婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

文字の大きさ
52 / 75
第三部 乙女ゲーム?高等部編

19

 風呂から出るとジェードが戻っていた。嬉しそうな表情でオレに近づいて来る。

「リア。一緒に食事に行こうよ」
「行きません。警備室に戻ります」
「リア?さっきの事、怒ってる?」

 オレの腕に触れてきたジェードの手を、オレは払った。

「もう、こういうのやめて下さい。所詮、平民と貴族では友人になれない」
「…何でいきなり、そんな事」
「もうオレに構わないで下さい。迷惑です」

 冷たくそう言って、オレは部屋を後にした。最後までジェードの顔は見れなかった。



「リア、もう大丈夫か?」

 警備室にはラナがいて既に仕事に取り掛かっていた。

「心配かけたな。もう大丈夫。それよりー」

 2人で警備室から裏門を監視しながら、オレは昨日聞いた話をした。

 公爵家が原因で結ばれた婚約を、公爵家が勝手に反故にしたせいで、相手の侯爵家から怒りをかった事。それで魔物討伐を優先したい王家側と、聖なる乙女を覚醒する事を優先にしたい貴族側で意見が対立してる、と話した。

 ジェードの養子の事は勿論伏せている。

「何だよ、そりゃ。上の揉め事で、オレら平民が巻き添えくらってるなんて、ふざけた話しだな!」
「…そうだな」
「こんなの報告しても意味ないな。下手したら周辺国から隙を突かれるぞ。どうする?」

 今は悪しきエネルギーで魔物が増幅してるから建前上は各国が手を取り合ってるが、いつどの国と対立するかなんて分からない。

「シレネに会おう」
「え?」
「上の対立はオレらでは何も出来ない。だからシレネに会って、覚醒出来ない理由を調べよう」
「だけど、会えるのか?」

 ラナが半信半疑そうに顔をしかめる。まるで会えるなら、とっくに会ってる。そう言いたげだ。

「じゃ~あ、ボクが会わせてあげるよ」

 急に声がした。周囲を見回すと、いつの間にそこにいたのか。校舎側からの道にスペッサが立っていた。

 相変わらず、顔はニコニコしてるのに、目は笑ってなくて不気味だ。

「いつの間に…」
「ふふ。いつだっていいでしょ?それより、知ってる?今シレネに会えるのは、ほんの一握りなんだよ~?」

 スペッサが言うには。今彼女は正教会に篭りきりで、一定の貴族や身分の者しか会えない様に制限されてるそうだ。だから学校にも来ることが出来ない。

「そんな…」

 おかしい。乙女ゲームなら、いや、そうじゃなくても、聖なる乙女は真実の愛を得て能力を授かると言われてる筈だ。

 なら、閉じ込められるのは逆効果なのに。

「聖なる乙女は、真実の愛で能力を開花する筈。ならそれは逆効果じゃないですか?」
「……君、よく知ってるね」

 スペッサから笑顔が消えた。

「彼女さ~。高等部上がってから、何てほざいたか知ってる~?もう貴族なんて、辞めたいって、言ったんだよ~?ヴィラまで犠牲にしたのにさ~、ふふ。ざけんなよって感じだろ?」

 目の瞳孔が開いて、興奮してるみたいだ。再び、口だけ口角を開けてるのに、目は見開いている。

「孤児院に帰りたいって。ラナやリアに会いたいって言ってたよ~。だからさ、正教会にと・じ・こ・め・ちゃったんだ~。トルマリン家がね」
「な…」

 ラナが蒼白になって拳を握り締めた。それは、オレもだ。だって、ずっとこの3年彼女が幸せである事を信じていたのにー。

「ボクはトルマリン派だから、連れて行けるよ~?その代わりにお願い聞いてもらうけど」
「お願い?」

 スペッサがニヤリと笑いながら言った。

「目障りだからさ、この国から出てってよ。2人とも」
感想 40

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。