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三章
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「ねぇちょっと、大問題なんだけど」
意識を飛ばして何がどうなったか有耶無耶になった次の日の朝。アルトスさんが警備のお仕事に出掛けている間、私はあてがわれた客室で影を鷲掴んで揺さぶっていた。
「お前が私をこんな身体に開発したせいで、まともに戦えないんだけど」
ギュムギュムと音が鳴りそうなほど、影を両手で押し潰したり捻ったりしていた。今思えば、見る人が見れば卒倒するような光景だったかも知れない。でも影はされるがまま形を変えて、時たまグニャリと蠢いた。
「挿れられた瞬間、い、イくとか、あり得ないんだけど! 出し入れされる度にイくとか、もう頭おかしいんだけどぉ!!」
自分の醜態を思い出して顔が熱くなって、堪らずバンバン影を叩き始めた。そうしたら遂に影は私の手を避け始め、部屋中を飛び回った。
「あぁ、もう! 卑怯者!」
両手を上げて影を追い回し、躓いてベッドへうつ伏せに倒れ込んだ。スプリングに身体が跳ねて、思いきり息を吸い込んだらお日さまの匂いがした。そしたら何だか急に悲しくなってきた。
「私、こんなのでアルトスさんの一番になれるの……?」
窓から差し込む日光を浴びながら目を閉じると、涙が滲んで頬を伝った。すると急に影は私を包むようにその身を寄せて、何かを囁いてきた。
「“感度をある部位に一定値寄せることが出来る”? そうしたら昨日みたいなことにはならない? こんな身体でも戦える?」
鼻をすすりながら胡乱げに影を見やると、“持久力は上がるはずだ”と言われた。私は日光に照らされ空気中を舞う埃を見ながら頷いた。何故か黄色のスイセンを思い出していた。
「じゃあやって。場所は耳が良い」
その部位を指定したのは、あの人に を囁かれながら果てることができたなら、凄く幸せだろうと考えたから。そして当たり前のように影は私を嬲り始めた。喘ぎながらアルトスさんのことを考えた。
あの人はもっと優しかった。こんな抱き方しない。合わさった肌の感触、温度さえも優しくて、優しさの塊なんだと思った。常に自分に自信が無さそうで、どこか距離を感じる。何が貴方をそんな風にしてしまったの? そんな貴方にぴったり寄り添いたい、くっつきたい。“助けたい”っていう軽い気持ちが、こんな想いに化けるなんて思ってもいなかった。
「アルトスさん、アルトスさん……、アルトスぅ……、あんっ、……わたしぃ、イくぅ……!」
声を押し殺して、黒泥を中に放たれた感触を感じながら、私は全身を震わせた。
――ねぇ、お願い。私を……見てください。
※※※
その視線は私の上を滑って、どこか遠くを見ていた。
「今日はどうしようか」
揺れる瞳で、自信なさげにベッドに腰かけるアルトスさんは俯いた。その手には飴玉が乗っていて、指先でそれをコロコロと転がしていた。
「き、今日も昨日みたいに……、して欲しいです……」
私はその隣に腰かけて、下からそっと見上げた。目があって、無理に笑われているように見えた。
「わかった。君がそう望むなら、そうしよう」
その言葉の違和感に、顔が引きつった。ねぇ、貴方は? 貴方はどう思っているの? アルトスさんは飴玉を口に含んで、口付けてきた。
――甘い。今日はイチゴ味。
「ふ、ん、……ぅ」
目を閉じて、押し倒された。チュルっと音が鳴って、舌が絡んだ。唾液が流されてくる。
うぅぅ。と、とろけそう……! でも口内の感度も昨日よりマシだ。これならまだ耐えれそう……!
