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第一部 ここって乙女ゲームの世界らしい
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ちょっとずつ兄弟間の仲が改善に向かってきた頃。
波乱の日がやって来た。
久しぶりの…正妻との対面だ!
オレと母親は離れにいるから、本宅に行く事も、あちらから来る事もない。
でもオレがこの家の長女として認知されて、正式にこの家の娘として婚約を結んだ事で、正妻はオレを淑女として育て上げる義務が出てきた。
産んだのは愛人である母親だけど、トルマリン家の娘として婚姻させるなら、トルマリン家を取り仕切るのは正妻の役割だからだ。
で。とうとうオレは、淑女教育の途中経過を見られる日がやってきた。
着飾ったオレとお母様で、本宅にやって来た。
今夜はちゃんとオレがお呼ばれでマナーに違反しないか正妻のチェックが入る。
案内されたのは本宅の食堂だった。
席には、存在感のうっすい父親と。心配そうにチラチラこちらを見る兄のライバン。
そして。
立ったままオレら親子を迎える、恐ろしく見事に着飾った正妻がいた!ババーン!
出た!ラスボス!
オレはお母様と一緒に正妻の元へ進む。今日はオレのマナーチェックだから、基本オレが自分で挨拶しないといけない。
正妻の元へ赴き、オレは礼を取りながら挨拶した。
「ほんじつは、ごしょうたいいただき、ありがとうございました。ラスボス様」
「…………誰ですかそれは?」
「しつれいしました、ベルデラ様」
やば。素で名前を間違えた!
ベルデラに扇で肩をはたかれた。
「相手の名前を間違えるなど、失礼ですよ!」
「もうしわけ、ございません」
「全く、あなた達親子は揃いも揃って…!」
オレのしょっぱなのつまづきが、ベルデラの怒りに火をつけた様で。
くどくど、くどくど。たっぷり説教をくらった。
その後、すっかり冷めてしまった料理を食しながら、オレはその都度ベルデラに説教をされまくるのだった。
「づ、が、れ、だ」
離れに戻ったオレは、ドレスもそのままに部屋のベッドに突っ伏した。
慣れない緊張感でぐったりだし、ほぼ全てのマナーにダメ出し食らうし、扇でペシペシはたかれるし。散々だった。
元の世界なら幼児虐待だぞ!
今日は珍しくお母様も気疲れしたらしく。
「ドレスは適当に脱ぎ捨てておいて。明日手入れして片づけるわ」
と、さっさと寝てしまった。相変わらず自由な人だ。
でも、オレも…もう眠い…。
◇◇◇
ウトウトした瞼をうっすら開けると。
見慣れた前世の居間のソファに、オレはうつ伏せで寝ていた。
足元にはまた妹がいて、相変わらずゲームに夢中でぶつぶつ呟いている。
また重大な何かを言ってるかもしれない。耳に意識を集中させたいのに…眠い。
「ち…くしょ、ベルデラめ」
扇で叩かれたところも痛いし、意識が少しずつ沈んでいく。
「もう…令嬢なんか…やめたい…」
強い眠気に意識が飲まれる寸前。妹の声が聞こえて来た。
『でも悪役令嬢がいないと、世界が滅びちゃうんだよ』
◇◇◇
目が、覚めた。
カーテンから入り込む陽射しは明るく、オレはドレスのまま、行儀悪くベッドに大の字の状態だった。ガバッと起き上がる。
いま…何て?
妹は何て言ってた?
「あくやくれいじょうがいないと、せかいがほろびる?何で?」
こうしちゃいられないと、オレはドレスを脱ぎ捨て楽な格好になると、ノートとペンを取り出した。
落ち着け、オレ。とりあえず今わかってる事を整理してみよう。
まず、この世界は乙女ゲームの世界で間違いないと思う。登場人物や遣わされし聖なる乙女の設定が同じだから。
で、オレは婚約破棄される悪役令嬢。これは大歓迎だ!なんせオレは男だし!
