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本編
120 ヨーイ、スタート!!
しおりを挟むスタートラインはランダムで並んだ。
目先にはテーブルのうえに封筒が置いてある。
これも早い者勝ちのように手にして、その先の更衣室で封筒の中のお題の衣装に着替える。
『準備は良いですか? では、位置について、ヨーイ・・・・・・』
パアーン!!
スタートの音が鳴って一斉に走り出した。
まあ、速かろうが遅かろうが封筒の中身はランダムだし、パフォーマンス的な意味合いが強いなら焦らなくても良いよね?
そう思って、のんびり最後に残った封筒を手に取り、更衣室に入る。
「どれどれ?・・・・・・えーと」
封筒を破いて中から紙を出して読むと・・・。
「何だろう?」
馴染みのない言葉だ。
何だっけ?
想像もつかないので衣装を探すと、ハンガーに名札が付いていた。
「・・・アレ、これって・・・・・・」
そうだ、前世で見た事がある。外国の民族衣装だ。
ご丁寧に着方まで書いてある。
助かるな。
「あの、サクヤ様、大丈夫ですか? 着られますか?」
更衣室の外から、不正防止兼お手伝いとして待機している係員の生徒が声をかけてきた。
衣装は基本、一人で着られるものを用意してあるが、なにぶん初めて見る服も多い。
その補助なのだろう。
「ありがとうございます。あの、背中のファスナーを上げて貰えますか? うまく届かなくって・・・」
「はいっ。し、失礼します!」
そういって入ってきた生徒に背中を向けた。
---スオウ様、ごめんなさい!!
でもサクヤ様の背中、綺麗です!
色っぽいです・・・!!
などと心の中で叫びながら任務を全うした。
「ありがとうございます。この辺の小物も使用して良いんですよね?」
「はいっ。似合うモノをご自由にどうぞ!」
「ありがとうございます」
「では失礼します」
生徒が出て行き、サクヤは一つに縛っていた髪を下ろすと、ツインテールにして髪を編み込み、お団子にして残りを垂らしてから衣装に合わせた大ぶりの造花をお団子ヘアに飾り付けた。
「(前世で)見た感じ、こんなだったよね?」
中々上手く出来たのではないか?
外から歓声が聞こえる。もう、何人か着替え終わったようだ。
「支度出来ました」
「では、入ったところと反対の扉から出て下さい。お立ち台があるので、お題に見合ったポージングをお願いします」
「分かりました」
そういって一歩踏み出した途端、シンッとした。
数秒後、どわっと会場が湧く。
出て来たサクヤは、体にフィットしたノースリーブのチャイナドレス。
膝丈くらいだったのだろうが、サクヤはかなり背が高い。
必然的に膝上ミニになってしまった。
両脇のスリットが際どくて、下穿きが見えそうな・・・・・・。
お団子ヘアにモフモフの綿毛が付いた扇子を広げて口元を隠す仕草がカッコ可愛いのに色っぽいって何だ!!
けしからん!!!
スオウは生徒会のメンバーがいるテントで一人やきもきしていた。
---なんであんなサクヤを大勢の野郎どもに見せなくちゃいけないんだよ!
サクヤは俺のだ!
俺だけのサクヤだ!!
ガオウ達が必死にスオウを押さえて宥めていると、サクヤがスオウと目を合わせた。
扇子の影から唇を読むと・・・。
『スオウ、どう? 綺麗?』
『もちろんだ!』
即座に口パクで返した。
それを読んで、サクヤがスオウに嬉しそうに微笑んで・・・・・・。
周りの人間が一斉に前屈みになって、スオウは一瞬殺気ダダ漏れになり、ガオウに本気で殴られていた。
キョトンとしているサクヤをよそに、その後殺気で気絶した生徒達で救護テントは溢れかえり、てんやわんやだったそうだ。
原因である当のスオウは。
「俺は悪くない」
と不貞腐れていたらしい。
・・・借り物競走はまだ続く。
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