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7番目の婚約者の元婚約者
第71話
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マックスが指示を出している間、クリスティーナは何気なく中庭に視線をやった。様々な花が咲き乱れ、頑強な城にまさかこんな場所があるとは想像していなかった。
「城に似合わず、素晴らしい庭でしょう」
「帝都でもなかなか見られない美しさですわ。これは体の弱いご令嬢のために?」
「そうです。娘は薬が手放せず、遠くへ外出ができないくらい体が弱いのです。せめて好きなものに囲まれてもらいたくて、腕のいい庭師に来てもらって手入れをしておるのです」
中庭を見ているとそこにお茶会の準備を始めた、シキとサラがいた。
二人の距離は近く、穏やかで親密な雰囲気に少し感情が揺れた。
「シキとは知り合いでいらっしゃるのね?」
「ええ、そうです。シキとはご婚約されたそうですね、殿下。おめでとうございます」
「閣下、ありがとうございます。もう七度目ですけどね」
「殿下も大変ですな」
「率直に言ってくださるのは閣下くらいですよ」
「私はどうも隠し事が苦手で。隠し事ついでに……殿下、ご気分を悪くされた申し訳ございません」
「何のことでしょう?」
「ご存じだとは思いますが、我が娘とシキは婚約している時期がありました」
クリスティーナは微笑みを崩さなかった。
ひどく動揺したが、皇女としての振る舞いが身に沁みついているせいか表に出すことはなく、そんな自分に安堵した。
「身分が釣り合っている上、彼は会えば病弱の娘に真摯に接してくれていましたからね、良い夫婦になると思っておったのですが……。帝都で天才機械士として活躍し、多忙を極めていた彼と辺境伯領にいる娘とでは、続けていくのが難しかったのでしょうなぁ」
まさかシキの元婚約者に出会うとは。
この時ばかりは、もっと調べればよかったと思った。
「娘は婚約者に会えぬことに耐え切れず、婚約破棄を申し出ましてな。武官の血が流れているとはいえ、娘も普通の令嬢だったのだと思ったものです。彼もすんなりと受け入れました。もう終わったことゆえ、どうか気になさらないでいただきたい」
「ええ、もちろんですわ」
そう言いながらも内心動揺が収まらない。
クリスティーナは無意識に、首元にあるペンダントを一撫でした。ひやりとした冷たさは、心をより粟立たせる。
その時、侍女がノックとともに入って来た。
「失礼いたします。お茶会の準備が整ったようです」
「そうか。殿下をご案内して差し上げて」
「かしこまりました」
「殿下、夕食もご一緒していただけますかな?」
「もちろんです。お気遣いいただきありがとうございます」
クリスティーナは軽く会釈して、侍女に先導されて応接室を出た。
侍女に気づかれないように小さく深呼吸をする。
少し廊下を進み案内された中庭に足を踏み入れると、微笑み合っていたシキとサラがこちらを見た。
(ああ、こういう二人をお似合いというのね)
「城に似合わず、素晴らしい庭でしょう」
「帝都でもなかなか見られない美しさですわ。これは体の弱いご令嬢のために?」
「そうです。娘は薬が手放せず、遠くへ外出ができないくらい体が弱いのです。せめて好きなものに囲まれてもらいたくて、腕のいい庭師に来てもらって手入れをしておるのです」
中庭を見ているとそこにお茶会の準備を始めた、シキとサラがいた。
二人の距離は近く、穏やかで親密な雰囲気に少し感情が揺れた。
「シキとは知り合いでいらっしゃるのね?」
「ええ、そうです。シキとはご婚約されたそうですね、殿下。おめでとうございます」
「閣下、ありがとうございます。もう七度目ですけどね」
「殿下も大変ですな」
「率直に言ってくださるのは閣下くらいですよ」
「私はどうも隠し事が苦手で。隠し事ついでに……殿下、ご気分を悪くされた申し訳ございません」
「何のことでしょう?」
「ご存じだとは思いますが、我が娘とシキは婚約している時期がありました」
クリスティーナは微笑みを崩さなかった。
ひどく動揺したが、皇女としての振る舞いが身に沁みついているせいか表に出すことはなく、そんな自分に安堵した。
「身分が釣り合っている上、彼は会えば病弱の娘に真摯に接してくれていましたからね、良い夫婦になると思っておったのですが……。帝都で天才機械士として活躍し、多忙を極めていた彼と辺境伯領にいる娘とでは、続けていくのが難しかったのでしょうなぁ」
まさかシキの元婚約者に出会うとは。
この時ばかりは、もっと調べればよかったと思った。
「娘は婚約者に会えぬことに耐え切れず、婚約破棄を申し出ましてな。武官の血が流れているとはいえ、娘も普通の令嬢だったのだと思ったものです。彼もすんなりと受け入れました。もう終わったことゆえ、どうか気になさらないでいただきたい」
「ええ、もちろんですわ」
そう言いながらも内心動揺が収まらない。
クリスティーナは無意識に、首元にあるペンダントを一撫でした。ひやりとした冷たさは、心をより粟立たせる。
その時、侍女がノックとともに入って来た。
「失礼いたします。お茶会の準備が整ったようです」
「そうか。殿下をご案内して差し上げて」
「かしこまりました」
「殿下、夕食もご一緒していただけますかな?」
「もちろんです。お気遣いいただきありがとうございます」
クリスティーナは軽く会釈して、侍女に先導されて応接室を出た。
侍女に気づかれないように小さく深呼吸をする。
少し廊下を進み案内された中庭に足を踏み入れると、微笑み合っていたシキとサラがこちらを見た。
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