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第3部 呪いの館 それぞれの未来へ
桃の話 1
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桃は不憫な子供だった。
桃の下に妹がいたが、病弱だった為、両親の関心はいつも妹だった。
桃はお姉ちゃんでしょ、いい子だから言うこと聞いて。
その言葉で、桃は押さえつけられて育った。
そして小学生になる頃、親の仕事の都合で祖父母の家に預けられた。
小さな田舎だから、桃の家庭の事情は筒抜けだった。
捨てられた子。可哀想な子。
ハッキリ口には出さないが、中学卒業まで、常に同情的に見られていたのは気づいていた。
みんな優しい。みんなが同情的。何故なら桃は可哀想だから。
そんな環境を嫌って、桃は進学はこの村から出る事を決意した。
噂に惑わされず、私自身を見てくれる友人が欲しい。
そして学校で隣の席に座った女の子に勇気を出して話しかけた。
それが華だった。
◇◇◇
高校生活は楽しかった。
これまでの自分を知らないクラスメイト。仲の良い友達。充実していた桃に、それは突然やってきた。
それまで桃を放置していた親が、急に進路に口出しをしてきたのだ。
一人暮らしの桃のアパートに急にやって来て。良い子だから、とお得意の言葉を並べて。考えておいてね、と一方的に言いたい事だけ言って帰って行った。
親の勧めた進路も嫌では無かったが、何よりも自分で決めたい。
桃の憂鬱な日が続いたある日。
「これやるよ」
教室の自席に座っていた桃に、紙パックのジュースが置かれた。
勇輝だった。
華の幼馴染で、最近桃も話す様になった。明るく元気なムードメーカーという印象だった。
「ありがとう。でも何で?」
「何か悩んでるみたいだから」
ニヤッと勇輝が笑った。
些細な悩みなんか気にしなさそうな、そんな笑顔。だから、思わず相談してしまった。
「ねえ、勇輝くん。もし嫌いな人がいて、もう関わりたくないのに、向こうから関わってきたら、勇輝くんならどうする?」
「どーっすかなぁ?んー、でも本当に全然無理なくらい嫌いなら無視すれば良くない?」
勇輝の言葉に、桃はふと思う。
全然無理なくらい嫌いか?
むしろ逆だ。本当は愛されたかった。
「…本当は嫌いじゃない。好きで構ってもらいたかったけど、ずっとほっとかれて…それで今さら何って…」
言ってて恥ずかしくなった。
これでは親に構ってもらえなくて、拗ねてる子供だ。でも勇輝は真剣に桃の話を聞いてくれた。
「それならチャンスじゃね?」
「え?チャンス?」
「だって本当は好きなんだろ?向こうから来たならガンガンに責めて、自分の事をアピールして好きになってもらえばいい」
「え?え?え?」
「無理してあきらめなくていい。自分が納得するまで、ぶつかればいい」
がんばれよ!と最後に応援する様に言って勇輝は去って行った。
これは…多分、恋の悩みと勘違いされている。
向こうから来たならチャンス。ガンガンにアピールすればいい。自分が納得するまでぶつかる。
親にぶつかる。それまで桃にとっては思ってもない事だった。
でもどうせ嫌いになるなら、もっともっと足掻いてもいいかもしれない。
この日をキッカケに、桃はそれまで疎遠だった両親と関係を改善するべく奮闘する。
そして。
やはりこの日をキッカケに勇輝を意識し出す。もちろん、勇輝の教え通り、納得いくまでガンガンにアタックする事になるのだった。
◇◇◇
「夏休み友達連れてくね!ばっちゃん」
華達3人を誘って、故郷への里帰り。桃はワクワクしていた。
田舎ではなかなか心を許せる友達がいない事を知っていた祖母は、たいそう喜んでくれた。
ちょっと強引な誘い方だったのは自覚している。でも仲良い友達を祖父母に紹介したいのと、この夏休みに勇輝に告白する。それを叶えたい為、ちょっと強引な誘い方になった。
勇輝が華を好きなのなんて、わかってる。自分の気持ちにケリをつける為にもちゃんとふって欲しい。
なのに、勇輝はのらりくらりと桃と2人きりになるのを避けるのだ。
だから、この旅行でちゃんと気持ちにケリをつける!
