王宮追放された没落令嬢は、竜神に聖女へ勝手にジョブチェンジさせられました~なぜか再就職先の辺境で、王太子が溺愛してくるんですが!?~

結田龍

文字の大きさ
25 / 140
竜神に聖女に認定されちゃった……

第25話

しおりを挟む
 カスタリアの城下町を散策した翌朝。
 私は城から馬を駆って近くにある丘にやってくると、目の前の景色に目を奪われた。


「わぁ、きれい!」


 目の前に広がっているのは、青々とした森林と透き通るような川や泉。
 王都ではなかなかお目にかかれない、カスタリアの自然豊かな大地だった。
 はぁ、癒される~。
 人間は自然の前ではちっぽけ、とはまさにこのことよね。
 今日は用意してもらった馬・フランに乗って、一人でここにやってきた。今日は周辺を回る予定だ。
 殿下が一緒に来たがっていたけれど、残念ながらメルヴィン様の許可は下りず、泣く泣くお仕事をされていた。
 さすがに二日連続は許されなかったみたい。


「北側は山に囲まれていて、南側は平野。カスタリアは天然の要塞なのね。あの川はおそらくアケロース川」


 貸してもらった地図を広げて確認する。
 地図で見るとアケロース川はカスタリアで最も大きな川のようだ。
 雄大だが氾濫すると少し怖いと感じる。
 あと泉がいくつもあるようで、水の性質を調べるなら泉の方がいいかもしれない。


「今日は近くの泉に行ってみよう。フラン、お願いね」


 フランに声をかけると、ヒヒン、と良い声を上げて駆け出した。
 今から行く泉は地図上では城からもっとも近い泉で、城から見ると方角的には東にある。
 丘を登ってきた道と違う道を進んでいくとやがて森に入った。


「あれ? おかしいわね……」


 森に入ってから地図の通り進んでいるつもりなんだけど、やけに道が曲がりくねって目的の方向とは違うように感じる。
 森で迷ったら厄介なんだけど、どうしようかしら。
 悩みつつも進んでいると、ゴツゴツとした岩が増え始め、その向こうに泉が見えた。


「あ、泉だわ! 良かった。迷ったかと思った」


 見つけた泉に近づくにつれ、白い靄がゆらゆらと天へ向かって伸びている。


「あれ、白い靄が……この泉は一体……?」


 私はフランから降りると泉に近づき手を入れた。
 水に触れた部分からじんわりと熱が伝わってくる。


「あったかい。この泉は温泉なのね。温泉だったら領民が使ってもおかしくないんだけど。ここにあることを知らないのかしら」


 辺りを見回しても人の気配はなく、もちろん施設があるわけでもない。
 お肌がつるつるになりそうな温泉なのに、なんだかもったいない。
 しかし、この泉はどんな成分なのか。
 水術師としては気になるので、さっそく泉の水の成分の鑑定をすることにする。


水解析アクアアナライズ


 私は泉に意識を集中し、水質鑑定のスキルを発動した。
 手のひらにほわりと光が集まり、手のひらを泉へと向けた。
 手のひらを介して、泉の水の情報が集まってくる。


「……この泉の水の成分には浄化の効果がある。それと毒の無効化、再生するための循環の正常化、回復の高速化……水単体だけでこれだけの力があるのね!」


 すごい、私がこれまで鑑定してきた水の成分の中でもトップクラスの効果を持つ水。
 稀にみる水だ。こんな水に出会えるなんて! 





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女は王子たちを完全スルーして、呪われ大公に強引求婚します!

葵 すみれ
恋愛
今宵の舞踏会は、聖女シルヴィアが二人の王子のどちらに薔薇を捧げるのかで盛り上がっていた。 薔薇を捧げるのは求婚の証。彼女が選んだ王子が、王位争いの勝者となるだろうと人々は囁き交わす。 しかし、シルヴィアは薔薇を持ったまま、自信満々な第一王子も、気取った第二王子も素通りしてしまう。 彼女が薔薇を捧げたのは、呪われ大公と恐れられ、蔑まれるマテウスだった。 拒絶されるも、シルヴィアはめげない。 壁ドンで追い詰めると、強引に薔薇を握らせて宣言する。 「わたくし、絶対にあなたさまを幸せにしてみせますわ! 絶対に、絶対にです!」 ぐいぐい押していくシルヴィアと、たじたじなマテウス。 二人のラブコメディが始まる。 ※他サイトにも投稿しています

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

日向はび
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!

六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。 家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能! 「ここなら、自由に生きられるかもしれない」 活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。 「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」

国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯
恋愛
 聖女は217歳!?  ルティシア国の聖女であるニーナは、不老不死の存在として国を200年間支えていた。  ルティシア国境のみに発生する瘴気の浄化や人々の治癒。  ニーナは毎日人々のために聖女の力を使い続けていた。  しかし、ある日突然王子に国外追放を言い渡される。  それも聖女の座を恋人に渡したいという馬鹿らしい理由で……  聖女の力を奪われ追放されたニーナは、隣国セレンテーゼ帝国の大賢者に弟子入りを決意する。 「力が使えないなら知識をつければいいわけよ」  セレンテーゼの大賢者フェルディナンドはルティシア嫌いで有名だったが、なぜかニーナには優しくて…… 「貴女の目を見れば誠実な人であることくらい分かります」  フェルディナンドのもとで暮らすことになったニーナは、大賢者の弟子として街の人々の困りごとを助けていく。  人々の信頼を勝ち取り、ついには皇帝陛下にも認められるニーナ。  一方、ルティシアでは新聖女が役目を果たせず国が荒れ始めていた。  困り果てた王子はニーナの力を借りようとするが……  ニーナを追放したルティシア、受け入れたセレンテーゼ。  それぞれが異なる問題を抱え、やがて聖女の力に翻弄され始める。  その裏には糸を引く人物がいるようで……。 ※ふんわり設定です

偽聖女と蔑まれた私、冷酷と噂の氷の公爵様に「見つけ出した、私の運命」と囚われました 〜荒れ果てた領地を力で満たしたら、とろけるほど溺愛されて

放浪人
恋愛
「君は偽物の聖女だ」——その一言で、私、リリアーナの人生は転落した。 持っていたのは「植物を少しだけ元気にする」という地味な力。華やかな治癒魔法を使う本物の聖女イザベラ様の登場で、私は偽物として王都から追放されることになった。 行き場もなく絶望する私の前に現れたのは、「氷の公爵」と人々から恐れられるアレクシス様。 冷たく美しい彼は、なぜか私を自身の領地へ連れて行くと言う。 たどり着いたのは、呪われていると噂されるほど荒れ果てた土地。 でも、私は諦めなかった。私にできる、たった一つの力で、この地を緑で満たしてみせる。 ひたむきに頑張るうち、氷のように冷たかったはずのアレクシス様が、少しずつ私にだけ優しさを見せてくれるように。 「リリアーナ、君は私のものだ」 ——彼の瞳に宿る熱い独占欲に気づいた時、私たちの運命は大きく動き出す。

「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される

沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。 「あなたこそが聖女です」 「あなたは俺の領地で保護します」 「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」 こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。 やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...