霜月壱谷の探偵録

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探偵+新居=>開幕

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 新宿のあるアパートの一角に、一人の男が引っ越してきた。彼の容貌は、黒のスーツに身を包んだ、いかにも紳士といった風である。アパートの管理人が身分証を出すよう言うと、彼は一枚の名刺を取り出した。そこには、「探偵  霜月壱谷しもつきいちや」とだけ書いてあった。裏面には彼の電話番号──といっても070からはじまる携帯番号だが──が書いてあった。
「すみません、名刺は身分証としては認められないのですよ。」
と管理人が言うと、霜月は彼の運転免許証を取り出した。
 手続きを終えると彼は部屋の鍵を受け取り、管理人室を出た。管理人室を出たすぐ先にエレベーターホールらしき所があり、そのすぐ横にはそこそこ大きめの休憩スペースがあった。厚いガラス製のテーブルを挟むかのように2つの1人用ソファが配置されていて、それが5つほど、ほぼ等間隔に置かれている。絨毯は少し薄い黒で、ふかふかしていた。彼はそこを横目で確認し、自分の部屋へと向かった。
 彼が部屋のドアを開けると、少しホコリの混じったような匂いが漂ってきた。靴を脱いで少し奥の居間にいくと、所々の壁紙が剥がれかけていて、四隅にはホコリが溜まっていた。誰も借りていなかったという話は聞いていたが、ここまでひどいとは夢にも思わなかった。さらに、ここより左奥の和室では、壁は少し黄色がかっていて、右奥の部屋では、フローリングに所々絵の具を垂らしたような跡があった。玄関から居間までの廊下で左に進むとトイレとバスルームがあるのだが、以外にもそこには蜘蛛の巣やカビ等はなく、少し塵が舞っている程度だった。バスルームと対象に位置しているところに二つの部屋があるのだが、そこには特に異常は無かった。
 彼は自分の荷物を小部屋に置き、財布と鍵だけを持って外に出た。数分後、戻ってきた彼の手には掃除用具が入ったレジ袋がさがっていた。彼が雑巾を濡らそうと蛇口をひねると、透き通った温かい水が出てきた。
 最初、彼は何気なく水の温もりを感じていたが、急に、ある感覚に襲われた。そして彼は、すぐに警察に電話をかけた。
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