拾われた俺、最強のスパダリ閣下に全力で溺愛されてます 迷い子の月下美人

エウラ

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252 箱庭の幻影

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迷宮に足を踏み入れる直前まで、ノアとアークはしっかり手を繋いでいた。

繋いでいたにもかかわらず、入った瞬間に二人ともお互いの手の感触が消えてしまって焦った。

---何処かに移動されたか?!

だが以前、精霊王が言っていたことを思いだして冷静になる。

『転移の魔法は精霊王以外には使えない』と。
ならばこれは感覚が狂っているだけで、実際には隣にいる。

そう思えば、掌に相手の温もりが戻った。

「---なるほど、ただの幻覚では無さそうだ」

魅了魔法のような、精神に直接作用するような・・・。
精神的に強い者には効きにくいのか。

その辺りははっきりしないが、どうやらレオン達やギギ達も正気に戻ったようだ。

「レオン達、無事か?」
「俺達も一瞬ヤバかったが大丈夫だ。アーク達は?!」
「俺達兄弟は一応大丈夫だ! いやぁヤバかった!」
「ちょっと皆と逸れたかと思った! 自分がどこにいるのか分かんなくなったよ。いやぁ、あっぶなー・・・、ノア?」

アークの問いかけにレオニードとシェイラ、ギギルル兄弟が無事の返事を返す。
その時、ルルがノアに違和感を覚えた。

『おいアーク、ノアの意識が逸れてるぞ?』
「---っノア?!」
「・・・・・・---え?」

虚空を見つめるノアに気付いてアークが慌てて声をかけると、ぽーっとしていたがハッと気付いた。

「アーク?」
「・・・・・・どうした?」
「? 別に?」
「・・・・・・そうか」

レオン達は目で合図を送りあっている。

キョトンとするノアは自分の様子に気付いていないようだった。

---のっけからコレか・・・マズいな。

ノアは規格外に強い。
強いが、心はそうではない。

思った以上にノアには相性が悪いのかもしれない。
何か心に傷を持っているような者には強く効くのかも・・・。

「ノア、俺の手を離すなよ?」
「うん、ずっと、ぎゅうっと握ってるよ?」

そう言ってニコッと笑っていたのに。




「---っおい、アーク!! ここは良いからノアを連れて早く迷宮から出ろ!!」
「っ分かった! ノア! こっちに来い!!」
「---アーク?! どこっ---っぅあっ」
「ッノア?! ノア!! 何処に行った、ノア---ッ!!」
「---っ---・・・・・・」


---何でこうなった?!

何故ココにノアがいない?!

ずっと、握ってるって、言ったのに・・・・・・!!

「---クソッ!!」
「・・・・・・アーク・・・・・・」
「ノアちゃん・・・」
「まさか、本当に・・・?」
「---嘘だろ・・・?」
『・・・・・・強制排除されたか』

俺達は今、呆然として『箱庭の迷宮』の出入り口に立っていた。

不意に出入り口に現れた俺達を見て、驚いてギルド職員と警護の冒険者が駆け寄ってくる。

「お帰りなさい、レオニード様方!! 思ったよりもお早いお戻り・・・で・・・・・・?」

ギルド職員が声をかけたが、様子がおかしいことに気付いて途中で止まってしまった。

アークが今にも爆発しそうな様子でピリピリとしている。
レオン達もギギ達も同様だった。

・・・・・・そして職員は気付く。

「・・・・・・あの・・・ノア様は・・・?」
「---だ」
「え?」
「・・・迷宮の中だ」
「・・・・・・はぃ? それって・・・・・・」
「---『箱庭の迷宮』に、攫われた・・・!」

アークが地面に拳を打ち付けた。
ドゴンッと鈍い音がしてアークの周辺が一瞬にして陥没する。

「---っアーク、気持ちは分かるが落ち着け!!」

ギギが宥めるも、殺気と威圧が漏れ出ている。
顔色を真っ青にさせたギルド職員がハッと我に返り、慌てて冒険者ギルドに連絡を入れようと動き出す。

「ギッ、ギルマスに連絡を入れます! 少々お待ち下さい!!」

そう言って詰め所に戻り、ギルドに通信を入れた。

---おそらく彼も取り乱しているのだろう、要領を得ないような事をしどろもどろと話しているのが聞こえる。

レオニードは深い溜息を一つ吐くと、詰め所に向かっていった。

そうして通信を代わると、簡潔に話をして通信を切った。

「---アーク、一度戻るぞ」

レオンが戻ってきてそう言った。
顔は真剣だ。

「・・・・・・ノア、は」

アークが悲痛な声で訴えたがレオン達も悔しい表情が見て取れた。

「・・・今、現時点で出来ることはない。戻って情報整理と今後の対策を練らないと、助けられるモノも助けられないぞ」
「ノアを信じてるんじゃ無いのか? 案外ひょっこり戻ってくるかもしれないだろう? あれだけアーク大好きオーラを出してるんだから、浮気なんかしねえよ」

レオニードが冷静にそう言って、ギギが無理矢理軽口を言ってアークを煽る。
それにアークは渋い顔で言い返す。

「---分かってる。そもそも浮気なんかするか。番いは唯一人だけだ。ノアには、俺だけだ!」
「だよねぇ。だったらノアにもアークだけなんだから、信じて、今は一旦退くべき」

ルルもそう言って、アークを落ち着かせる。

「---ノア、待ってろ。必ず、助け出す」

迷宮に棲む・・・首を洗って待っていろよ!




※今日の分は出来ました!
明日は分かりません。
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