ほぼ100%ふられる事はわかっていたが、桃は友達との初めての旅行が楽しみだった。
桃の下に妹がいたが、病弱だった為、両親の関心はいつも妹だった。
桃はお姉ちゃんでしょ、いい子だから言うこと聞いて。
その言葉で、桃は押さえつけられて育った。
そして小学生になる頃、親の仕事の都合で祖父母の家に預けられた。
小さな田舎だから、桃の家庭の事情は筒抜けだった。
捨てられた子。可哀想な子。
ハッキリ口には出さないが、中学卒業まで、常に同情的に見られていたのは気づいていた。
みんな優しい。みんなが同情的。何故なら桃は可哀想だから。
そんな環境を嫌って、桃は進学はこの村から出る事を決意した。
噂に惑わされず、私自身を見てくれる友人が欲しい。
そして学校で隣の席に座った女の子に勇気を出して話しかけた。
それが華だった。
◇◇◇
高校生活は楽しかった。
これまでの自分を知らないクラスメイト。仲の良い友達。充実していた桃に、それは突然やってきた。
それまで桃を放置していた親が、急に進路に口出しをしてきたのだ。
一人暮らしの桃のアパートに急にやって来て。良い子だから、とお得意の言葉を並べて。考えておいてね、と一方的に言いたい事だけ言って帰って行った。
親の勧めた進路も嫌では無かったが、何よりも自分で決めたい。
桃の憂鬱な日が続いたある日。
「これやるよ」
教室の自席に座っていた桃に、紙パックのジュースが置かれた。
勇輝だった。
華の幼馴染で、最近桃も話す様になった。明るく元気なムードメーカーという印象だった。
「ありがとう。でも何で?」
「何か悩んでるみたいだから」
ニヤッと勇輝が笑った。
些細な悩みなんか気にしなさそうな、そんな笑顔。だから、思わず相談してしまった。
「ねえ、勇輝くん。もし嫌いな人がいて、もう関わりたくないのに、向こうから関わってきたら、勇輝くんならどうする?」
「どーっすかなぁ?んー、でも本当に全然無理なくらい嫌いなら無視すれば良くない?」
勇輝の言葉に、桃はふと思う。
全然無理なくらい嫌いか?
むしろ逆だ。本当は愛されたかった。
「…本当は嫌いじゃない。好きで構ってもらいたかったけど、ずっとほっとかれて…それで今さら何って…」
言ってて恥ずかしくなった。
これでは親に構ってもらえなくて、拗ねてる子供だ。でも勇輝は真剣に桃の話を聞いてくれた。
「それならチャンスじゃね?」
「え?チャンス?」
「だって本当は好きなんだろ?向こうから来たならガンガンに責めて、自分の事をアピールして好きになってもらえばいい」
「え?え?え?」
「無理してあきらめなくていい。自分が納得するまで、ぶつかればいい」
がんばれよ!と最後に応援する様に言って勇輝は去って行った。
これは…多分、恋の悩みと勘違いされている。
向こうから来たならチャンス。ガンガンにアピールすればいい。自分が納得するまでぶつかる。
親にぶつかる。それまで桃にとっては思ってもない事だった。
でもどうせ嫌いになるなら、もっともっと足掻いてもいいかもしれない。
この日をキッカケに、桃はそれまで疎遠だった両親と関係を改善するべく奮闘する。
そして。
やはりこの日をキッカケに勇輝を意識し出す。もちろん、勇輝の教え通り、納得いくまでガンガンにアタックする事になるのだった。
◇◇◇
「夏休み友達連れてくね!ばっちゃん」
華達3人を誘って、故郷への里帰り。桃はワクワクしていた。
田舎ではなかなか心を許せる友達がいない事を知っていた祖母は、たいそう喜んでくれた。
ちょっと強引な誘い方だったのは自覚している。でも仲良い友達を祖父母に紹介したいのと、この夏休みに勇輝に告白する。それを叶えたい為、ちょっと強引な誘い方になった。
勇輝が華を好きなのなんて、わかってる。自分の気持ちにケリをつける為にもちゃんとふって欲しい。
なのに、勇輝はのらりくらりと桃と2人きりになるのを避けるのだ。
だから、この旅行でちゃんと気持ちにケリをつける!
ほぼ100%ふられる事はわかっていたが、桃は友達との初めての旅行が楽しみだった。
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