前と違う私の反応にアルトスさんも気付いたみたいで、唇を離すと不思議そうに見下ろしてきた。
「何か、前より反応が……。俺、下手かな?」
飴を噛み締めたみたいで、カリッと音が鳴った。
「あ、いえ、違うんです。前はその……ほら、飢えすぎてて感度がバカになってたっていうか。少し補給できたから、ちょっと落ち着いたっていうか……えへへ……」
そう説明したらアルトスさんの瞳がまた揺れた。
「そっか。……ねぇ、どうして欲しい? 教えて」
アルトスさんは私の頭を囲い込むように両腕を置いて、また甘い口付けを交わしてきた。
「ふぇ、んん、ふ、わ、私でぇ、んぅ、イって、欲しい、れしゅ……」
舌をすすられて最後発音が変になった。でもそれ以上にアルトスさんが動きを止めて、固まったのを見て不安になった。
「あ、アルトスさん……? 泣いてるんですか……?」
上体を起こした一瞬、ほんの一瞬、泣いているように見えたのだ。アルトスさんはそんな自分の乾いた頬に手を当てて、手のひらを見ていた。
「凄く、悲しそうに見えました……」
「――昔、誰かに似たような事を言われた気がする」
ポツリと呟いて、何度かその綺麗な瞳を瞬くと、アルトスさんはこう言った。
「ね、俺とゲームをしようか」
「……ゲーム?」
目があった。
「そう、君は服を脱ぐのが嫌なんだろう? ……俺は君の裸が見たい。俺は、イくところを見られるのが嫌なんだ。だから――」
私はその時、前開きのタオル生地ワンピースを着ていた。寝るときも侍女服では不便だろうと買い与えられたものだった。アルトスさんは私の胸の谷間からおヘソにかけて、縦に並ぶ五つのボタンを指でなぞりながら言った。
「俺がイくまでに君を五回イかせることが出来たら、俺の勝ち。裸を見せて。それまでに俺をイかせることが出来たら、君の勝ちだ」
「え、ええええ……」
昨日のあの短時間で十回以上はイかされていたことを考えると、勝ち目は無いように思えた。でも、今朝影に感度調整をしてもらったこともあり、勝てるような気もしていた。
「わ、わかりました……。絶対にアルトスさんをイかせてみせます!」
さ、流石に……、流石に……ね? 大丈夫だよね……? と思っていた。
結果は惨敗。駄目だった。
「ひうううううううう!」
「あ、イったね? じゃあまず一つ」
最奥を突かれ達した私を涼しげに見下ろし、アルトスさんは一番下のボタンをまず外した。
「なんでぇ、なんでぇ……!?」
火照る顔を両手で隠して、涙目で私は喚いた。
「ね、顔隠さないで。見せて」
「いやぁ……!!」
「いいの? ここ弄っちゃうよ」
アルトスさんは組み敷いた私のワンピース越し、両胸に手を当てると人差し指と親指で尖りを優しく摘んだ。
「あ、あ、あ! だめぇ!」
慌てて片手だけ離してその手首を掴んだ。そうしたら掴んだ手がそのまま私の頬を撫でた。
「顔が見たい」
アルトスさんの顔が近付いてきて、また首を傾げられた。
――あぁ、キスを催促されている。私、この人に調教されてるぅ……! そう自覚しながら口付けた。下の方から鳴り響く水音、片胸の尖りを弄られたまま、頬に手を添えられキスしてた。そんなの耐えられるはずがなかった。
「――っくふうううううう!!」
「はい、二つ目」
涼やかに細まる目元。またボタンを外された。
「あ、あぁ……! アルトス、さん、アルトスぅ……!」
「呼び捨てにしたかったらして良いよ」
笑うアルトスさんに、ハッと気が付いた。
「あ、わたし、私の名前……!」
「いや、それは大丈夫。むしろ名乗らないで居てくれると助かる」
急に真顔に戻った。
「え……?」
「俺には特殊な力があってさ。他人の名前を呼んだら駄目なんだ。すまない」
アルトスさんはどこか遠くを見ながらそう言った。
「そ、それって寂しくないですか……?」
「いいや。俺にはイーライがいるから」
ここで自動人形のイーライさん? どういうこと?? ご家族はどうしたんだろう。
「……さて、休憩できた? 後三回だよ」