その後、お母様と一緒に逃亡して平民として暮らす。でもその前にどうにか逃亡資金を貯めないと…。
ここまで考えても、やはり悪役令嬢の必要性が分からなかった。
もしかしてあれかな?いわゆるヒロインと婚約者の恋を燃え上がらせる為の踏み台。当て馬ってやつ?
「うーん…、やっぱり分からない」
ここは逆転の発想でいってみよう。
逆にオレが悪役令嬢を放棄したらどうなる?
①まず男だとカミングアウト→ベルデラに消される。多分。
②淑女教育をさぼる→役立たずで侯爵家から追い出される。お母様と野垂れ死に確定。
③立派な令嬢になるが悪役にはならない→いずれ婚約者にまで男とバレて、相手かうちのどちらかに、親子共々消される。…相手は王族筋だからな、不敬罪だ。間違いない。
「これ、あくやくれいじょうになる以外ないじゃん!」
はぁー、とオレは机に突っ伏した。
悪役令嬢がいないと世界が破滅する理由は分からない。でも逆に、悪役令嬢として婚約破棄してもらわないと、オレが破滅するのは分かった。
もう、腹をくくるしかない。
「あと…なにかわすれてる気がするんだけどな」
何だっけ?
前々回妹から言われた言葉に恐怖で飛び起きたオレは。恐怖のあまり、肝心の妹の言葉をすっかり忘れてしまっていた。
何だかとっても大事な事を忘れてるみたいで、何だか胸がチリチリする。でも忘れた物は仕方ない。
気持ちを切り変えて、これからやるべき事を改めて考えていく。
①逃走経路の確保→敷地内はチェックOK→そろそろ外にも出たい!
②ライバンともうちょっと仲良くなる→いざという時に助けてもらう!
③お金を貯める→敷地内を周りながら、引き続き売れそうな物を拾う!
④金を稼ぐ力をつける→出来そうな事を探す!
⑤身を守る力をつける→男とバレない為にも筋肉つけすぎ注意!
⑥悪役令嬢を目指す→どうやって???
うーん。そもそも悪役令嬢がどんなものかよく分かんないよ。
オレのイメージする悪役令嬢を思い浮かべてみる。
そして…。
「あ!いるじゃん!いい手本が!」
オレはナイスないい案を閃いた!
波乱の日がやって来た。
久しぶりの…正妻との対面だ!
オレと母親は離れにいるから、本宅に行く事も、あちらから来る事もない。
でもオレがこの家の長女として認知されて、正式にこの家の娘として婚約を結んだ事で、正妻はオレを淑女として育て上げる義務が出てきた。
産んだのは愛人である母親だけど、トルマリン家の娘として婚姻させるなら、トルマリン家を取り仕切るのは正妻の役割だからだ。
で。とうとうオレは、淑女教育の途中経過を見られる日がやってきた。
着飾ったオレとお母様で、本宅にやって来た。
今夜はちゃんとオレがお呼ばれでマナーに違反しないか正妻のチェックが入る。
案内されたのは本宅の食堂だった。
席には、存在感のうっすい父親と。心配そうにチラチラこちらを見る兄のライバン。
そして。
立ったままオレら親子を迎える、恐ろしく見事に着飾った正妻がいた!ババーン!
出た!ラスボス!
オレはお母様と一緒に正妻の元へ進む。今日はオレのマナーチェックだから、基本オレが自分で挨拶しないといけない。
正妻の元へ赴き、オレは礼を取りながら挨拶した。
「ほんじつは、ごしょうたいいただき、ありがとうございました。ラスボス様」
「…………誰ですかそれは?」
「しつれいしました、ベルデラ様」
やば。素で名前を間違えた!
ベルデラに扇で肩をはたかれた。
「相手の名前を間違えるなど、失礼ですよ!」
「もうしわけ、ございません」
「全く、あなた達親子は揃いも揃って…!」
オレのしょっぱなのつまづきが、ベルデラの怒りに火をつけた様で。
くどくど、くどくど。たっぷり説教をくらった。
その後、すっかり冷めてしまった料理を食しながら、オレはその都度ベルデラに説教をされまくるのだった。
「づ、が、れ、だ」
離れに戻ったオレは、ドレスもそのままに部屋のベッドに突っ伏した。
慣れない緊張感でぐったりだし、ほぼ全てのマナーにダメ出し食らうし、扇でペシペシはたかれるし。散々だった。
元の世界なら幼児虐待だぞ!
