『ねえ、彼女いるんでしょ? だからこそ、奪いたくなったんだよ?

夜道に桜

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最終話

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 きらびやかなフラッシュの嵐の中、私は微笑む。

 純白のドレス、繊細なジュエリー、完璧に作り込まれた“女優・白瀬真冬”。

「おかえりなさい、白瀬さん!」

「芸能界復帰、ファンも待ってました!」

「今回の主演作、かなり攻めた役柄でしたが……どうでした?」

 マイクを向けられ、私はにこりと笑う。

「最初は不安もありましたけど……でも、私は“役者”なので。与えられた役を全力で生きるだけです」

 控えめだけど芯のある声。目線の配り方、角度、仕草――
 全部計算してる。全部“演技”。

 だって、これが芸能界で生きるってことだから。

 昔よりも、私はずっと“うまくなった”。



 控室に戻ると、彼が待っていた。

 黒いスーツに身を包み、私のスケジュール表と水のペットボトルを持って立つ“マネージャー”。

「真冬さん、お疲れさまです。会見、完璧でした」

 丁寧に頭を下げるその姿は、周囲のスタッフからも信頼されてる。

 “信頼できる優秀なマネージャー”――
 それが、今の成瀬和真の“役割”。

 私はドアを閉めてから、ゆっくりと彼のほうへ歩み寄る。

「ねえ……私、また褒められちゃった。どう思う?」

「……真冬さんはすごいです。誰も、あの演技には敵わない」

「ふぅん……」

 私は彼の前髪を指ですくい上げる。
 そして、髪をつかみ、そのままグッと引き寄せた。

 彼の瞳が微かに揺れる。だけど、抵抗はしない。

「ねえ、私が昔、何してたか……みんな知らないよね」

「……はい」

「あなたは知ってるのに。全部、黙ってくれてて、えらいね」

 そう言って、私は彼の頬にキスを落とす。

 演技じゃない。
 これは、“ごほうび”。

「ねえ、成瀬くん」

「……はい」

「次のスケジュール、明日朝の番組と、午後からラジオ収録だっけ?」

「はい。衣装合わせもあるので、10時入りで」

「ん、了解」

 そう言って、私は彼のネクタイを引き寄せ、耳元で囁く。

「ちゃんと、私だけ見ててね。……ほかの女の名前、口にしたら、殺すよ?」

「……はい」

 彼の声は小さく震えていた。



 彼のスマホは、今も私が管理している。

 彼の連絡先、交友関係、SNS――全部、監視下。

 だって、飼ってるオモチャが逃げたら困るでしょ?

 元カノ? ああ、いたね。
 この間、偶然すれ違ったら、目も合わせてこなかった。

 触んなって拒絶されてから、彼女はもう成瀬の“思い出”にもなってない。

 私はね、あの子より上に立ちたかったわけじゃないの。
 ただ、奪って、壊して、私だけのものにしたかっただけ。

 欲しいって思ったら、手に入れる。
 そうやって生きてきた。



 控室の鏡越しに映るのは、完璧な私。

 白瀬真冬、復帰作大成功。
 元・問題子役、完全復活。

 表向きは、世間が大好きな“努力型シンデレラ”。

 でも、舞台袖ではね――

 私はただ、獲物を喰らうハンターなだけ。



 控室を出る直前、私は彼に振り返った。

「ねえ、成瀬くん」

「はい……?」

「そろそろ、捨てちゃおっかなー。笑」

 冗談みたいに言ったけど、たぶん彼は本気でビビってた。

 いい子。
 その顔、最高だよ。



後書き

書いててビビるぐらい悪女で鳥肌たった。

まあ結構身近にこういう人いる笑
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