額に音を立てて口付けられて、この会話は中断された。続けられるアルトスさんの独壇場。
「アルトス! そこ弄っちゃだっんんん!! ひあ、あ、あ、ああ!!」
「俺もちょっとだけ勉強したんだ。ここって性別が分かれたときの名残らしい。気持ちよさそうで良かったよ」
初めて弄られた芽のあまりの刺激に、いとも簡単に達した。蓄積してた快感にトドメだった。そんな知識を披露するアルトスさんはやっぱり頭が良いんだなとか思った。
「三つ目」
何もかもがぐずぐずになって涙を零していたら、頭をよしよしされた。
「大丈夫? 辛かったら言ってね」
「ううう、淫魔だもん! 平気だもん!!」
「ははっ! 可愛い」
平気じゃなかった。
「――いっ、イいっ、て、な、い、……あぁ!!」
「君わかりやすいから、誤魔化しは利かないよ。はい、四つ目」
外されていくボタン。早々に残り一つになってしまった。アルトスさんも汗をかいていたけど、私は色んなところがグチョグチョで。
「限界そうだね。ここがずっと痙攣してる」
アルトスさんの指が私のおヘソをなぞって、少し下の方でくるりと円を描いた。
「あぁ!!」
シーツをキツく握り締めて、イってしまった。意識してしまった。私にアルトスさんが入ってるって、突き付けられた気がした。
最後のボタンが外された。アルトスさんは肩に引っ掛けていた私の片脚を掴むと、ふくらはぎに口付け――。
「やった。俺のかち」
何故か悲しそうに微笑んだ。どうして、何で、何故こんなに距離を感じるの。
勝者としてワンピースをはだけさせられて、繋がったまままじまじと見られた。恥ずかしかった。
「うん、綺麗だ。形がいいね」
「私だけ恥ずかしいよぉ……」
アルトスさんは着衣のままだった。不満を訴えてみるとするりと上だけ脱いでくれた。
「これでいいかな?」
「ぎゅって、して」
「……わかった」
初めて合わさる、肌と肌。しっとりとくっ付いて、思わずため息が溢れた。
「アルトス、 」
「? 何?」
「アルトス、 」
想いを伝えられないのがこんなに辛いだなんて、思わなかった。目の前で影が言葉を貪っていた。
「……? 俺、君のお陰で何だか楽しいよ」
ぎゅっとされたまま抽挿が始まって、鳴き始めた私の耳元に。
「こんな俺が相手で、ごめんね」
謝罪の意味がわからなかった。
意識を飛ばして何がどうなったか有耶無耶になった次の日の朝。アルトスさんが警備のお仕事に出掛けている間、私はあてがわれた客室で影を鷲掴んで揺さぶっていた。
「お前が私をこんな身体に開発したせいで、まともに戦えないんだけど」
ギュムギュムと音が鳴りそうなほど、影を両手で押し潰したり捻ったりしていた。今思えば、見る人が見れば卒倒するような光景だったかも知れない。でも影はされるがまま形を変えて、時たまグニャリと蠢いた。
「挿れられた瞬間、い、イくとか、あり得ないんだけど! 出し入れされる度にイくとか、もう頭おかしいんだけどぉ!!」
自分の醜態を思い出して顔が熱くなって、堪らずバンバン影を叩き始めた。そうしたら遂に影は私の手を避け始め、部屋中を飛び回った。
「あぁ、もう! 卑怯者!」
両手を上げて影を追い回し、躓いてベッドへうつ伏せに倒れ込んだ。スプリングに身体が跳ねて、思いきり息を吸い込んだらお日さまの匂いがした。そしたら何だか急に悲しくなってきた。
「私、こんなのでアルトスさんの一番になれるの……?」
窓から差し込む日光を浴びながら目を閉じると、涙が滲んで頬を伝った。すると急に影は私を包むようにその身を寄せて、何かを囁いてきた。
「“感度をある部位に一定値寄せることが出来る”? そうしたら昨日みたいなことにはならない? こんな身体でも戦える?」
鼻をすすりながら胡乱げに影を見やると、“持久力は上がるはずだ”と言われた。私は日光に照らされ空気中を舞う埃を見ながら頷いた。何故か黄色のスイセンを思い出していた。
「じゃあやって。場所は耳が良い」
その部位を指定したのは、あの人に を囁かれながら果てることができたなら、凄く幸せだろうと考えたから。そして当たり前のように影は私を嬲り始めた。喘ぎながらアルトスさんのことを考えた。
