side第三王子ノエルと男爵令嬢シルビア

まめ

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授業が終わり話しかけてくる者もいたが少しでも早く彼女と会いたかったので政務があると適当にかわし足早に図書室に向かった

返事も聞かず一方的に取り付けた約束だったため、本当にまたここに来るのか不安もあったが彼女は来てくれた

「お待たせして申し訳ありません」

「待ってないよ。今私も来たところ。さあ、行こう」

少し強引ではと思ったが彼女の手を取り馬車に向かった
王族の馬車に乗る事に緊張したのか戸惑いを見せていたが繋いでいた手をそのままに馬車に乗り込んだ

「あの、殿下…、どちらの図書館へ向かわれているのですか?」

「シルビア嬢、ノエルと呼んで」

「…私のような身分でそれは…」

「私もシルビアと呼びたいんだ。ダメかな?」

小首を傾げお願いしてみれば、少し頬を染めてこくりと頷いてくれた
うん、可愛い

「ではシルビア、練習してみようか?」

私を意識させたくて、下を向いたままの彼女の顎に手を添えこちらを向かせた

「ほら、ノエルと言ってみて」

益々顔を赤くして消え入りそうな声で言った

「…ノ、ノエル様…」

「うん、これから二人で会う時はそう呼んでね」

また二人で会うということを安易に匂わせ微笑めば恥かしさで目をギュッと閉じながらも頷いてくれた
危うくそのままキスをしてしまいそうになったが、まだ会話らしき物すらして無い今すれば、馬車という密室で王子という地位を笠に迫られたと思われても仕方がないのでここは我慢した

ちょうど馬車も到着したようで彼女をエスコートして降りれば、また彼女は固まってしまった

「あ、あのノエル様、ここ…」

「ああ、言って無かったね。王城の敷地に図書館があるんだ。街中にある王立図書館よりも歴史書は揃っているからね」

「…私が立ち入る事は出来ません」

「大丈夫だよ、私と居るし。君と今日ここに来ることは事前に父と母にも言って、許可も取ってあるからね。何も心配要らないよ」

「…陛下にもですか」

「そう、だから君は好きなだけここの本を読んでいいからね」

本来王城の図書館を使用するのは王族もしくは、城務めの官僚のみ
事前に申請を出せば一般の者も利用出来なくは無い
父と母に取ったのは使用許可では無く、彼女を婚約者候補にするという許可だ
これまで候補にと沢山の令嬢達の名が上がったが、全く興味を示さなかった私に、二人は一時期男色ではと疑った
その私から気になる女性が居ると聞かされ諸手を挙げて喜んだほど、彼女を連れて来ることに否は無かった

「さあ、遅くならない内に」

そのまま彼女の手を引いて敷地内を二人で歩いた
何人もの者達が私と彼女を見て驚いた顔をして足を止めていたが、気付かぬふりをした
噂になることも想定の内

「ふふっ」

思わず笑いが漏れた

「どうなさいました?」

「ん、いや、皆君の美しさに見惚れているから、そんな君を連れてる私は鼻が高いなと思ってさ」

「…ご、ご冗談を…」

図書館を目の前に足を止め、彼女の頬にキスをした

「冗談では無いよ」

キスされた場所に手を当て目を見開いているがその顔から嫌悪感は感じられない
でも刺激は強過ぎたかな?

「ほら、ここが図書館だ」

何も無かったようにそのまま中へ案内した

目的の本は貸し出し禁止の本だった
彼女は来られるのは今日だけだと思ったようで、必死にその中身の必要な所を書き留めていた

「明日は午前で授業が終わるから、一緒にお昼を食べてからここに来ようね」

向かいの席で肘をついた手に顔を乗せ、ひたすら彼女を見ていたのにやっと気が付いたようで慌てて私に言った

「明日、…明日もよろしいのですか?殿下もお忙しいのでは?」

「うん、忙しいね。君を見つめるのにね。それからまた、殿下呼びになってるよ」

「あっ、…申し訳ありません」

「そうだなぁ、ここへ連れて来たお礼も貰わなきゃいけないから、明日は夕飯も一緒に食べよう」

「私はノエル様をご案内出来るような店を存じません…」

「大丈夫、夕飯はここで食べるから」

「っ!そんな…私…」

「父達も会いたがっていたしね。これからは暫く夕飯が要らないと家の方にも言っておいてね。大分外も暗くなったから、今日はそろそろ送るよ。続きは明日ね」

またしても強引な約束になったが、彼女を逃すつもりは無い
やっと彼女と近づけたんだこの機会にもっと距離を縮めよう

送りの馬車の中で彼女の食の好みを尋ねたりしながら、会話を弾ませひとときを楽しんだ
いきなり王族の馬車を乗り付けるのは抵抗があるだろうと、少し手前で彼女を降ろし、門の中に入って行くところを見届けた

手を繋ぎ頬にキスまでした
これでも我慢した方だ
この我慢はいつまで持つのだろう
だが急ぎ過ぎるのは良く無い
明日の約束ににやけた顔を両手でパンと叩き引き締めた
だが唇が拾った頬の感触を思い出し、直ぐに顔が緩んでしまったのは仕方無いことだろう

自身の執務室に戻れば、その顔罪に問われますよ、とラットに揶揄われた
好きなだけ言っておけ
彼女との時間を作るため、与えられていた政務をいつもの三倍こなした
日付の変わる頃やっとラットを解放してやれば、疲れ過ぎたのか揶揄ったり文句を言うことも無くふらふらと自分の居室に戻っていった

私も凄く疲れたが、今日は彼女の夢が見れそうで眠るのも楽しみだ
だがその前に今日彼女を転ばせた者達のことを思い出し、彼女を傷付ければどうなるのか分からせるための策を練った
明日もラットに小言を言われそうだが、良案が浮かびほくそ笑んでいれば知らぬ間に眠りについていた


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