悪魔と契約した僕は伝説の『ブルオーガ』を右手に宿し、やがて世界最強。

葉月

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第2話 エッチの代償

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「おかしいの~、妾の超絶テクを持ってすれば人間など簡単に昇天して召されるのじゃが……」

 ……ぼんやりと消えそうな意識の中、困ったような悪魔の声が聞こえる。
 果てて天を仰ぐ僕の途切れそうな意識に、昇り始めた太陽が燦々と降り注ぐ。

 そう、僕は一晩中悪魔に体を弄ばれたのだ。

 僕は安らかに死にたいと願い悪魔を召喚をしたのに……なんでこんなことになっているんだ。

 生まれたての小鹿のようにガクガクと震える体に力を込めて、上体を起こして悪魔お姉さんに視線を向けた。

 悪魔お姉さんは僕に背を向ける形で、ぶつくさと何かを口にしながら考え込んでいる。
 その隙に、僕は悪魔お姉さんに無理やり剥ぎ取られた衣服を着ることにした。

 ド派手な黄色を基調としたセットアップ、ノースリーブにハーフパンツとサスペンダーは装着せずに垂れ下げて着崩すのが僕流だ。

 着替え終えた僕を、悪魔お姉さんはチラッと見て、首を傾げながら脱ぎ散らかした衣服をまとい始めた。

 下着を……背を向けてパンティを穿く悪魔お姉さんが妙にエロいが、僕が反応することはない。
 当然だよ。

 一晩中……だったんだから。

 それにしてもなんでこんなことになっているんだ。
 いや、まぁ……そのなんだ、男として初めての貴重な体験ができたことは素直に有り難い。

 それも相手は……悪魔とは言え〝超〟がつくほどの美少女だ。
 推定年齢は18歳というところだろうか?
 ジャミコと同い年だが……全然、これっぽっちも似ても似つかないまったくの別物だ。

「なぜじゃ、なぜお前さまは快楽死せんのじゃ!」

 着替え終えた悪魔お姉さんは苛立ちを隠せずに詰め寄ってくる。

「えっ……!? ああ~あの、凄く気持ち良かったですよ」
「そう言うことを言っておるのではない! お前さまが妾の超絶テクで快楽死しなければ、契約は果たされず妾が悪魔界に還れんではないかっ!」
「契約……? なんのことですか?」
「惚けるでないわっ! お前さまがエッチがしたい、快楽の中で死にたいと妾を喚び出したのじゃろ!」
「…………あっ!?」
「あっ、ではないわっ!」

 まさか……あのとき呟いた僕の言葉がそのまま悪魔との契約内容になってしまったのか!?
 困ったな。
 事故みたいなものとは言え、とんでもない契約を悪魔と交わしてしまったぞ。

 要は僕がエッチ中に死ななければこの悪魔お姉さんは一生僕の傍から離れられないという訳だ。
 自分で喚び出しておいて言うのもなんだけど……とんだスケベな悪魔がいたもんだ。

「とにかく……今日はもう無理そうじゃな」
「はい。もう限界です。1ミクロンも反応しません」

 恨めしそうにジト目で僕を見るお姉さん。

「……しばらくかかりそうじゃな。お前さまも覚悟をしておくのじゃな」
「は……!? これから毎晩ですかっ!?」
「当然じゃっ! 妾一人では無理そうだった場合は……そうじゃな、この世界のありとあらゆる女に協力させるしかあるまい」

 悪魔お姉さんは僕にとんでもないことを告げた。
 僕がエッチ中に死ぬために、ハーレムを築き上げると言うのだ。
(そこまでは言っていない)

 だけど待て、僕は村の掟でこの村からは出られない。
 もしも許可なく森を出れば、二度と村には入れてもらえない仕来たりだ。

 それにこんなことがジャミコに知られたら……僕は殺されるかもしれない。

 ジャミコは村でも最強と名高い女戦士だ。
 シャーマンとしてはからっきしダメだが、生まれ持ったその怪力はレッドドラゴンをも素手で殺してしまうほどだ。

 バレたら不味い!
 僕は死ぬために悪魔を呼び出したから、別に死ぬことは怖くない。
 ただ、痛いのは死んでも嫌だ!

 僕は痛み無く死にたいんだ。
 僕が悪魔お姉さんとこれからのことを相談していると、不意に背後の茂みがカサカサと音を立てる。

 嫌な予感しかしない僕が音の方に振り返ると……〝ホブゴブリン〟――ジャミコがじっとこちらを見ていた。

「ちょっとあんた誰よ? 私のダーリンと何をしているのよ?」
「なんじゃこの化物は? 最近の〝ホブゴブリン〟は人の言葉を話すのか?」

 不味い!? なんてことを言うんだ!
 それはジャミコにとって禁句の言葉だ。

 数年前、村の男が酔った勢いでジャミコを〝ホブゴブリン〟と罵ったことがあったんだ。
 その翌日――男は森の中で無残な撲殺体で発見された。

 誰もがジャミコの仕業だろうと疑惑を向けたのだが、証拠がなく魔物に殺されたということになった。

 ジャミコは……この化物はマジでヤバいんだよ!

