全てを奪われ、たった一人で追放されたのは、魔物が跋扈する寂れた辺境の地。 絶望の淵で、彼女の脳裏に蘇ったのは、現代日本で生きていた前世の記憶――人々がガラスの板で遠くの誰かと話す、魔法のような光景だった。 「これなら、私にも作れるかもしれない」 それは、この世界にはまだ存在しない「通信」という概念。魔石と魔術理論を応用し、彼女はたった一人で世界のあり方を変える事業を興すことを決意する。 頑固なドワーフ、陽気な情報屋、そして彼女の可能性を信じた若き辺境伯。新たな仲間と共に、エリザが作り上げた魔導通信端末『エル・ネット』は、辺境の地に革命をもたらし、やがてその評判は王都を、そして国全体を揺るがしていく。 一方、エリザを捨てた王子と異母妹は、彼女の輝かしい成功を耳にし、嫉妬と焦燥に駆られるが……時すでに遅し。 これは、偽りの断罪によって全てを失った令嬢が、その類まれなる知性と不屈の魂で自らの運命を切り拓き、やがて国を救う英雄、そして新時代の女王へと駆け上がっていく、痛快にして感動の逆転譚。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...