あの人はもっと優しかった。こんな抱き方しない。合わさった肌の感触、温度さえも優しくて、優しさの塊なんだと思った。常に自分に自信が無さそうで、どこか距離を感じる。何が貴方をそんな風にしてしまったの? そんな貴方にぴったり寄り添いたい、くっつきたい。“助けたい”っていう軽い気持ちが、こんな想いに化けるなんて思ってもいなかった。
「アルトスさん、アルトスさん……、アルトスぅ……、あんっ、……わたしぃ、イくぅ……!」
声を押し殺して、黒泥を中に放たれた感触を感じながら、私は全身を震わせた。
――ねぇ、お願い。私を……見てください。
※※※
その視線は私の上を滑って、どこか遠くを見ていた。
「今日はどうしようか」
揺れる瞳で、自信なさげにベッドに腰かけるアルトスさんは俯いた。その手には飴玉が乗っていて、指先でそれをコロコロと転がしていた。
「き、今日も昨日みたいに……、して欲しいです……」
私はその隣に腰かけて、下からそっと見上げた。目があって、無理に笑われているように見えた。
「わかった。君がそう望むなら、そうしよう」
その言葉の違和感に、顔が引きつった。ねぇ、貴方は? 貴方はどう思っているの? アルトスさんは飴玉を口に含んで、口付けてきた。
――甘い。今日はイチゴ味。
「ふ、ん、……ぅ」
目を閉じて、押し倒された。チュルっと音が鳴って、舌が絡んだ。唾液が流されてくる。
うぅぅ。と、とろけそう……! でも口内の感度も昨日よりマシだ。これならまだ耐えれそう……!
前と違う私の反応にアルトスさんも気付いたみたいで、唇を離すと不思議そうに見下ろしてきた。
「何か、前より反応が……。俺、下手かな?」
飴を噛み締めたみたいで、カリッと音が鳴った。
「あ、いえ、違うんです。前はその……ほら、飢えすぎてて感度がバカになってたっていうか。少し補給できたから、ちょっと落ち着いたっていうか……えへへ……」
そう説明したらアルトスさんの瞳がまた揺れた。
「そっか。……ねぇ、どうして欲しい? 教えて」
アルトスさんは私の頭を囲い込むように両腕を置いて、また甘い口付けを交わしてきた。
「ふぇ、んん、ふ、わ、私でぇ、んぅ、イって、欲しい、れしゅ……」
舌をすすられて最後発音が変になった。でもそれ以上にアルトスさんが動きを止めて、固まったのを見て不安になった。
「あ、アルトスさん……? 泣いてるんですか……?」
上体を起こした一瞬、ほんの一瞬、泣いているように見えたのだ。アルトスさんはそんな自分の乾いた頬に手を当てて、手のひらを見ていた。
「凄く、悲しそうに見えました……」
「――昔、誰かに似たような事を言われた気がする」
ポツリと呟いて、何度かその綺麗な瞳を瞬くと、アルトスさんはこう言った。
「ね、俺とゲームをしようか」
「……ゲーム?」
目があった。
「そう、君は服を脱ぐのが嫌なんだろう? ……俺は君の裸が見たい。俺は、イくところを見られるのが嫌なんだ。だから――」
私はその時、前開きのタオル生地ワンピースを着ていた。寝るときも侍女服では不便だろうと買い与えられたものだった。アルトスさんは私の胸の谷間からおヘソにかけて、縦に並ぶ五つのボタンを指でなぞりながら言った。
「俺がイくまでに君を五回イかせることが出来たら、俺の勝ち。裸を見せて。それまでに俺をイかせることが出来たら、君の勝ちだ」
「え、ええええ……」
昨日のあの短時間で十回以上はイかされていたことを考えると、勝ち目は無いように思えた。でも、今朝影に感度調整をしてもらったこともあり、勝てるような気もしていた。
「わ、わかりました……。絶対にアルトスさんをイかせてみせます!」
さ、流石に……、流石に……ね? 大丈夫だよね……? と思っていた。
結果は惨敗。駄目だった。
「ひうううううううう!」
「あ、イったね? じゃあまず一つ」
最奥を突かれ達した私を涼しげに見下ろし、アルトスさんは一番下のボタンをまず外した。
