婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

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第一部 ここって乙女ゲームの世界らしい

17

「たぁー!」

 威勢のいい掛け声を上げて、オレは火魔法をまとわせた短剣を振るった。ちなみに両手で短剣を操るから敵へのダメージも2倍だ!

「後は任せろ!」

 ラナが後に続いて、大剣で獲物にトドメを刺した。

「リア、そろそろ、帰るか?」
「あぁ!オレもスッキリしたし戻るか」

 オレとラナは本日3体目の獣を収納袋に入れると、ギルドへ向かい歩き出した。

「リア、今日は荒れてたなぁ」
「ちょっと嫌な事があってさ」

 正確には、とても残念な事があった、だけどね。

 オレの10歳の誕生日パーティーから1ヶ月。あの日から、オレの魔法と剣の練習日が無くなった。

 スペッサとトンガリ君に、オレを会わさない為だ。
 
 2人はトルマリン家を出禁になったし。ライバンの剣と魔法の練習日には、オレは本宅に来る事さえも禁じられた。

 既に3年は習ってるので、簡易魔法はマスターしていたし。短剣や小剣も防衛する技程度なら、もういいだろうと判断されたのだ。

 代わりに、ダンス練習日と婚約者との交流を深める日が追加された。それが辛い。

 でもさすがに毎週の交流では話題も無くなるからと懇願し、月に一回にしてもらった。

 今は週に2日程度は自由時間が作れる様になったのが幸いだ。

「ほら、お前の取り分」

 ギルドで獲物を換金したラナがオレに半分お金を渡して来た。

「オレ、全部貯金する」

 カウンターでお金を預ける。ギルドは銀行の役割も担ってくれている。便利だ。

「ほんと、リアは贅沢しないよな」
「人生何があるかわからないからな。蓄えは必要だろ?」

 オレとラナの会話を聞いた周囲の大人達が笑ってる。

「確かにな!リア坊は賢いな!」

 近くにいた用心棒みたいなオッチャンが、オレの頭をワシワシと撫でた。

「オレは堅実な男だからな!」

 偉そうにふんぞり返ったオレの言葉に、みんながドッと笑った。



◇◇◇



 孤児院に戻ると、案の定またリッチに変身したジェードがいた。

 今日も髪と目は茶色だ。今思えば、こいつもお忍びで髪と目の色を変えていたんだな、と分かる。

 まぁ、オレは色を変えた上に、帽子と布で相変わらず身元バレ防止しているけどね。

「リア、ラナお帰り。怪我とか大丈夫?これ回復薬だよ」
「あぁ。いつも、ありがとう」
「へへ、いいよ」

 リッチは以前より、孤児院に来る回数は減ったものの、来る度にオレに何か貢ぎ物を持って来る。

 前に欲しい物は何かと聞かれて「お金」と答えたら、リッチの護衛にすごい睨まれた。

 なので、安い回復薬があると助かると言い直して以降、ちょこちょことあまり高くない回復薬をプレゼントしてくれる様になった。

 護衛もこの範囲なら、睨んでくる事も無い。

「リアはお金貯めて何かしたい事でもあんのか?」

 さっきのギルドでの話の続きで、ラナが話しかけて来た。

「やりたい事は無いけど…そうだな」

 そろそろ、逃亡後の事も考えた方がいいかもしれないな。

「大人になったら、旅に出たいな」
「旅!?」

 オレの言葉に被せて来たのはリッチだ。

 一瞬、場がシーンとなる。とりあえず呆然としているリッチを放置して、オレはラナと会話を続ける。

「もっと広い世界が見てみたいし、冒険もしたいしな」
「いいな!俺も行きたい」
「じゃあ、オレが冒険できる年になったら一緒に行こうか」
「わたしも行きたいなぁ」
「僕も!」

 シレネが会話に加わって来た。連れて行ってやりたいけど、シレネは全く剣も魔法も使えないから連れては行けない。それをラナが伝えるとシレネは、しゅんと落ち込んだ。

「ねぇ、僕は少しは剣も魔法も使えるよ!」
「リッチ様、そろそろ戻りましょう」

 無理やり会話に加わろうとするリッチを護衛が連れて行った。グッジョブ!

「リッチもしつこいな。連れて行ける訳ないのに」
「愛だろ」
「愛だよねぇ」

 ラナとシレネが、うんうんと頷き合ってる。

 …いや、だからオレ男なんですけど。
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