「いっ、いいい、いまなんっつったぁぁああああっ!? ダーリンの前で私をホブゴブリンとバカにした貴様はただでは済まさない!」
「ダーリンじゃと? なんじゃお主ホブゴブリンと交際しておるのに、妾とエッチをして死にたかったのか?」
「ちょっ……!?」

 悪魔お姉さんがジャミコの前でとんでもないことを口走ってしまった。
 僕が恐る恐るジャミコに視線を向けると、進化していた。

 ジャミコは〝ホブゴブリン〟から燃え盛る炎の”レッドホークホブゴブリン〟に、超絶覚醒進化を遂げていたんだ。

「裏切ったなぁぁあああああああああああああっ!!」

 ジャミコの怒りの咆哮が森中に響き渡り、留り木で羽を休めていた小鳥たちが一斉に飛び去って行く。

 ポエマー族にはこういうことわざがある。
 地震雷火事ジャミコ――これらが起こった際には速やかに安全な場所に避難しなさいと僕は教えられていた。

 なので走った。
 悪魔お姉さんの手をしっかりと握り締めて、化物から少しでも遠くに逃げるため、森の中を駆け抜けた。

「なんじゃそんなに血相を変えて」
「バカなんですかっ!? 今のジャミコを見たでしょう? お姉さんも僕も殺されますよ!」
「はははは、人間ごときに――」

 ――ズドーンッ!!

 手を繋ぎ走る僕たちの背後から……大木が猛スピードで通り過ぎて、木々をなぎ倒した。
 その光景に絶句する悪魔お姉さん。

「なんじゃあの化物はっ!?」
「だから不味いんですよ! それよりお姉さん悪魔なんだからなんとかして下さいよ!」
「無茶言うでないわっ! 妾のお箱は性による誘惑じゃ、戦闘面を期待されても困るわ!」

 自慢げに戦えないと大きな胸を張る悪魔お姉さん。
 だけど……そんな呑気なことを言っている場合じゃない。

 ジャミコが垂直に手を振り上げ脚を振り上げて、異次元級の速度で追いかけてくるんだ。
 あっと言う間に僕たちを追い越して振り返るジャミコ。

 立ち尽くす僕たちに逃げ道はもうない。
 生き残る為にはジャミコを退治するしかないが、はっきり言って不可能だ。

 村で一番の長生きじいさまが昔言っていた。
 ジャミコはおそらく世界で一番強いと。
 と言うのも、昔この森に魔王軍の幹部と名乗る魔族がやって来たことがあった。

 なんでも勇者パーティーが束になっても勝てなかったほどの魔族だという。
 そんな魔族を、魔王軍幹部を……ジャミコは12歳の時にワンパンで殺してしまったらしいのだ。

 そんな怪物が僕たちの前に立ちはだかっている。
 一撃でももらったら間違いなく即死だ!

「私をコケにして、乙女の純情を踏みにじった貴様らは絶対にぶち殺してやるっ!!」

 吠えただけだ……吠えただけでジャミコの立つ地面が巨大なクレーターを作り上げる。

 僕はこの絶対絶命のピンチから逃れるために、右手をサッと振るい弧を描く。
 すると、赤黒い幾何学的な模様が浮き上がる。

 僕が行ったのは死霊憑依と呼ばれるシャーマンが有する力の一つ。
 死霊憑依は喚びだした霊の特技や能力を体の一部に付与することで、それを自分の力に変えることが可能なんだ。

 僕が黄泉の国から喚び出したのは享年88歳で亡くなったジャミコの祖母だ。
 ジャミコが祖母の子守唄を聞くと気絶したように眠ってしまうことは、村の者なら誰もが知っている。

 ジャミコに勝つことは不可能でも、逃げることなら可能だ。

 僕はジャミコの祖母を喉に肉体憑依させると、懐かしい歌声を響かせた。

「ねーむれーねーむれ、良い子はねんねしなー♫」

 ――バタンッ!!

 1小節しか歌っていないというのに、ジャミコのバカでかい図体は地面に沈んだ。

 なんて単純な脳ミソなんだ……本当にホブゴブリンと変わらないじゃないか。

「な、なんなんじゃこの化物は?」
「お姉さん、そんな悠長なことを言っている場合じゃないですよ! 一刻も早くここから離れないとジャミコが目を覚まします」

 まるで未知との遭遇を果たしたように、悪魔お姉さんが喉を震わせている。
 僕はそんな悪魔お姉さんにすぐにここを離れようと提案し、この森を、村を離れることにした。



 これが僕と悪魔お姉さん……リリスとの出会いであり、快楽死をする為の長い、長い過酷な旅の始まりだった。
 それは同時に、世界最強の女戦士ジャミコから逃れるための逃亡の日々でもあったのだ。
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