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「――他人行儀」
私は何て返答していいかわからず、言葉を繰り返した。
って他人だし。
「そうだよ。ずっと会いたかったのに」
飲みかけのカップをちゃぶ台に乗せると、貴司くんはずずいと私の方に身を乗り出した。
顔が近い。
よくよく見れば確かに当時の貴司くんの面影はあるんだけど、だいぶしゅっとしていて、やっぱり別人みたいだ。――元は格好良かったのね。
まじまじと見ていると、貴司くんはふっと顔を逸らした。
「……変わらないな、星野 若葉」
――変わらない?
その言葉に私は急に自分が恥ずかしくなった。
私は、進学もしないで結局フリーターになって今は無職の恥ずかしいやつだ。
貴司くんは、また視線を私に戻してにっと笑った。
「まあ、でも、夢持って頑張ってるのがお前らしいっていうか、自分のカフェ? いいじゃん」
私は急に恥ずかしさで頭が熱くなった。
別に自分のカフェを持つとかそんな夢はないけれど、そのへんはカフェでバイトしてたって言ったら富岡さんが、
『飯塚さんも夢を語っておきましょう! 自分のカフェでいいじゃないですか!』
って言ったから書いたのだ。
現状、とりあえず何でもいいから安定した仕事に就きたい。
それが夢だ。
頑張って大変身して、人気者になっている貴司くんの前にいるのが恥ずかしかった。
本当、何でこの人私の所に来たんだろ。
「――それ、別に夢じゃないし。あと、私、今苗字、星野じゃなくて飯塚だから」
「え?」
思わず感情的な口調で言ってしまった。
貴司くんは驚いたような顔でしばらく黙った。
「――結婚――」
「まさか!」
首をぶんぶん振る。部屋を見回して、貴司くんは「だよなぁ」と呟いた。
まあね。この部屋で暮らしてて結婚してるってのはないよね。
私はため息をついた。
「親が別れてお母さんの方行ったから、引っ越したのもそれだし……」
「そうだったんだ」
神妙そうに言って、貴司くんは私に近づくと頭をぽんぽんと叩いた。
「……色々あったんだな」
私は硬直して、彼を見上げた。
心臓がばくばくした。
誰かに、しかも男の人にこんな心配されたようなこと今までなかったし。
――どういうつもりなんだろう、彼は。
「やっぱ会いにきて良かったわ、あんな手紙じゃ、そういうのわかんないじゃん」
ざざっと距離をとって、相手を睨む。
――何か裏がある? 私なんかに構ったってなにもないのに。
「――いや、だから、何で、そんな――私なんかにいちいち会いにくるのよ」
「さっきの番組見てなかった? 好きだったからに決まってるじゃん」
「――は?」
思わず声が裏返った。
「好きだったから、ずっとお前の行き先が気になってたんだよ。お前の好きだったアイドルのバックダンサーになったのも、お前がどっかで見てるかなって思ったからだし」
貴司くんは顔を背けると、早口で言って、それからぼそっと付け加えた。
「まぁ、そっからうまい事今のグループに拾われたんだけど」
彼は息を吐くと、私を見つけた。
「とにかく、当時俺の芸術性をわかってくれたのはお前だけだ。他の――俺のことからかってた奴らなんか、中学くらいで見た目変えたら手のひらくるっとしやがって本当イラっとしたね」
だから、と彼は語気を強めた。
「お前が困ってるなら力になりたいし、今回会いに来てほんと良かったよ」
私は何て返答していいかわからず、言葉を繰り返した。
って他人だし。
「そうだよ。ずっと会いたかったのに」
飲みかけのカップをちゃぶ台に乗せると、貴司くんはずずいと私の方に身を乗り出した。
顔が近い。
よくよく見れば確かに当時の貴司くんの面影はあるんだけど、だいぶしゅっとしていて、やっぱり別人みたいだ。――元は格好良かったのね。
まじまじと見ていると、貴司くんはふっと顔を逸らした。
「……変わらないな、星野 若葉」
――変わらない?
その言葉に私は急に自分が恥ずかしくなった。
私は、進学もしないで結局フリーターになって今は無職の恥ずかしいやつだ。
貴司くんは、また視線を私に戻してにっと笑った。
「まあ、でも、夢持って頑張ってるのがお前らしいっていうか、自分のカフェ? いいじゃん」
私は急に恥ずかしさで頭が熱くなった。
別に自分のカフェを持つとかそんな夢はないけれど、そのへんはカフェでバイトしてたって言ったら富岡さんが、
『飯塚さんも夢を語っておきましょう! 自分のカフェでいいじゃないですか!』
って言ったから書いたのだ。
現状、とりあえず何でもいいから安定した仕事に就きたい。
それが夢だ。
頑張って大変身して、人気者になっている貴司くんの前にいるのが恥ずかしかった。
本当、何でこの人私の所に来たんだろ。
「――それ、別に夢じゃないし。あと、私、今苗字、星野じゃなくて飯塚だから」
「え?」
思わず感情的な口調で言ってしまった。
貴司くんは驚いたような顔でしばらく黙った。
「――結婚――」
「まさか!」
首をぶんぶん振る。部屋を見回して、貴司くんは「だよなぁ」と呟いた。
まあね。この部屋で暮らしてて結婚してるってのはないよね。
私はため息をついた。
「親が別れてお母さんの方行ったから、引っ越したのもそれだし……」
「そうだったんだ」
神妙そうに言って、貴司くんは私に近づくと頭をぽんぽんと叩いた。
「……色々あったんだな」
私は硬直して、彼を見上げた。
心臓がばくばくした。
誰かに、しかも男の人にこんな心配されたようなこと今までなかったし。
――どういうつもりなんだろう、彼は。
「やっぱ会いにきて良かったわ、あんな手紙じゃ、そういうのわかんないじゃん」
ざざっと距離をとって、相手を睨む。
――何か裏がある? 私なんかに構ったってなにもないのに。
「――いや、だから、何で、そんな――私なんかにいちいち会いにくるのよ」
「さっきの番組見てなかった? 好きだったからに決まってるじゃん」
「――は?」
思わず声が裏返った。
「好きだったから、ずっとお前の行き先が気になってたんだよ。お前の好きだったアイドルのバックダンサーになったのも、お前がどっかで見てるかなって思ったからだし」
貴司くんは顔を背けると、早口で言って、それからぼそっと付け加えた。
「まぁ、そっからうまい事今のグループに拾われたんだけど」
彼は息を吐くと、私を見つけた。
「とにかく、当時俺の芸術性をわかってくれたのはお前だけだ。他の――俺のことからかってた奴らなんか、中学くらいで見た目変えたら手のひらくるっとしやがって本当イラっとしたね」
だから、と彼は語気を強めた。
「お前が困ってるなら力になりたいし、今回会いに来てほんと良かったよ」
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