今日は珍しくお母様も気疲れしたらしく。
「ドレスは適当に脱ぎ捨てておいて。明日手入れして片づけるわ」
と、さっさと寝てしまった。相変わらず自由な人だ。
でも、オレも…もう眠い…。
◇◇◇
ウトウトした瞼をうっすら開けると。
見慣れた前世の居間のソファに、オレはうつ伏せで寝ていた。
足元にはまた妹がいて、相変わらずゲームに夢中でぶつぶつ呟いている。
また重大な何かを言ってるかもしれない。耳に意識を集中させたいのに…眠い。
「ち…くしょ、ベルデラめ」
扇で叩かれたところも痛いし、意識が少しずつ沈んでいく。
「もう…令嬢なんか…やめたい…」
強い眠気に意識が飲まれる寸前。妹の声が聞こえて来た。
『でも悪役令嬢がいないと、世界が滅びちゃうんだよ』
◇◇◇
目が、覚めた。
カーテンから入り込む陽射しは明るく、オレはドレスのまま、行儀悪くベッドに大の字の状態だった。ガバッと起き上がる。
いま…何て?
妹は何て言ってた?
「あくやくれいじょうがいないと、せかいがほろびる?何で?」
こうしちゃいられないと、オレはドレスを脱ぎ捨て楽な格好になると、ノートとペンを取り出した。
落ち着け、オレ。とりあえず今わかってる事を整理してみよう。
まず、この世界は乙女ゲームの世界で間違いないと思う。登場人物や遣わされし聖なる乙女の設定が同じだから。
で、オレは婚約破棄される悪役令嬢。これは大歓迎だ!なんせオレは男だし!
その後、お母様と一緒に逃亡して平民として暮らす。でもその前にどうにか逃亡資金を貯めないと…。
ここまで考えても、やはり悪役令嬢の必要性が分からなかった。
もしかしてあれかな?いわゆるヒロインと婚約者の恋を燃え上がらせる為の踏み台。当て馬ってやつ?
「うーん…、やっぱり分からない」
ここは逆転の発想でいってみよう。
逆にオレが悪役令嬢を放棄したらどうなる?
①まず男だとカミングアウト→ベルデラに消される。多分。
②淑女教育をさぼる→役立たずで侯爵家から追い出される。お母様と野垂れ死に確定。
③立派な令嬢になるが悪役にはならない→いずれ婚約者にまで男とバレて、相手かうちのどちらかに、親子共々消される。…相手は王族筋だからな、不敬罪だ。間違いない。
「これ、あくやくれいじょうになる以外ないじゃん!」
はぁー、とオレは机に突っ伏した。
悪役令嬢がいないと世界が破滅する理由は分からない。でも逆に、悪役令嬢として婚約破棄してもらわないと、オレが破滅するのは分かった。
もう、腹をくくるしかない。
「あと…なにかわすれてる気がするんだけどな」
何だっけ?
前々回妹から言われた言葉に恐怖で飛び起きたオレは。恐怖のあまり、肝心の妹の言葉をすっかり忘れてしまっていた。
何だかとっても大事な事を忘れてるみたいで、何だか胸がチリチリする。でも忘れた物は仕方ない。
気持ちを切り変えて、これからやるべき事を改めて考えていく。
①逃走経路の確保→敷地内はチェックOK→そろそろ外にも出たい!
②ライバンともうちょっと仲良くなる→いざという時に助けてもらう!
③お金を貯める→敷地内を周りながら、引き続き売れそうな物を拾う!
④金を稼ぐ力をつける→出来そうな事を探す!
⑤身を守る力をつける→男とバレない為にも筋肉つけすぎ注意!
⑥悪役令嬢を目指す→どうやって???
うーん。そもそも悪役令嬢がどんなものかよく分かんないよ。
オレのイメージする悪役令嬢を思い浮かべてみる。
そして…。
「あ!いるじゃん!いい手本が!」
オレはナイスないい案を閃いた!
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