277 / 568
連載
343 猫獣人ゴーレムの性能
しおりを挟むアレから庭にテントを出して、ノアとアークはテント内のお風呂でちょっとだけイチャイチャしたあと、朝までぐっすり眠った。
猫獣人ゴーレム達は纏めて『クルール』と呼ぶことにした。
虹色をイメージしているからだ。
彼等はすっかりゾアに懐いていて、談話室を出るときも離れず、結局スリングに7人押し込んで抱っこしていった。
「見た目に反してゴーレムだから頑丈なんで。そんなに心配要らないよ。一緒に寝ても潰れないし」
ノアがそう言い、じゃあ一緒に寝るかとゾアが聞くとコクコク頷いて『あい』と返事をする猫獣人ゴーレム達にメロメロなゾア。
おそらく全員、布団に乗ったり潜ったりするんだろうなあ、可愛いだろうなとちょっぴり羨ましいノアだった。
そして次の日、日が昇る前に起きて軽く朝食をテントで済ますとノア達は外に出た。
テントを片付けてギギ達の母屋を見ると、すでに起き出して野菜の収穫に向かうところだった。
「おはようギギ、ルル」
「おう、おはよう。何だ、野菜の収穫もやってくれるのか?」
「ああ、うん。クルール達の性能を見て貰おうと思って。もう来てる?」
「ああ、ほら。親父にくっついてる。昨夜は一つのベッドにぎゅうぎゅうで寝たらしいぜ」
「絵面がヤバい」
ギギ達は見てはいないが想像したらしい。
肩が震えている。
笑いを堪えているのだろう。
「・・・まあ、可愛いんじゃない?」
何となく、猫に布団を取られて隅っこで寝ている様子が目に浮かんだ。
「それはともかく、あの子達に仕事の指示を出そうか。ゾアさん、こっち来てくれる?」
「---おお、おはよう。コイツらか?」
声をかけたら近付いてきてくれた。
相変わらず頭から肩からしがみつかれてる様子に笑いながらノアが言う。
「基本的にはゾアさんの指示で動くけど、他の従業員の言うことも聞くよ。ただ優先度はゾアさんだから気を付けてね。あと『お願い』と『命令』だったら『命令』が優先されるからその辺りも注意して」
「お、おう、そうなんだ。可愛いからあんまり『命令』はしたくないなあ」
困ったように笑いながらそう言うゾア。
やっぱり優しい。
「『命令』って言っても、これは絶対にしちゃダメとか、逆にこれは絶対やって欲しいという約束事を命令にして、普段はこの野菜を収穫してくれとかそういう言い方で良いんだよ」
ノアがゾアに取説を渡してそう言った。
「あと、収穫の仕方は昨日俺が教わった果物はすでに記憶させてあるけど、それ以外の果実や野菜は今日これから目と耳で憶えさせるから連れて行ってあげて。一人が記憶すれば共有されて全員仕事を把握できるから」
「---そうなのか、凄いな。でもこんなに小っさくて、仕事は憶えても作業できないんじゃ無いか?」
ゾアが至極まともな事を言った。
それをノアは微笑んで返す。
「大丈夫。小さいけど、俺の作ったゴーレムだから」
それを聞いて疑問符だらけのゾアとは反対に妙に納得しているギギルル兄弟とアーク、それにヴァン。
「なんとなーく想像できるな」
「うん、やらかすよね」
「ノアだからな」
『ノアだからな!』
すっかりノアの規格外な能力に慣れたギギルル兄弟だった。
そうして、やはり想像通り。
各々の持ち場に向かった従業員について行かせた先で、クルール達は自分達の能力を遺憾なく発揮した。
魔法で対応できるところはすべて魔法を使い、昨日のノアの如く繊細な魔法操作でもってあっという間に収穫。
魔法が難しい作物は魔法で触手のような手を何本も作り、操作して(一応)手作業で収穫。
昨日ノアがもいでいためちゃくちゃ大きいパラハニーの果実の収穫と運搬の時は、猫獣人ゴーレムがデカいゴーレムを作ってそのゴーレムを操作するという、意味が分からない事をしでかしていた。
「・・・・・・どういう事?」
「あー、アレは錬金術じゃ無くて、単なる土魔法で作る土人形だよ。魔石も使ってないから、不要になったら土に戻せる。さっき作ってた触手っぽいのも同じ。土が無ければ水魔法で同じ事が出来るようになってるよ」
「・・・・・・へー・・・」
「・・・・・・まだまだ驚かされることがあるんだねえ・・・・・・」
あまりの事に聞けばそう返ってきたが・・・。
たぶんソレ、ノアだから出来ることだと思うとギギルル兄弟もアーク達も心の中で思ったはずだ。
ゾアだけは未だに衝撃から立ち直れていなかった。
「ちなみに魔力は魔石に入っている分で百年は保つと思う。空気中の魔力も勝手に吸収するから補充も少なくて済む。まあ、余裕があれば毎日一度は使った分の補充に、指先に魔力を籠めて口に持っていってあげて。ちうちうと吸うから。満足したら口から離すから」
「・・・・・・そう言えば、普通の食事とかは?」
ゾアが我に返ってそう聞いてきた。
「必要はないけど、微量の魔力を吸収するから大丈夫。全部取り込むから、排泄はしない」
「そっか、良かった。昨夜は寝るときになって気になってなあ・・・良かった良かった!」
---すっかりじぃじの顔になったゾアだった。
※遅くなりました。
550
あなたにおすすめの小説
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
絶対に追放されたいオレと絶対に追放したくない男の攻防
藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
世は、追放ブームである。
追放の波がついに我がパーティーにもやって来た。
きっと追放されるのはオレだろう。
ついにパーティーのリーダーであるゼルドに呼び出された。
仲が良かったわけじゃないが、悪くないパーティーだった。残念だ……。
って、アレ?
なんか雲行きが怪しいんですけど……?
短編BLラブコメ。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。