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再就職、没落令嬢辺境へ
第20話
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「実はカスタリアの城下町では不思議なことが時折起こっていてね。イシュカも見たあの子なんだが、勝手に花束を持って行ってしまうんだ」
「花束を。でも、店のものじゃないって言っていましたよね」
「そうなんだ」
「じゃあ、どこの……」
「それはね、ここなんだ」
殿下に連れられて来た場所には、三体の竜をかたどった立派な石像が立っていた。
「これはもしかして……竜神様ですか?」
「そうだ。ここは町の中心部に建てた竜神を祀る石像なんだ。この地にいにしえから伝わって聞いている伝説なんだが、生命が生きていくのに必要な水が豊かなのは、竜神のおかげだと言われている。だから、日々祈りを捧げる人も多い。竜神への捧げものとして花束を捧げるんだ」
「だから石像の足元には花束がいくつもあるんですね」
色とりどりの花束が捧げられているけれど、一部の場所はぽっかり空いていた。
「もしかしてここは……」
「きっとあの子が持ち出したところだろう」
店で売られている花束ではなく、竜神様に捧げられている花束を盗んだのか。
どういう理由でそれをしているのかは分からないけれど、随分罰当たりなことだ。
「突然現れて花束盗んでいくんだが、あの通り空を飛ぶだろう? 捕まえられた試しはないみたいなんだ」
「飛行術は魔力が必要な魔術なのに、どうして小さいあの子にできるのでしょうか」
魔術なんて貴族クラスではないと身につけられないものだ。
辺境の地であるカスタリアで貴族と言えば、トレムス辺境伯家を筆頭にその血族の貴族だろうから、貴族の子弟だった場合、すぐに調べれば分かるはずなんだけど。
「実は何も分からないんだ。どこの家の者か、どこに住んでいるのか。あの子に関しては分からないことだらけなんだよ」
「そうなんですか。不思議ですね」
不思議と言えば、あの子、私と会話ができていたことに驚いていた。
どうしてあんなに驚いていたんだろう。
「あの子のことを考えていても仕方がないな。イシュカ、当初の目的通り町を案内しよう」
「そうですね。よろしくお願いいたします」
私たちは城下町を改めて歩き出した。
騒動の後は平和そのもので、何事もなかったように町の人たちはのんびりとお祭りを楽しんでいる。
城下町を見ていると、ここには生活必需品が集まっているようで、カスタリアの経済の中心地だと分かる。
ポーションを作りたいから器具が売っているお店を見たいのだけど、今のところ見当たらない。
王都ではいくつかお店があったのだけど、カスタリアでは難しいのかしら。
「イシュカ、どうした? 何か探している? 見たい店があれば案内するよ?」
きょろきょろしている私に気が付いたのか、殿下が顔を覗き込んできた。
「よろしいのですか?」
「もちろん」
「では、ポーションを作るための器具が売っているお店はありますか? 水術師として働くためにはやはり器具が必要だと思っていまして」
「花束を。でも、店のものじゃないって言っていましたよね」
「そうなんだ」
「じゃあ、どこの……」
「それはね、ここなんだ」
殿下に連れられて来た場所には、三体の竜をかたどった立派な石像が立っていた。
「これはもしかして……竜神様ですか?」
「そうだ。ここは町の中心部に建てた竜神を祀る石像なんだ。この地にいにしえから伝わって聞いている伝説なんだが、生命が生きていくのに必要な水が豊かなのは、竜神のおかげだと言われている。だから、日々祈りを捧げる人も多い。竜神への捧げものとして花束を捧げるんだ」
「だから石像の足元には花束がいくつもあるんですね」
色とりどりの花束が捧げられているけれど、一部の場所はぽっかり空いていた。
「もしかしてここは……」
「きっとあの子が持ち出したところだろう」
店で売られている花束ではなく、竜神様に捧げられている花束を盗んだのか。
どういう理由でそれをしているのかは分からないけれど、随分罰当たりなことだ。
「突然現れて花束盗んでいくんだが、あの通り空を飛ぶだろう? 捕まえられた試しはないみたいなんだ」
「飛行術は魔力が必要な魔術なのに、どうして小さいあの子にできるのでしょうか」
魔術なんて貴族クラスではないと身につけられないものだ。
辺境の地であるカスタリアで貴族と言えば、トレムス辺境伯家を筆頭にその血族の貴族だろうから、貴族の子弟だった場合、すぐに調べれば分かるはずなんだけど。
「実は何も分からないんだ。どこの家の者か、どこに住んでいるのか。あの子に関しては分からないことだらけなんだよ」
「そうなんですか。不思議ですね」
不思議と言えば、あの子、私と会話ができていたことに驚いていた。
どうしてあんなに驚いていたんだろう。
「あの子のことを考えていても仕方がないな。イシュカ、当初の目的通り町を案内しよう」
「そうですね。よろしくお願いいたします」
私たちは城下町を改めて歩き出した。
騒動の後は平和そのもので、何事もなかったように町の人たちはのんびりとお祭りを楽しんでいる。
城下町を見ていると、ここには生活必需品が集まっているようで、カスタリアの経済の中心地だと分かる。
ポーションを作りたいから器具が売っているお店を見たいのだけど、今のところ見当たらない。
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「イシュカ、どうした? 何か探している? 見たい店があれば案内するよ?」
きょろきょろしている私に気が付いたのか、殿下が顔を覗き込んできた。
「よろしいのですか?」
「もちろん」
「では、ポーションを作るための器具が売っているお店はありますか? 水術師として働くためにはやはり器具が必要だと思っていまして」
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