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綺麗な野良猫 前(sideセイリオス)
しおりを挟む先日、俺は大きなクエストを完遂させたので今日はゆっくりするぞ、という気分でのんびり遅い時間にギルドに来た。
買い取りカウンターのエミルと雑談をしていると、中途半端な時間に一人の冒険者がやって来た。
ここでは初めて見る顔だ。
彼はギルド内をぐるりと見回してからクエストボードに歩いて行き、ジッと眺めている。
フードでよく見えなかったが、ちらりと見えた真っ白い髪に真っ赤な瞳の美人だった。
女っぽくはない。
でも柔らかい輪郭で中性的な色香を纏っていた。
どことなく一線を引いている、ちょっと野良猫っぽい警戒心があるような・・・。
俺は気付いたら、彼に声をかけていた。
「やあ、この街は初めてかい?」
「・・・ああ、さっき着いたばかりなんだ」
やはり余所からの冒険者だったか。
自己紹介をすると、向こうも名乗り返してくれる。
ちょっと警戒心が薄れたかな?
俺って見た目で怖がられる事が多いんだよね。冷たい印象があるみたいだ。
この色合いのせいかな?
まあ、面倒な時は黙って睨めば消えてくれるから重宝はしてる。
案の定、話しているうちに雰囲気が柔らかくなった。
街を案内すると誘うと、買い取りに出す物があるというので、早速エミルの元へと連れて行った。
エミルの希望に添った薬草や魔石をひょいと出した途端、大興奮のエミルにやや引き気味のアルク。
うん。
そうなるよな。
思ったほどビビってないアルクを不思議に思っていると、余所でも大抵、こういう反応をされるらしい。
何かコツでもあるのかと聞けば、途端に顔が曇った。
マズい、何か地雷だったか?
慌てて謝れば、アルクは場の空気を変えようとしてお昼ご飯の事を持ち出したので、それに乗っかる。
思わず頭を撫ぜると、驚いたように顔をあげた。
「ん?」
「・・・何でもない」
・・・俺自身、自然と撫でてしまったが、アルクは子供じゃ無いもんな。
しまった、と思ったが。
でもまあ、アルクの笑顔が戻って良かった。
焼肉亭で席に着くと、女将さんが揶揄いながらやって来た。
「今日は別嬪さん連れて来て、デートかい?」
ソレを聞いていたアルクは首を傾げる。
自分のことだとは微塵も思っていないようだ。
何故に?
それからアルクがぽつぽつと話してくれた過去に憤りと哀しみを感じていると、不意に、アルクが天狼の事を話し出して・・・。
ドキッとした。
何で急にそんな話が・・・?
だが、それよりもアルクが小さく震えているのに気付いて。
天狼に会った話を妄想だって決めつけられて、見た目でも疎まれて。
今はちょうど20歳らしいが、ずっと孤独に、冒険者として旅をしているなんて・・・。
他人の言葉にたくさん傷付いて・・・。
だから俺は言ってやったんだ。
「お前はお前の見て感じた物を信じれば良い」
そう言ったら、綺麗な涙を一つ零して。
---ああ俺、アルクのこと、好きだなって思った。
それから街の中を色々案内して、夕方、同じ宿に泊まっていたから一緒に戻って夕ご飯もここで食べて。
「おやすみ、アルク」
「おやすみ、セイン。今日はありがとう」
そう挨拶をして部屋へと戻っていった。
一人、部屋に戻って鍵をかける。
「・・・・・・俺、アイツに会ったこと、ある?」
アイツの頭を自然と撫ぜたとき、何故かそうしたいと思った。
アイツが驚いた顔で俺を見たとき、何か既視感があったのだ。
「ん---でも思い出せん。色々とあったからなあ。いちいち覚えてらんないよ。まあ、その内思い出すかも」
そう結論づけて、さっさと寝ることにした。
翌朝、気配を察知してアルクの部屋に先廻りして待つ。
朝イチでギルドに行ってエミルから報酬を受け取るつもりだというので、朝ご飯を一緒に取ってから俺も行くことにした。
ギルド内はさすがに混雑していた。
エミルの元にも朝から買い取りや報酬を受け取る冒険者でいっぱいだったので、先にクエストボードを見ようとアルクに提案した。
この街はBランク冒険者が多いようで、AやSランクは余り受けられずに焦げ付いているモノが多い。
俺はSランクの依頼でも一人で十分倒せる実力はあるんだが・・・。
ちらりとアルクを見ると、Aランクのボードを眺めている。
特に目を引く依頼は無いようだな。
アルクは昨日の話を聞く限り、おそらくずっとソロだったはずだから、Sランクの依頼を単独では受けないだろう。
そうすると・・・・・・。
「・・・ああ、コレなんか良いかもなぁ・・・」
俺は一枚の依頼票を剥がしてアルクに提案した。
どうやらお眼鏡に叶ったようで、(臨時と言って)パーティー登録をして貰う。
それからやや空いてきたエミルのところへ行った。
報酬を受け取っていたら、エミルがアルクに聞いてきた。
「今日は、何か依頼を受けるんですか?」
「・・・ああ、セインと」
「俺と一緒にちょっと行ってくるんだ。アルクと初めての共同作業! 期待して待ってて」
「・・・・・・セイン・・・・・・はあ、まあ、そういうわけでちょっと行ってくるね」
「えと、はい、お気を付けて!」
ギルドをあとにした後、アルクと話をしていると、アルクが文字通り『初めての共同作業』だった事が分かって、途端に嬉しくなった。
「嬉しい!」
「はあ?!」
思わず叫べばアルクには怪訝な顔をされた。
それに、昨日知り合ったばかりの俺を信用して良いのかとアルクに諭されたが、本当に悪いヤツは自分からそう言うことは言わないもんだ。
そう言ったら、渋い顔をしながらも諦めたようだ。
今回の依頼はグリフォンの討伐及び羽根の採取だ。
数ヶ月前から住み着いているという南の断崖絶壁に向かって俺達は歩き出した。
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