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第二部
隠し子
しおりを挟むキースが皇帝に忠言してからも、ロックが姿勢を変えることはなかった。
それどころか、事実上、皇帝の許可を得たこともって、横暴さに歯止めがかからなくなっていた。
粗方の国家に攻め入り、ついには永世中立国の立場であった宝石の国、エドモンドさえもその手を伸ばそうとし始めていた。
☆★☆
「気は確かか? エドモンドを墜とすということは、全世界を敵に回すという事だぞ!」
当時の黒の騎士団には、ロイス家の者が数多く在籍していたこともあり、5つの騎士団の中で、一つ抜き出ていた。
小国であるエドモンドを侵略すること自体は、2000名ほど所属していた黒の騎士団のみでも、赤子の手を捻るほど容易ではあるが、その後待ち受けている事を考えれば控えるべき。
ロックの胸倉を掴んで、出征に大反対したが、
「……仮にも帝国を支える騎士団長が何を怯えている? 報復が怖いのなら、今すぐにその座を息子に譲れ。臆病者め」
「なっ……」
「考えてもみろ。エドモンドは魔石の山だ。それをあんな閉鎖国家が持っていることがそもそもおかしいのだ。あの宝は我らがハーマンにこそふさわしい」
拳を握り締めて、力説するロック。
「俺は一切、手を貸さんからな! 自分の利潤しか求めぬお前に未来などあるものか! お前は間違っている! いつかそれが分かるだろう!」
それは軽蔑の眼差し。
キースは呪いをこめて、そう言い放った。
だが、当然ロックにはそんな言葉は響かない訳で、
「ハッ。無論だ。貴様はそうして一生理想論を振りかざしてろ。臆病者」
嘲笑し、その言葉を残して、ロック率いる黒騎士団はエドモンドに遠征に行った。
この時、誰もが勝利を収め、魔石を手土産に持ち帰るだろうと考え、万に一つさえ敗北は無いと考えていた。
だが、結果はーー。
勝利は収めた。
しかし、凱旋時に出迎えに参加したキースは目を見張ることになる。
出征時に1000居た騎士が100程しか居ない。
残りの900は?
(まさか戦死したのか?)
先頭で騎乗するロックも装備はボロボロで、顔色もあまり優れていない。
(ついに天罰が下ったのだ!)
事実上の敗北に、キースは胸が空く思いだった。
後日、ロック家の目ぼしい後継も全滅との報告を受け、ロイス家排除の動きを呼びかけようと水面下で動き始めようとしたその時ーー。
ロックが隠し子の存在を仄かした事で、計画は頓挫しかけようとした。
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