婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ

秋空花林

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第三部 乙女ゲーム?高等部編

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◆◆◆



 一通り今回の事件の調査が終わった為、その報告を受ける為に関係者は集まった。

 メンバーは、王族代表のネフリティス。
 貴族代表はブラウとジェード。

 会議をサポート出来るように、それぞれに成人している側近や護衛が側に控えている。

 騎士団は調査部門団長と副団長のライバン。

 魔術師団からは調査部門団長と副団長。

 そして、来年調査部門に内定が決定しているロードとスペッサが、勉強で参加する予定になっている。2人ともライバン同様にヴィラトリア探しの為に、同じ道を志していた。

 だか、何故かスペッサはこの場にいなかった。

「では、まず報告を」
「はい。あの氷は恐らく他国の仕業かとー」

 魔術師団側の見解は、国内であれだけの氷を作るのは難しいという事だった。

 複数人の魔力で練り上げられた魔法だったが、今現在、魔力の高い者ほど前線で魔物討伐に行かされてるからだ。

「…はい。1人出来そうな奴がいますよ」

 ジェードが手を挙げ、スペッサの名を挙げた。

「我々も念の為調べましたが、違いました」

 魔力にはその者独自の波動がある。今回接種した複数の魔力の波動と、スペッサの波動は合わなかった。

 そして、国民の魔法を使える者ならば、その波動は国で管理されている。調べた所、国内に同じ波動は見当たらなかったそうだ。

「他国なら、その意図は?」
「宣戦布告か?」
「いえ、どちらかと言えば聖なる乙女がいつまでも開花しない為、剛を煮やしたのでは」
「……という事は、奪いに来る可能性があるな」

 3年前、この国で聖なる乙女が現れた時、この国は歓喜に沸いた。世界を救う尊い者がこの国に現れたからだ。

 だが、彼女はいっこうに才能を開花せず、しまいには孤児院に戻りたいと言ってきた。

 それを貴族達が許す筈もなく、特にシレネと関わったが為に、ヴィラトリアが婚約破棄に追い込まれた(と思っている)ライバンは絶対に許さなかった。

 彼は重責と立場、役割を特に重視するよう、母親に教育されて来たからだ。シレネの弱音は到底、見過ごせない。だから、正教会に閉じ込めた。

「氷を砕いたあのリアという者が、褒賞にシレネとの面会を求めて来た」

 ライバンの言葉に、全員が視線を向ける。愚かにもリアは、最もシレネに責任を求める者に頼み込んだのだ。

 この願いは却下される。多くの者がそう思った。

 だがー。

「許可しようと思う」
「何故ですか?」

 それまで静かに聞いていたロードが尋ねた。思わず口を出してしまうほどに衝撃だったからだ。

「……あの者が言ったのだ。今、みんなは責任を真っ当しろと彼女責めている。だけど、時には寄り添ってやれる者が必要だと。自分達は彼女の兄代わりだと言っていた」
「兄代わり…」

 シレネとリア達の関係に、ヴィラトリアとライバンの関係を重ねたのだ、と分かった。

 ライバン達兄妹の仲の良さは有名だった。だからこそ響いた言葉。

「これで少しでも改善するかもしれんしな。早い方がいい。準備出来次第、会わせてやろう」
「かしこまりました」

 ネフリティスの言葉に側近の1人が頷き、部屋を出て行った。

 そして議題は次に移る。

「では、調査団からの例の件で報告を」
「……特に目新しい情報は無い」

 ライバンが悔しそうに報告した。

 例の件とは、彼の妹の行方と、犯人探しだ。3年前からの調査で判明したのは、血痕のついたドレス、逃走経路くらいだ。動機も、何も分からないままだ。

「その件で、僕から意見が」

 再び挙手したジェードをライバンが睨む。3年前の事件以降、2人の仲は昔以上に険悪だった。

「今まで僕達はずっとヴィラトリア嬢が攫われたと思っていた。だけど、もしかしたら真実は逆なんじゃ無いかと思ってる」
「どういう事だ?貴様はヴィラが好きで逃げたと言ってるのか?」
「そうだよ」

