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連載
453 影達の密談
獣人国と竜王国との対談二回目で、二国の協力体制を調える名目で顔合わせをしたそれぞれの影のリーダー達。
あの場ではお互いの顔と名前を確認して連絡方法を交わした。
定期連絡の時間と緊急用の連絡先である。
そしてその日の夜、早速定期連絡を開いたのだった。
獣人国の影・セロとディエス、竜王国の影・サンとラン。
それぞれの国の一室に二人ずつ、通信魔導具を前に会話をしていた。
もちろん防音結界魔法を張っている。
「やあ、昼間振り。面倒だから前置きとか無しで良いね。さっき聞きそびれたんだけど、セロとディエスは何の獣人? てか、獣人なの?」
一応顔を見せてもらったが、セロは短い白い髪にアイスブルーの瞳でディエスは肩までの茶髪をうなじで一つに括っていて髪の両サイドがぴょこんと跳ねている。瞳は橙色だった。
ちなみにサンは黒い瞳で背の中程の黒髪を後ろで三つ編みにしている。
『私は白虎の獣人。ディエスは木菟の獣人だ。影達は普段は耳や尻尾や翼を消して隠してる』
「へえ、ミミズクって事はディエスは翔べるの?」
『普段は翼は背に収納しているが、必要があれば翔ぶ』
「おー凄い。僕もね、頑張れば翼出せるよ。竜人の混血だからね」
「・・・・・・相変わらず君は無表情なくせに言葉使いが軽いな」
本当に前置き無くズバズバそう聞くランに、しかし誰も特に何か言うでもなく淡々と応えるセロ達。
ソコに黙っていたサンが口を挟んだ。
「顔は必要があれば動かすよ。リュカリオン殿下と嫁以外に動かず必要性を感じないだけ。仕事ならやるけど。それにアンタだって喋んないじゃん」
「・・・・・・必要が無いだけだ」
「ほらね。だから僕が喋るの。ああごめんね、放っちゃってた」
『・・・・・・いや別に大丈夫だ』
『問題無い』
---もしここにルドヴィカが『似た者同士だらけ』って大笑いしていたことだろう。
「まあいいや。それで最初にコレを転送するから受け取って」
そう言ってランがおもむろに取り出した箱を転移魔導具で送る。
セロ達が受け取って開封すると、艶を消した漆黒のイヤーカフが二つ入っていた。
『・・・・・・これは』
即座に鑑定したセロが若干驚きの声をあげた。
「うん、ノア殿の錬成した小型化した通信魔導具。コレを片耳に付けて魔力流すと本人以外に外せないし使えない仕様だから、早速付けてみて。僕達も付けてるから、ほら」
そう言ってランが右耳を指差す。
ランのケモ耳には毛色に合わせた金色のイヤーカフが光っていた。
サンは長い黒髪に隠れた左耳に、こちらはセロ達と同じ色の艶消しされたイヤーカフ。
「コレに少し魔力を流せば僕とサンとセロとディエス、この四人に限り、好きなときに通信出来るようになってる」
『・・・・・・凄い』
「そんな凄いノア殿を迫害して不当に搾取して、あまつさえ囲おうとしたんだよ、獣人国は」
感心したように漏らしたディエスにランは冷たく言い放つ。
その言葉に反論できずに黙り込むセロ達に更に続けるラン。
「ノア殿は純粋で世間知らずで優しい方だから、何も聞かずにこの魔導具を錬成してくれた。王妃様だって助ける義理なんて無いのに、放っておけなくて看病してる」
『『・・・・・・』』
セロ達は何も言えずに黙って聞いていた。
「何より薬師や錬金術師の矜持をしっかり持つ方だから。今回の毒の件でかなり怒ってたから、下手すると国ごと滅ぼすよ?」
「・・・・・・あの方ならば一人で十分やれるな。下手をすると周りの国も巻き添えで消えるんじゃ無いか?」
ここぞとばかりに同意するサンに、セロ達は顔色が悪くなり目に見えて狼狽えた。
「そうだね。まあノア殿に限って言えば巻き添えは絶対にしないだろうけどね。誰かが傷付くのは本意じゃ無いから」
うんうんと頷くランはセロ達を見据えて言った。
「だからね、今回の件、下手をすると錬金術師ギルドはおろか、関わったヤツら全員、消されちゃうかもね」
---だから頑張って早く解決して被害を最小限に食い止めようね?
無表情だったランが最後にそう言ってにっこり笑うので、セロ達はおろか、サンですら背筋がゾッとしたのだった。
※ランがこの四人のリーダー格でしたね。
ランも耳や尻尾を消せるけど、可愛いからそのまま出してる。潜入捜査などで容姿を武器にしていることが多いので。
早めに書けたので良かった。
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