「なんでぇ、なんでぇ……!?」
火照る顔を両手で隠して、涙目で私は喚いた。
「ね、顔隠さないで。見せて」
「いやぁ……!!」
「いいの? ここ弄っちゃうよ」
アルトスさんは組み敷いた私のワンピース越し、両胸に手を当てると人差し指と親指で尖りを優しく摘んだ。
「あ、あ、あ! だめぇ!」
慌てて片手だけ離してその手首を掴んだ。そうしたら掴んだ手がそのまま私の頬を撫でた。
「顔が見たい」
アルトスさんの顔が近付いてきて、また首を傾げられた。
――あぁ、キスを催促されている。私、この人に調教されてるぅ……! そう自覚しながら口付けた。下の方から鳴り響く水音、片胸の尖りを弄られたまま、頬に手を添えられキスしてた。そんなの耐えられるはずがなかった。
「――っくふうううううう!!」
「はい、二つ目」
涼やかに細まる目元。またボタンを外された。
「あ、あぁ……! アルトス、さん、アルトスぅ……!」
「呼び捨てにしたかったらして良いよ」
笑うアルトスさんに、ハッと気が付いた。
「あ、わたし、私の名前……!」
「いや、それは大丈夫。むしろ名乗らないで居てくれると助かる」
急に真顔に戻った。
「え……?」
「俺には特殊な力があってさ。他人の名前を呼んだら駄目なんだ。すまない」
アルトスさんはどこか遠くを見ながらそう言った。
「そ、それって寂しくないですか……?」
「いいや。俺にはイーライがいるから」
ここで自動人形のイーライさん? どういうこと?? ご家族はどうしたんだろう。
「……さて、休憩できた? 後三回だよ」
額に音を立てて口付けられて、この会話は中断された。続けられるアルトスさんの独壇場。
「アルトス! そこ弄っちゃだっんんん!! ひあ、あ、あ、ああ!!」
「俺もちょっとだけ勉強したんだ。ここって性別が分かれたときの名残らしい。気持ちよさそうで良かったよ」
初めて弄られた芽のあまりの刺激に、いとも簡単に達した。蓄積してた快感にトドメだった。そんな知識を披露するアルトスさんはやっぱり頭が良いんだなとか思った。
「三つ目」
何もかもがぐずぐずになって涙を零していたら、頭をよしよしされた。
「大丈夫? 辛かったら言ってね」
「ううう、淫魔だもん! 平気だもん!!」
「ははっ! 可愛い」
平気じゃなかった。
「――いっ、イいっ、て、な、い、……あぁ!!」
「君わかりやすいから、誤魔化しは利かないよ。はい、四つ目」
外されていくボタン。早々に残り一つになってしまった。アルトスさんも汗をかいていたけど、私は色んなところがグチョグチョで。
「限界そうだね。ここがずっと痙攣してる」
アルトスさんの指が私のおヘソをなぞって、少し下の方でくるりと円を描いた。
「あぁ!!」
シーツをキツく握り締めて、イってしまった。意識してしまった。私にアルトスさんが入ってるって、突き付けられた気がした。
最後のボタンが外された。アルトスさんは肩に引っ掛けていた私の片脚を掴むと、ふくらはぎに口付け――。
「やった。俺のかち」
何故か悲しそうに微笑んだ。どうして、何で、何故こんなに距離を感じるの。
勝者としてワンピースをはだけさせられて、繋がったまままじまじと見られた。恥ずかしかった。
「うん、綺麗だ。形がいいね」
「私だけ恥ずかしいよぉ……」
アルトスさんは着衣のままだった。不満を訴えてみるとするりと上だけ脱いでくれた。
「これでいいかな?」
「ぎゅって、して」
「……わかった」
初めて合わさる、肌と肌。しっとりとくっ付いて、思わずため息が溢れた。
「アルトス、 」
「? 何?」
「アルトス、 」
想いを伝えられないのがこんなに辛いだなんて、思わなかった。目の前で影が言葉を貪っていた。
「……? 俺、君のお陰で何だか楽しいよ」
ぎゅっとされたまま抽挿が始まって、鳴き始めた私の耳元に。
「こんな俺が相手で、ごめんね」
謝罪の意味がわからなかった。
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