 ドンッ!とライバンが怒りにテーブルを叩いた。

「貴様は!自分の責任を妹に擦りつけるのか!」
「違うよ、ライバン。視点を変えて違う可能性を考えたんだ。もしこの可能性が合っているなら、きっとあの子は生きている」
「……何だと?……話してみろ」

 ライバンの許可を得て、ジェードは自分の考えを話した。

 彼女は何故、婚約破棄に積極的だったか。
 彼女は何故、翌日には解消出来るのに、あの日の婚約破棄にこだわったのか。

 考えられる可能性はそう多くない。

 彼女はあの日、元から家に戻るつもりが無かった。何故なら、戻れば、せっかく破棄した婚約が、次の日にはまた別の男と結ばれてしまうから。

 彼女にとっては家に迷惑をかけず、婚約を無くして家から出るには、あの日しか無かった。

 ジェードはそう考えた。

「じゃあ自分から、窓から逃げたと?」
「あぁ。彼女は剣も魔法も習ってた。授業で見た事あるけど、令嬢とは思えない運動神経だ。例え襲われても、簡単にやられないだろう。だから自分から出て行ったと思う方がしっくりくる」
「…………」

 コツコツと、ライバンが指でテーブルを叩く。

 そう。彼自身も疑問に思っていた事。3年とはいえ剣と魔法を真剣に習っていた妹が何故、簡単に攫われたのか。

「ドレスの件は?」
「血がついてるのに、ドレスに傷は無かった。なら、可能性は2つ。脱いだ後についたか、元から怪我をしていたか。僕は後者だと思う」
「…何故」
「覚えてる?前日まで寝込んでたろ。原因不明の高熱も怪我が原因なら納得がいく」
「……なら母親は」
「知らなかったか、知ってて隠したかは、そこまでは分からないよ」
「……」

 今の所、反論する点が見つからない。だが、ここまで聞いてライバンは確信してる事があった。

「ジェード。お前、ヴィラがどこにいる知ってるな」

 返事は無い。だけど、ジェードは静かに微笑んでいる。まるで確信がある様にー。

「教えろ!ヴィラはどこだ!?」
「まだ、言えない。多分今見つかったら逃げられるから」
「な、に?逃げる?何故だ!」
「ここまで聞いて、分からない?あの子は、きっと逃げたくて逃げたんじゃない。姿を隠さないといけない理由があった。だからそれを解決しないと、帰って来れないんだ」

 その理由とは、何だ?

 この場にいる全員が思った。だがジェードが言う気が無いのは分かった。だから皆、次のジェードの言葉を固唾を飲んで見守る。

「僕ならそれを解決できる」
「……絶対か?」
「必ず。だけど、みんなの協力が必要だ。今すぐ」
「……何をすればいい?」

 この問題が解決すれば、王族と貴族間の対立は解消する。そうすれば、今国中を荒らしてる獣や魔獣への対策ももっとスムーズになる筈だ。

 だからこそ、このヴィラトリア嬢の事件の解決は切実だ。

「じゃあ、前に出した法案の成立に協力して下さい。今すぐ」
「……法案て、まさか何年も前からずっと却下されてるアレか?」
「はい。そのアレです」

 ジェードがニコニコ満面の笑みで肯定した。そんなジェードを、みんなが微妙な表情で見ている。

「……ネフリティス様」
「何だ?」

 ライバンがネフリティスに話しかける。彼が王子に話しかけたのは本当に久しぶりだった。

「一応確認ですが、これは本当にそちらは納得されてるんですか?」
「あぁ。了解は得てるよ」
「はぁ。分かりました」

 ライバンは溜め息をついて、ジェードに目線を向けた。もう阿保らしくて、怒る気も失せた。

「分かりました。では、ヴィラを連れ戻してくれると約束してくれるなら、他の貴族を取りまとめましょう。どんな手を使ってでも」
「ありがとう。必ずヴィラトリア嬢を取り戻すよ」

 こうして、3年続いた王族と貴族の対立は終息を迎えようとしていた。
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