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「お、もうこんな時間だ。帰る?」
そのあと喋ったり、ゲームしたりして過ごしていたらあっという間に日が落ちていた。
「うん……、そうだね」
暗くなって帰るなんて、小学生みたいだなと苦笑しながら立ち上がった。
「送ってくよ」と車のキーをとった貴司くんと部屋を出て、エレベーターを待っていると、
チンっと音がして扉が開いて、中から顔を知った男女が出てきた。
背が高い貴司くんよりさらに一回り高い、強面の男の人と、ふわっとした髪の小柄な可愛い女の子。
「ケンっ……と、富岡ちゃん……」
男の人は貴司くんのグループメンバーのケンさんで、女の子はあのADの富岡さんだった。ケンさん、同じマンション、とは聞いてたけど……。
「え、え、飯塚さんじゃないですかっ!!」
富岡さんは私を見てはしゃいだような声を出した。
「あっ、再会したんですねっ!」
私の住所を貴司くんに教えたのは富岡さんだった。ケンさんとの飲み会を引き換えに……。
「良かったぁ。私、教えたかいがありましたっ。すごいですねえ。初恋の人と再会してお付き合いはじまるなんてっ」
富岡さんはきらきらした表情で、私の両手を持つとぶんぶん振る。
貴司くんは困ったように視線を落として呟いた。
「付き合って……ねぇし、まだ」
「え? そうなんですか?」
ケンさんは不思議そうな顔の富岡さんを自分の方に引っ張ると、私を見た。
「あんたがそうか……」
神妙そうな顔だ。
あんたが、ってどういう意味だろ。やっぱり私なんかが貴司くんの横にいるのおかしいって思われてる。
固まった私にケンさんは笑いかけた。
「タカは、俺と違って真面目だよ」
それから、はははっと笑って、「な」と富岡さんに笑いかけた。
富岡さんはケンさんの腕を両手で持つと、「もぉ」と寄りかかって、二人はそのまま貴司くんの部屋と反対側の奥の部屋へ消えて行った。
「何か、あんまり気にしないでな」
車を運転しながら貴司くんは呟く。
「――俺は、若葉のこと好きだけど。若葉が好きって言ってくれるまで待つから」
「ごめん」
好きと言えるだけの自信がない。
そんな自分が嫌になる。
「謝んないでよ」
くそっと貴司くんは言う。車内が気まずい空気のまま、車は住宅街に入って行った。
木造のボロい私のアパートの前で停車する。
「ありがとう」
そう言って降りようとした私は足を止めた。
階段の前に、人影があった。
それは、私の母親だった。
そのあと喋ったり、ゲームしたりして過ごしていたらあっという間に日が落ちていた。
「うん……、そうだね」
暗くなって帰るなんて、小学生みたいだなと苦笑しながら立ち上がった。
「送ってくよ」と車のキーをとった貴司くんと部屋を出て、エレベーターを待っていると、
チンっと音がして扉が開いて、中から顔を知った男女が出てきた。
背が高い貴司くんよりさらに一回り高い、強面の男の人と、ふわっとした髪の小柄な可愛い女の子。
「ケンっ……と、富岡ちゃん……」
男の人は貴司くんのグループメンバーのケンさんで、女の子はあのADの富岡さんだった。ケンさん、同じマンション、とは聞いてたけど……。
「え、え、飯塚さんじゃないですかっ!!」
富岡さんは私を見てはしゃいだような声を出した。
「あっ、再会したんですねっ!」
私の住所を貴司くんに教えたのは富岡さんだった。ケンさんとの飲み会を引き換えに……。
「良かったぁ。私、教えたかいがありましたっ。すごいですねえ。初恋の人と再会してお付き合いはじまるなんてっ」
富岡さんはきらきらした表情で、私の両手を持つとぶんぶん振る。
貴司くんは困ったように視線を落として呟いた。
「付き合って……ねぇし、まだ」
「え? そうなんですか?」
ケンさんは不思議そうな顔の富岡さんを自分の方に引っ張ると、私を見た。
「あんたがそうか……」
神妙そうな顔だ。
あんたが、ってどういう意味だろ。やっぱり私なんかが貴司くんの横にいるのおかしいって思われてる。
固まった私にケンさんは笑いかけた。
「タカは、俺と違って真面目だよ」
それから、はははっと笑って、「な」と富岡さんに笑いかけた。
富岡さんはケンさんの腕を両手で持つと、「もぉ」と寄りかかって、二人はそのまま貴司くんの部屋と反対側の奥の部屋へ消えて行った。
「何か、あんまり気にしないでな」
車を運転しながら貴司くんは呟く。
「――俺は、若葉のこと好きだけど。若葉が好きって言ってくれるまで待つから」
「ごめん」
好きと言えるだけの自信がない。
そんな自分が嫌になる。
「謝んないでよ」
くそっと貴司くんは言う。車内が気まずい空気のまま、車は住宅街に入って行った。
木造のボロい私のアパートの前で停車する。
「ありがとう」
そう言って降りようとした私は足を止めた。
階段の前に、人影があった。
それは、私の母親だった。
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